交通ICカード主流の日本から見て、中国の地下鉄改札におけるQRコード入場の技術を目新しく思う声は多かった。しかし今では、モバイル決済の発展に伴って自動改札のスマホ決済対応も珍しいことでは無くなった。スマホ対応が始まるまでは、中国主要都市でもNFCを採用した交通ICカードが広く使われており、日本と同じく改札口でカードをセンサーにかざして構内に入る仕組みであった。この交通ICカードは地下鉄やバス、タクシーなどのあらゆる交通機関で共通して利用でき、その点は便利である。しかしこのようなカードは収納が面倒であったり、紛失したりなどの問題が発生しやすい。では実体のない、バーチャルの交通カードがあったらどうだろうか。それをかなえるのが自動改札のスマホ対応であり、中国国内で急速に広まっていった。
現在中国では従来の交通ICカード以外に、QRコードによるものと、スマホ内蔵のNFCによるもの、この2種類のスマホによる改札通過方法が普及している。QRコード入場とは、アプリからQRコードを表示し、改札の読み取り機にかざして改札を通ることをいう。一方NFCとは近距離無線通信技術を指し、従来の交通ICカードにも同じようなチップが入っているが、このNFC機能を備えているスマホを改札のセンサー部分に接近させるだけでサービスを利用できる。両者ともに運賃は自動で引き落とされる。
4種類の交通系アプリを試してみた
チャイトピ!は、今回上海にて4種類の交通系アプリを実際に試してみた。
それぞれの登録方法・利用方法を以下にまとめた。
地下鉄
【Metro大都会】
Metro大都会は上海地下鉄公式の地下鉄専用アプリで、登録にはSMS認証、身分確認及び支払い機関との連携が必要。
乗り方:
アプリを開き、「乘车」から表示されるQRコードを改札の読み取り機にかざす。
▲Metro大都会を利用している様子
【上海交通卡】
上海交通卡は上海交通カードの公式アプリで、元々従来の、実体のある交通カードの管理用として運用されていた。後の2018年3月にiPhone、7月に華為、続いて小米を対象にバーチャルの交通カードの発行・利用ができるようアップデートされた。
これはNFC機能のあるスマホでのみ使用できる。使用にはSMS認証、個人情報の登録や支払い機関との連携をする必要がある。そのあとバーチャル交通カードを申請し、デポジットの20元を含めた料金をチャージすると利用を開始できる。
乗り方:
電源の入ったスマホの先を改札の読み取り機にかざすのみ。下の写真ではアプリが開かれているが、通過時特別にアプリを起動する必要はない。
▲上海交通卡アプリを利用している様子
バス
【WeChat・乘车码】
登録方法:
WeChatアプリ内のミニプログラム「乘车码」に入り、利用地域や利用目的を確認したうえでWeChat Payを使う際のパスワードを入力するのみ。
乗り方:
WeChatアプリを開き、ミニプログラムから「乘车码」を起動。「乘车」から表示されるQRコードを乗車口の読み取り機にかざす。
▲ WeChat乘车码を利用している様子
【アリペイ・乘车码】
登録方法:
アリペイアプリ内で「乘车码」と検索し、そこから登録を進める。
乗り方:
アリペイアプリを開き、「付钱」から下方にある「乘车码」選択。そこから表示されるQRコードを乗車口の読み取り機にかざす。
▲アリペイ乘车码を利用している様子
NFCとQRコードによる乗車サービスの違い
今回試した「上海交通卡」によるNFC機能を利用する方法では、改札口で立ち止まる必要もなく、素早く通過することができた。しかしこれはNFC機能のあるスマホでしか利用できない。現在中国ではiPhone、Huawei、xiaomiなどのスマホにNFC機能が内蔵されているが、そのうちHuaweiとxiaomiについては一部の最新機種にしかNFC機能がついていない。さらに、Huaweiとxiaomiのスマホを用いて「上海交通卡」による乗車サービスを利用するには、支払いに関する問題も大きい。これらのメーカーは自社が提供しているモバイル決済システムの利用促進のため、当該アプリではモバイル決済2強のアリペイ、WeChat Payともに利用できないようになっている。そのため改めて銀行カードへのアクセスが必要となり、手続きを煩わしく思う声が多く、現在当該アプリを利用しているユーザーは少ない。
iPhoneでは当該アプリにおいてアリペイとWeChat Payのいずれも利用できるため、iPhoneユーザーの間では「上海交通卡」は普及している。
一方QRコード入場については、NFCのような高い技術を求められないため、利用率は高い。NFC入場とQRコード入場の違いを以下にまとめた:
メリット | デメリット | |
NFC | •安全性はQRコードより高い •スマホをセンサー部分と接近するだけでサービスを利用できる |
•NFC機能のあるスマホしか利用できない •NFC技術のコストが比較的に高い |
QRコード | •QRコードをサポートできるスマホあればサービスを利用できる。 •QRコードによる決済手段のコストが低いため、中国で流行ってる |
•QRコードが騙し取られる可能性がある、安全性は懸念される •利用するには先にスマホからQRコードを表示させる必要がある。QRコードの反応時間が遅い |
モバイル決済の進歩に伴い、中国は交通の変革も続けてきた。その結果、現在はスマホ1台で地下鉄やバスに乗ることができるようになった。しかし、NFCやQRコードなど乗車方法はバラバラであり、アプリは統一されず乱立した状態にあるなど、課題は残る。
現在、アリペイの交通QRコードは中国の124都市で利用でき、WeChat Payの交通QRコードも全国の116都市で使える。しかしバスでの利用のみで、地下鉄は非対応の都市もあるため(上海もその一つである)、やはり不便さを感じるところはまだ多い。今後統一された乗車サービスが開発されることに期待する。