中国都市部のEC市場を巡る競争は激しくなり、市場も頭打ちになりつつある。そこでEC企業らは新たな成長エンジンとして3・4線都市などのいわゆる農村部に目をつけた。その一例として、創業から3年も経たないうちに上場を果たした中国EC新勢力の拼多多(ピンドウドウ)は、地方都市のユーザーをターゲットにし驚異の急成長を見せた。今まで注目されてこなかった農村部EC市場もついに、大手ECによる開拓が始まっている。

次の戦場は農村EC 各プラットフォームで新サービス続々

拼多多は新興企業にして、2018年度収益131億元(約2157億円)、平均MAUは2.7億人を記録し、中国ECトップ陣営にまで成長した。アリババや京東もその脅威を感じたのか、農村EC市場向けに機能のグレートアップや新サービス開発などを次々と行い、農村市場で戦う姿勢を見せた。

アリババが運営する淘宝(タオバオ)の2018年度新規ユーザーは約1.2億人で、主に農村部のユーザーが新規登録したものと発表された。淘宝は以前から地方都市の物価にも適する低価格を売りにユーザーの獲得に成功しており、農村市場への注力も初めてではない。たとえば、2014年にアリババが始めた「農村淘宝」戦略は、ECプラットフォームを通して地方部の住民でも都市部の製品を、都市部の住民でも地方部の農作物を購入できるという、農村と都市の商業的交流の活性化を目指して打ち出された。実はこの「農村淘宝」戦略は順調には行かず、物流能力の不足などを理由として地方部に設置された淘宝実店舗は相次いで閉店してしまった。しかしそれでもアリババは農村市場を諦めていない。

今年3月、アリババ傘下の共同購入サイト聚划算(ジューファスワン)はサービスの全面的グレードアップを宣言した。特に地方都市のユーザーに向けた高品質かつ低価格の商品提供を目標としている。さらに4月には淘宝スマホ版で「特売コーナー」のリリースが予定されており、やはりこれも低価格を売りとするもので、出店企業に対して一定の価格基準を定めることにしている。さらに全商品の送料免除や本物保証などのサービス提供も必須条件になる。

一方、京東も2018年4月に共同購入サービス「京東拼購」をリリースし、拼多多への対抗姿勢を示した。京東の発表によると、2018年末の時点で「京東拼購」への出店企業は13.5万社にも上り、あらゆるジャンルの商品をカバーしている。

中国農村ECの市場状況

2015年から農村部の貧困離脱を目標に、中国政府は農村ECに関する意見や政策を積極的に出して農村ECビジネスの活性化を図っている。2018年の中国ネット小売の売上は7兆元(約115兆2680億円)で前年と比べ25.4%増加した(スマホ通信費チャージ等バーチャル商品を含まない)。その中でも地方都市におけるネット小売の売上は1兆3700億元(約22兆5590億円)で前年比30.4%増、さらにそのうち農産物のネット小売売上額は2305億元(約3兆7950億円)と、前年比33.8%増を記録した。政府の支援政策による農村ECの発展は数字からもはっきり見て取ることができる。

中国インターネット情報センター(CNNIC)が発表したデータによると、2018年の中国ネットユーザー数は8.29億人で、そのうち地方都市のネットユーザーは2.22億人と、全体の26.7%を占めている。まだまだ伸びしろのある農村EC市場はこれからさらに勢いづいていくことになるだろう。