中国初の電子商取引法(EC法)が2019年1月1日、正式に施行された。正確には法律の管轄に入っていなかった代理購入業界では、採択後から施行までの間この法律について大きく話題となっていた。EC法の適用対象には中国での代理購入に加え、SNSを利用したネット販売なども含まれる。納税や営業許可などに関する諸規定により代理購入市場参入のハードルは上がり、代理購入というビジネスの存在そのものが危ぶまれるのではという見解も見られた。

さて、EC法施行から一ヶ月経った今、代理購入ビジネスは果たしてどのような変化を見せているのか?

 

SNSで生き残りを見せる代理購入ビジネス

EC法施行から間もない2019年1月初旬、WeChatを利用した代理購入では、音声機能を通じて客とのやり取りを行い、文字として残さない形をとっていた。また、商品写真の代わりに手描きのイラストを使用したり、商品紹介文を外国語で書くなどあらゆる手段を用いて検閲を避ける様子が連日国内ニュースで伝えられた。

さらにEC法は各ECプラットフォームでの監督責任を明確にした。EC事業者がプラットフォームを利用したい場合、その事業者としての資格の審査をプラットフォームに課している。つまり監督責任はプラットフォームにあり、一事業者が問題を起こした場合もプラットフォームの責任が問われることになる。

上記のWeChatを利用した代理購入に関するあらゆる施策もテンセントによる監視から逃れるためだが、テンセントはWeChatを用いた代理購入に関する制限は設けていないと述べている。個人のWeChatアカウントを利用しての商業活動は以前から推奨してはいないものの、EC法に合わせた新たな規則は未だに設定していないとのこと。

▲ WeChatモーメンツでの代理購入商品に関する投稿

現在、WeChatのモーメンツには代理購入者が投稿した商品が依然として存在する。しかしプラットフォームによる監視を逃れることができたとしても、税関による検査は代理購入者にとってやはり難関である。

2019年1月25日、杭州の空港で大量の高額物品を持ち込んだ乗客が税関での検査を受け、スーツケースからは化粧品など300件もの高額物品が見つかった。しかしこのように罰金のリスクを犯してでも法の隙间を拔けようとする代理購入者は少なくない。

 

実は細かい規則は未策定のEC法

EC法は適用対象や納税義務などについては規定したものの、実は細かい規則はまだ明確にされていない。例えば、営業登録を求められない「個人が展開する小額の取引」について、「小額」の具体的な範囲は定められていない。アリババのC2Cサイト淘宝(タオバオ)でも、ホームページには「EC法に関する細かい規則は現在設定中のため、出店中の事業者は現状安心して営業していただけます。」とのコメントが掲載された。現段階ではEC法が代理購入に与える影響力はまだ明らかになってない。

EC法採択以後の2018年の時点から、EC法は代理購入を制限するための法律ではという解釈が広まっていた。しかしこの法案は代理購入に限らず中国EC分野全般を取り締まる法律であり、消費者保護の観点から、業界を規範化するための法律である。代理購入への影響も当然あるが、正規のルートとの差額がある以上、代理購入そのものが消えるとは言えないだろう。