ネット通販を利用する時、試着ができない自分に似合うかどうかがわからないのは悩みの一つ。しかし何と自分がその服を着ている姿を見られるようになった!中国・上海のある服屋でスマート試着鏡なるものが設置され、顧客はディスプレイから自分が服を着ているバーチャル画面を見ることができる。チャイトピ!は今回その店に潜入した!

 

スマート未来型店舗「Kerr&Kroes天猫智慧門店」へ潜入

今回実際に訪れた「Kerr&Kroes天猫智慧門店」は駅近のショッピングモール内にある、店は約1600平米で白とピンクを基調としたかわいらしいデザインだ。

▲Kerr&Kroes天猫智慧門店

入口すぐ横には、中国では最近よく見かける大画面ゲームがあり、淘宝または天猫のアプリでQRコードをスキャンすることでプレイが開始される。このようなサービスは最近中国のハイテクを売りとするショップではお馴染みになってきた。

そして店内を少し見て回るとすぐに気が付くが、店舗面積と比べ商品数が少ない。陳列も正直に言うと工夫の見られない様子で、平日につき客がいないことも助けてかなりがらんどうといった印象を受けた。

というのも、この店舗のメインは店内での利益ではなく、何といってもこの「スマート試着鏡」であると見えた。

▲スマート試着鏡(智慧試衣鏡)

このスマート試着鏡は2018年4月より運用をスタートし、最新テクノロジーを使った新型試着マシーンとして話題となった。

服屋に行ったとき、試着はしたいがいちいち服を脱いだり着たり、返品したりという作業を面倒くさがる女性は少なくないだろう。またネット通販での買い物の場合、当然試着なしでの購入になってしまう。そんな悩みにテクノロジーを使って応えたのがこのマシーン。

では早速、使い方を見てみよう。

▲スマート試着鏡を体験する取材同行者

  1. 足元のシールに合わせ、スマート試着鏡の前に立つ。
  2. 画面に従い、体型分析が済むまでそのまま待つ。
  3. 体型分析が済むとQRコードが表示されるので、淘宝または天猫のアプリでスキャン。
  4. 画面内の洋服を自由にタップし、自分のアバターに着せて試着を楽しむ。

アバターの顔は、目元が若干美化されてはいたが、きちんとユーザーそっくりの顔になっていた。しかし体型に関しては身長と肉付きだけの反映で、手足や首の長さは身長に合わせた一律のものだった。

また、アバターが完成してからも自由に身長やバスト、ウエスト、ヒップとある程度細かく変更ができた。

実際に体験してみて感じたスマート試着鏡の良い点は、服を選ぶにあたって自分に合った色やおおまかなテイストくらいであれば十分にはかることができ、また画面に表示される商品はすべてオンラインの店舗に飛べるようになっているため、価格の確認やサイズの選択、支払いなどはアプリでの買い物と同じような手軽さがあったことが挙げられる。

▲スキャンしたらオンラインの店ページへ飛ぶ、しかしこの商品はすでに取り下げたと表示されてる

課題点としては、アバターには手足や首の長さが反映されていないことや、身長を変更するとそれに従って服もS・M・Lの境界なく体に合わせて変更されてしまっていたので、実際には存在しないサイズを試着していることになる点などが挙げられる。これでは何を試着しても、あたかも自分にぴったりかのように映っていて、実際の試着から得られる情報とはまるで違う。

また、店内の服の価格をみるには札にあるQRコードをスキャンしてオンラインの店ページから見ないといけない。これはオンラインへのユーザーを勧誘できるが、手間がかかると不便を感じた。

このようにまだまだ課題は残るが、今後自宅でもバーチャル試着を可能とするようなアプリの開発など、実用化が期待される。

 

アパレル業界もニューリテール戦略

バーチャル試着技術は2017年アリババが主催するコンファレンス「雲栖大会」でも展示された。アリババが提出し現在中国小売業界のキーワードとなったニューリテールはアパレル業界にも影響したようだ。

Kerr&Kroesは上海迅搜実業有限公司傘下のブランドで、現在は上海以外にも淄博と常州で2店舗を構えおり、創業者の靳磊(ジン・レイ)はアパレルEC分野で長年の経営経験持っている。

アリババとKerr&Kroesが連携して打ち出したこのスマート店舗「天猫智慧門店」で提供される商品は主に天猫に出店している企業によるもので、一方アリババはデータ分析によって店舗運営の改善点を指摘するなど、データとニューリテールソリューションを提供する。Kerr&Kroesの創業者靳磊(ジン・レイ)は最終的にこのショップを無人店舗として完成させることを目標としている。

衣服を扱う小売業にとって、オフラインでの消費者体験問題とオンラインでの返品率の高さは二つの大きな課題である。オフラインでの消費者体験問題というと、試着をしてから商品を購入したい一方で、試着室の列や着替えそのものの煩わしさなどが挙げられる。反対にオンラインではその煩雑さは解消されるものの、特に衣服に関する返品率はいまだに高く、見過ごせない問題となっている。これらの課題を解決するため、今回取材したスマート試着鏡を含め、アパレル業界にもニューリテールの新たな風が吹き始めた。