中国の映画チケット販売サイト「猫眼電影」が運営する映画興行収入分析サイトが発表したデータによると、Q1の中国映画興行収入は186億元(約3084億円)で前年比8%減となった。入場者数も4.8億人と、前年と比べ14%減少している。近年、中国映画市場は急速に成長し、2018年Q1の興行収入はアメリカを抜いて世界最大となった。これはアメリカ以外の地区が初めて世界の興行収入の首位に立つという快挙であり、中国映画市場への期待が高まった。しかし今年Q1データから見ると、急速に拡大してきた中国市場に陰りが見える。

 

2014年から急成長を見せた中国映画市場

中国では5年ほどに映画チケットのオンライン販売がスタートし、2014年には映画市場を活性化させるべく「チケット補助金」という割引制度が生まれた。消費者は9.9元(約165円)や19.9元(約330円)などと安価でチケットを購入でき、割り引かれた分は配給会社が支払う。この制度による格安チケットで多くの国民を映画館へ導くことに成功した。

また、中国政府による政策支援やアリババ、百度など大手ネットビジネス企業が映画部門を立ち上げ、映画市場へ参入したことも市場の発展を後押しし、2018年には中国映画興収は600億元(約9952億円)を突破した。

▲2016〜2018年中国映画興行収入(出典:猫眼専業版)

 

中国映画市場の発展にブレーキ

急成長した中国映画市場は2019年に入り、低迷を見せた。2018年の年末時点では全国のスクリーン数は6万を超え、前年度比20%増と成長を保ってはいたものの、興行収入の成長はそれを下回ってしまった。2018年後半からは映画館の閉店が相次ぎ、2018年の1年間でおよそ300軒もの映画館が閉店した。

2018年に発覚した中国の大物女優・范冰冰(ファン・ビンビン)の巨額脱税事件はまだ記憶に新しい。大物女優による脱税は中国の映画界に大きな波紋を呼び、中国当局も映画業界に対して自主的な税務調査と未納分の納税を呼びかけた。この事件の影響で映画業界への投資が減少し、2019年上映予定の映画数も前年より少なくなった。

また、映画市場を加熱させた格安チケット作戦は企業に大きなコスト負担をかけた。映画会社がチケットを大量に買い上げ、興行収入を水増しするという事件も起き、当局はついに2018年、「チケット補助金」制度を禁止した。9.9元や19.9元の格安チケットが消え、元の姿へと戻った中国映画市場は興行収入および入場者数を減らしていった。

中国経済の発展と共に繁栄を見せ、今はまた1つ壁を乗り越えなくてはならない中国映画市場にとって、2019年は転換期となるだろう。「チケット補助金」制度は撤廃され、TikTokなどのショート動画アプリやiQIYIなどの動画配信サービスにエンターテイメントを求める中国現代社会において、映画館に足を運ぶに値する新たな魅力を創り出すことが映画界の今後の課題となる。