中国では2018年のオンライン小売の売り上げ総額が9兆元(約140兆8000億円)に達し、6年連続での世界首位を記録したと中国商務部が発表した。また、中国インターネット情報センター(CNNIC)のデータによると、2018年の中国ネット通販ユーザー数は6.1億人と、前年比14.4%増であった。

中国の越境ECは中国人の海外製品に対する高い信頼感をきっかけに始まり、年々成長し続ける中国のEC市場には世界各地からブランドの進出が絶えない。特に日本やアメリカ、韓国のブランドが越境ECユーザーの中では人気があり、日本企業にとってはこれからも中国市場が“熱い”ようだ。今回は特に中国ECで闘う日本企業に向けて、越境EC市場の最新情報をまとめた。

 

2018年中国越境EC業界を取り巻く環境の変化

  • 米中貿易戦争

米中貿易戦争によって多額の追加関税措置が幾度となく発動され、一般貿易にも大きな影響を与えた。アメリカの商品は中国越境ECユーザーの中で人気が高く、関税の引き上げ対象を商品として取り扱う企業には大打撃であった。しかし一方で追加課税品目は電子部品や金属などが多く、日用品への影響は少なかったため、影響をあまり受けていない企業も一部あった。

 

  • 電子商取引法の採択と施行

中国初の電子商取引法の採択が注目を集めた。この法律は中国EC全体の運営ルールを整理し適切な規範を設けるものであるが、特に越境EC業界において最も議論がなされたのは「代理購入」への影響だった。電子商取引法によって代理購入の商品価格が上がると、ユーザーは正規ルートである越境ECモールで購入するほかなくなるのではと予想された。しかし施行から現在2か月以上もの月日が立ったが、中国最大のSNS・WeChatのモーメンツには代理購入の商品に関する投稿が依然として存在する。また、細かい規定も未だ発表されていないため、今のところ代理購入業界は生き残りを見せている。

 

  • 越境EC新政策が業界の発展を後押し

電子商取引法の施行と同時に、2019年1月1日から越境ECに関連する輸入に対して新たな政策が打ち出された。この政策は越境ECにおける中国への輸入商品の取引上限額を引き上げ、越境ECの発展を後押しした。

 

各越境ECプラットフォームの市場シェア

中国リサーチ企業iiMedia Researchのデータによると、2018年の中国越境EC

市場では、網易コアラがシェア全体の27.1%を占め首位に立った。次いで天猫国際が24%で2位、海囤全球(京東全球購から改称)が13.2%で3位となった。

▲2018年中国越境ECプラットフォーム市場シェア(出典:iiMedia Research)

中国越境EC市場ではトップ3が合計6割以上の市場シェアを占めている。そのなかでも首位の網易コアラは品質保証や本物保証などを売りに数年連続で越境EC市場シェア一位の座を獲得してきた。しかしそんな網易コアラでさえも偽物商品問題はつきものであり、対応に追われている。2018年12月、網易コアラで販売されていたカナダグースのダウンジャケットに偽物疑惑が生じ、さらに2019年3月にはエスティローダーが網易コアラで販売されている商品が偽物であるとして、商標権侵害で網易コアラを起訴している。

輸入取引額の引き上げなど政府による促進政策は中国越境EC市場へさらなるビジネスチャンスを与え、市場の発展は全体的に良い方向へ向かっていると言えるだろう。しかしビジネスが広がるほどに、ユーザーからの要求も日々高まっていくことになる。ECプラットフォームは商品の品質・本物保証レベルをより高める必要があり、物流の処理能力向上なども課題として挙げられる。今後も越境EC業界はこれらの増え続ける課題への対応に忙しくなるだろう。