12月13日、中国EVメーカーの奇点汽車が従業員3ヶ月分の給料が未払いのままだと報道された。
設立から少なくとも70億元(約1,150億円)もの資金調達を遂げた奇点汽車の今後の発展が懸念されている。これについて奇点汽車は、「会社の発展は順調で、資金調達は今なお続けているので、資金問題はない」と述べている。

奇点汽車とは?

奇点汽車は中国で有名なIT企業360の副総裁であった沈海寅が2014年に創立した電気自動車メーカーである。
これまで計6回もの資金調達を行っており、累計調達金額は70億元(約1,134億円)を超えた。現在は北京、上海、蘇州、安徽、シリコンバレー、そして日本の宇都宮に研究開発センターを設置している。

▲奇点汽車の資金調達一覧

2017年4月に奇点汽車はSUV電気自動車「IS6」を公開した。
走行距離は400km、価格は20-30万元(約325〜450万円)で2018年末までの販売開始を計画していた。

2018年4月、奇点汽車は北京新エネルギー汽車(自動車メーカー北京汽車グループ傘下の企業)と戦略パートナーシップを結んだ。これで奇点汽車は電気自動車の生産資格を間接的に獲得したことになる。中国当局は電気自動車市場参入の資格審査を厳格化したため、生産資格を持つ企業は数少ない。スタートアップ企業は一般的に伝統的な自動車メーカーと連携して間接的に資格を取ることになる。

しかし、奇点汽車の自動車生産は計画通りには進まず、2018年末までのIS6販売開始計画が未だに実行できていない。CEO沈海寅は2019年春節前後(2月)にIS6の量産開始を計画しているとし、公開当初の予定である年内販売開始の計画は先送りという形になっている。現在までに奇点汽車が量産及び販売を開始した車はない状態だ。

多くのスタートアップが参入した中国電気自動車市場

2018年から中国電気自動車市場は加熱しており、多くのスタートアップ企業が現れた。
有名企業としては蔚来汽車(NIO)、小鵬汽車(xiaopeng)、威馬汽車( WELTMEISTER) 、拝騰汽車(Byton)などが挙げられる。ただし、これらのスタートアップはコンセプトばかりで生産販売を開始した車は少なく、実際に売りに出した商品が少ないところは疑問視されている。
また、今年9月にアメリカで上場を果たしたNIO生産の自動車は、先日大量の故障トラブルを起こしたことも報道されている。これに対しては会社の成長スピードを優先するあまり、品質が保証できる状態にないのではとの指摘の声が上がっている。

自動車生産には巨額な資金が必要となるため、電気自動車のスタートアップ企業は資金調達に依存している。
市場が盛り上がりを見せる一方で、生産開始に踏み切れている企業は少ない。資金調達の不調時には様々な問題が発生し、倒産する可能性も高まる。今年10月、アメリカの電気自動車大手のテスラは中国上海で工場用の土地を確保した。2019年上半期から小規模の生産開始を計画しており、中国の電気自動車メーカーの中でまた新たな勝負が始まろうとしている。