中国シェア第1位の越境ECプラットフォーム網易コアラ(Kaola.com)に先日、販売しているカナダブランド「カナダグース(CANADA GOOSE)」のダウンジャケットの偽物疑惑が浮上しネットで注目を集めた。真偽鑑定は2回も行われたがその結果が一致しないことにも議論が寄せられた。
事件の経緯
2018年12月、ある中国人女性が網易コアラで購入したカナダグースのダウンジャケットにほつれがあったことから偽物と疑い、商品に付いているロゴや偽造防止ラベルなどの写真をカナダグース公式のメールアドレスに送ったことをきっかけとする。彼女がそのメールにて真偽の鑑定を求めたところ、カナダグースからは同ダウンジャケットが偽物であるとの返事が来た。
網易コアラは同ダウンジャケットの買い付けから販売まですべてのサプライチェーンを確認し、本物であると表明した。すると、再度カナダグースへ真偽の鑑定を求めたところ、今度は公式からも本物であるという返事が来たという。
現在もこのダウンの真偽は明らかになっていない。網易コアラは当該ダウンジャケットを、中国にあるカナダグースの指定メンテナンス工場に送り再度真偽の鑑定を求めたが進展は未だにない。
世間ではカナダグースが初め写真だけで真偽を鑑定したことを疑問視する声も高まっているが、一方で越境ECプラットフォーム上の偽物商品販売への懸念も再び浮上した。
厳しくなるネットビジネスでの責任 偽物との闘い
事件発生後、網易コアラは直ちに対応し、自社プラットフォームで販売している商品が本物であることを保証すると強い態度を示した。ここから中国越境ECの競争の激しさが伺える。
2019年1月、中国電子商取引法が正式に施行された。同法案はEC業界を規範化するため、偽物の取り扱いに細かい規定を設けた。また、この法案はプラットフォームにプレッシャーを与え、ECプラットフォームの監督責任を明確に記載している。
関係データによると、中国2018年上半期の越境ECプラットフォームの市場シェアでは、網易コアラは26.2%のシェアを占めて首位に立っている。2015年にリリースされてから、網易コアラの商品は高品質で、コスパも良いとして多くのユーザーを獲得した。しかし、そんな網易コアラでも偽物取り扱いの課題に直面している。
実は今回の事件と似たような事件が以前にもあった。2018年2月、中国消費者協会が各ECプラットフォームのW11で販売した商品を抜き取り検査したところ、網易コアラを含む複数のプラットフォーム内のショップから偽物商品が検出された。これに対し、網易コアラは偽物だと認定されたエスティローダーの目元専用化粧水について、買い付けから販売に至るまでの過程は明らかであり商品は本物であると表明。さらに海外から直接買い付けているものと公式店が国内向けに製造・販売しているものとで差別されるべきではないとの不満も示した。その後網易コアラは名誉棄損で中国消費者協会を起訴したが、この案件はまだ結論が出ていない。
越境ECプラットフォームの課題
今回のこのダウンの真偽をめぐって、鑑定結果が1回目と2回目とで一致しなかったのは、カナダグースと網易コアラとの間で相反する利益関係に理由がある。
最近は多くの海外ブランドが中国市場に目をつけ、オンラインとオフラインの両方で店舗を開設するようになった。カナダグースもそのひとつであり、2018年9月に中国最大B2Cモールの天猫(Tmall)で旗艦店を出店し、同年12月には北京で初の実店舗を開店するなど中国市場への野心を示した。しかし越境ECプラットフォームで売っている商品は、天猫に公式出店している中国国内版としての商品よりも安く、そのためより多くのユーザーを惹きつけている。ブランド側の網易コアラに対する態度を想像するのは容易い。
実際に天猫と網易コアラで売っているカナダグースのベストを比較してみると、天猫では4000元、コアラでは2899元で販売されており、1101元(約1万8千円)の差がある。
▲同じ商品の価格比較(左は天猫、右は網易コアラ)
網易コアラのような越境ECプラットフォームの偽物取り扱いを疑う声は以前からあった。不十分な商品管理や市場監督、商品の真偽鑑定の曖昧な基準などの不行き届きが偽物の商品が出回る原因になる。
今後も公式店との差額がある限り、代理購入や越境プラットフォームが人気を保つだろう。しかし中国電子商取引法の施行もあって、ECビジネスをする者の責任はますます重くなりつつある。ユーザーの信頼を保つためにも、偽物対策はより入念に行わなければならない。