1月15日、中国で人気を博す短編動画アプリTikTokの運営会社バイトダンス(字节跳动・ByteDance)が北京で新製品発表会を開催し、新たなSNSアプリ「多闪」を打ち出した。バイトダンスは近年開発したTikTokなど若者の支持を集める商品を複数持つため、今回の発表会も注目を集めた。

しかし現在、アプリストアでは「多闪」は検索結果に上がらず、バイトダンスが提供するリンクからテストバーションをダウンロードするしかない。さらにiOSからのダウンロードは定員を満たしたため、アンドロイドからのダウンロードのみという状態だ。

 

「多闪」の機能とは?

チャイトピ!は実際にダウンロードしてみた。登録にはTikTokのアカウントを通して登録するしかないようだ。使用してみると、以下の機能が備えてあることが分かる。

  • ムービーを通して友達とコミュニケーションをとることができる
  • アップしたムービーの公開時間は72時間で、72時間後は自分だけに見えるようになっている
  • ビデオホンバオ(紅包)を送信できる

▲ナビには「消息」と「世界」がある。「消息」は友達とのチャットページを指し、「世界」では不特定多数のユーザーがアップした動画を閲覧できる。

▲友達とのチャット画面には、ビデオ撮影機能が大きく目立つように設置されている。ビデオを通してチャットさせることが多闪の狙いだ。

バイトダンスによると、多闪の主な機能はビデオによるチャット機能だ。知人間の軽薄化した関係をより身近なものへ取り戻させることを狙いとする。アプリには「いいね」やコメント機能はない。これはユーザーがプレッシャーを感じず、気軽にムービーをアップできるようにという。72時間しか公開されない設定は、WeChatのモーメンツにおける三日間以内の投稿のみを表示する機能と似ている。

今回リリースされたビデオホンバオ送信機能は今までのホンバオの形を変えた。SNSアプリでは普通のホンバオ、音声ホンバオなどはあったが、ビデオホンバオは今回が初めてだろう。しかしこのビデオホンバオはアリペイとWeChat Payのいずれもサポートしてないため、銀行カードへのアクセスが必要となる。手続きを完了するには少し手間がかかりそうだ。

▲ビデオホンバオを撮影した後、好きなスタンプを自由に画面に張ることができる

バイトダンスに加え、ほかに二つのアプリが同日公開された。ビデオ再生ソフト「快播」の元創業者の王欣はSNSアプリ「马桶MT」を公開した。知り合いの間の匿名チャットが狙いらしい。しかし早くもこのアプリのダウンロードは現在不可能で、公式サイトではサーバー容量が足りないため使用できないとの詫びのコメントが掲載された。

もう一つのアプリは2018年にリリースされ、30日間で750万人ものユーザーを獲得したSNSアプリ「子弹短信」のアップグレードバージョン。名前を聊天宝」に変更し、友達紹介でお金がもらえるなどのキャンペーンでユーザーを惹きつける作戦だ。

▲聊天宝を開くと、最高2000元の友達紹介キャンペーンの宣伝が目立つ。

中国はまもなく国民最大の祝日、春節を迎える。WeChatへ挑戦した三社もこのタイミングでSNSアプリを公開したのは、春節を狙って一気にユーザーを獲得するためだろう。テンセントが提供するWeChatはSNS分野で統治的な地位を持っている。最新のデータでは、WeChatのMAUは10.8億人。しかし、これからの成長は難しくなるだろうとの声も挙がっている。バイトダンスを含めた複数企業が今回WeChatの地位に挑戦したが、WeChatもその脅威を感じたのか、三社が公開したSNSアプリのWeChatでのシェアが遮断された。WeChatを利用してのQRコードによるアプリのダウンロードもできない状態だ。「马桶MT」開発者王欣はweiboでリンクを開けない様子を捉えたキャプチャーを投稿し、「君は何を恐れている?」とWeChatへの不満をほのめかした。

▲王欣のweiboでの投稿

中国のSNS市場では、最大手のテンセントが他社からの挑戦を受け続けてる状態だ。以前にもTikTokのWeChatでのリンクシェアを遮断したことがあるが、結果的にTikTokの成長を止めることはできなかった。今の支配的な地位を保つためにはリンクシェア以外の更なる努力が必要なことは明らかであり、今後テンセントがどんな手を打ってくるのか楽しみだ。