中国ニュースアプリの趣頭条(Qutoutiao)は3月28日、アリババから1.71億米ドル(約189.3億円)の投資を受けたことを発表した。趣頭条は2018年にアリババのライバル社であるテンセントからの投資も受けた。趣頭条とは一体何者なのか、アリババとテンセントという中国ツートップにも注目されるその要因と共に分析していく。

 

趣頭条、リリース後2年で一気に上場へ

ニュースアプリ趣頭条は2016年6月にリリースされ、そのわずか2年後の2018年Q4の時点でDAU(1日あたりのアクティブユーザー数)は9380万を超えた。その年の9月にはナスダックでの上場に成功し、リリースから間もなく上場を果たしたという経歴はECプラットフォームの拼多多(ピンドウドウ)と似ている。実はこの2社の共通点はこれだけでなく、ユーザー層なども似ているのだ。

趣頭条は拼多多と同じく、大都市よりも3・4線都市などのいわゆる地方都市に住むユーザーにターゲットを絞っている。趣頭条のスローガンは「让阅读更具价值(読むことに更なる価値を)」であるが、その「価値」の部分に趣頭条ならではのサービスを見ることができる。なんと、ニュースをひとつ読む毎に独自の単位で6~10コインほどの「ポイント」を獲得できるのだ。一番初めは新規登録時に直接1元をもらうことができ、1600コインで1元に換金できる。また、友達の勧誘やミッションをクリアすることでもコインを集めることができる。

ニュースを読み進めると、右下の赤色のゲージが満たされていく。
完成すればコインを獲得できる。

すでに大手企業に占領された中心部を避け、地方都市市場を狙っての大量資金投入による早期シェア確保の戦略はある意味では成功している。シェア自転車のofoやコーヒーチェーンのluckin coffeeなど、ネットビジネス業界のスタートアップでは同様の戦略を採用した企業が多い。しかし、この戦略もはじめは良いがその後の発展が難しいという大きな壁がある。

 

テンセントにアリババと、大手二社が出資 その狙いとは?

ポイント配布など報酬ありきでのユーザー確保は会社運営に多大な資金負担をかける。広告収益などもその大部分をユーザーに配布する報酬として消費している。趣頭条の2018年度決算報告によると、赤字(non-GAAP)が3.667億元(約60.6億円)で、この赤字幅は前年と比べ激増している。この様子では収益成長が報酬配布による支出増加のスピードに追い付かないのではとの見解も多くみられる。

また、この報酬システムにはビジネス的観点以外にもひとつ問題がある。それはユーザーが本当にニュースを読んでいるのかという点であり、2018年5月には中国国営メディアが趣頭条を名指し、このビジネス手法を批判している。報道の価値を下げ、コンテンツの質の低下を誘うのではという懸念の声もある。

ではなぜ、このような懸念要素の多い趣頭条にテンセントやアリババは目をつけたのか。

テンセントは2018年3月に趣頭条のラウンドBの資金調達に参加し、現在は約7.8%の株式を所有している。テンセントにとってメディア業界における最大のライバルはバイトダンスで、同社はニュースアプリの「今日頭条」とショートムービーアプリのTik Tokを看板商品として運営している。世界に5億ものユーザーを抱えるバイトダンスの脅威は王者テンセントにとっても無視できない存在となり、バイトダンスのニュースアプリ「今日頭条」の対抗馬として同じフィールドで戦う趣頭条を育てたいという狙いを感じる。

一方アリババにとっては、趣頭条が押さえる3・4線都市のユーザーは魅力的である。アリババのライバルである拼多多も先述の通り、3・4線都市のユーザーを確保し急成長を果たした。そんな拼多多の成長に対抗すべく、アリババも趣頭条をうまく使って地方都市ユーザー確保を狙っていきたい。これら大手による投資を趣頭条もうまく利用できるかどうかも、今後を決める重要な要素になるだろう。