蔚来、巨額赤字により上海の工場建設計画を断念

蔚来汽車(NIO)は3月6日、2018年度決算を発表した。2018年の収益は49.5億元(約824億円)。そのうち自動車販売収益が48.5億元(約807億円)で、全体の98%を占めている。そして2018年純損失は96億元(約1598億円)で、前年と比べ92%拡大した。この巨額赤字の影響からか、予定していた上海・嘉定に工場を新設する計画も取り消している。

IPOに成功した中国初のEV(電気自動車)メーカーとして蔚来汽車の決算には注目が集まっていた。蔚来汽車は2014年に成立され、社歴わずか4年のスタートアップ企業である。今回の蔚来が出した巨額赤字を機に、加熱していた中国の電気自動車市場の未来も懸念され始めている。

蔚来汽車が手掛ける電気自動車「蔚来ES8」の2018年総生産台数は12775台で、販売台数は11348台。生産能力が向上し、販売状況も良好にあったため収益は増加した。しかし営業コストの増加と運営・開発への資金投入のため、蔚来汽車の大規模な赤字運営状況からは脱せずにいる。

 

2018年は蔚来にとって特別な一年

蔚来汽車は2018年9月にアメリカで上場した。創業わずか4年での上場という偉業を成し遂げた上に、上場後も安定した株価を見せており、2018年は蔚来にとって記念すべき年といえる。そして上場後、2018年Q4に蔚来汽車は生産能力飛躍的に向上させ、Q4だけでES8を8096台も生産した。

また、蔚来汽車はオフラインサービスの運営にも多くの資金を投入した。すでにES8ユーザーの78%をカバーできる数の充電スポットを設置しており、移動式の充電車両を数百台手配するなど、ユーザーの充電問題対策に注力した。

▲蔚来汽車のアプリを表示したスマホの画面

現在、蔚来汽車のスマホアプリのAUは20万人に達し、自動車関係アプリの中で上位に立つ。蔚来汽車アプリはすでに自動車を購入した顧客に加え、アプリをインストールしているものの未だ商品の購入には至っていない潜在的なユーザーに向けて車の使用方法や購入ガイドを提供する。ほかにも、電気自動車業界の情報や蔚来の自動車を購入した顧客によるレビューも掲載している。

 

中国政府によるEV補助金削減+中国経済の変化=EV業界に打撃

2018年上半期からエコカーに関する政府補助金減額の報道がよく目にされていた。エコカー産業の発展を推進するため中国政府は2013年から大規模な補助金政策を始めた。過去数年、エコカー市場に波が訪れ多くの投資が寄せられた時期があった。しかし2017年以降、政府補助金は年々削減されていき、2020年を最後に補助金政策の停止が確定した。今まで政府の補助金に依存してきた企業らは淘汰されることになると思われる。

蔚来汽車の2019年Q1〜Q2の生産・販売目標は2018年Q4より5割低く設定されている。中国経済発展の減速という向かい風も加わり、蔚来汽車など電気自動車メーカーは軒並み大きな困難に直面している。この先中国の各EVメーカーがどうこの壁を乗り越えていくのか、目が離せない。