ユニクロは中国市場で最も成功したアパレルブランドの1つである。ユニクロの親会社ファーストリテイリングが発表した最新決算(2018年9月〜11月)によると、収益は6,444億6,600万円(前期比4.4%増)、営業利益は1,046億6,500万円(同8.1%減)と、増収減益となった。発表によると、日本国内市場では暖冬の影響で冬季コア商品の売上は伸び悩んだものの、海外市場の業績は好調だった。アパレル業界大手他社が業績不振に陥る一方で、ユニクロは暖冬にも関わらず特に中華圏では増収増益を達成した。

 

中国で苦戦するファストファッションブランド

中国ではEC発達の影響を受け、ファストファッション業界の経営が低迷している。2018年にはイギリスのブランドNew Lookが業績不振のため中国市場から撤退した。他にも中国のパートナー企業を通して中国へ進出したイギリスブランドTOPSHOPも、契約終了前にパートナー企業との提携を打ち切り、オンライン店舗も閉鎖した。大手のH&MやZARAの店舗拡張の勢いも衰え、他の成長エンジンを求めオンライン販売に注力したり、人気のコスメ分野へ進出したりする企業も多く、数々の変革が起きている。

 

ユニクロが1人勝ち その勝因は?

ファストファッションブランドの閉店が相次いだ中、ユニクロは中国市場で毎年80〜100軒の新店舗を開店しており、さらに2020年までに中国店舗数1000軒突破の計画までをも発表している。この計画を達成した場合、日本国内の店舗数を超える可能性さえもある。

ユニクロはなぜ中国市場で圧倒的な成長を見せ、1人勝ちに成功したのか。その勝因については諸説あるが、チャイトピ!は有力な要因をまとめた。

 

◼️デジタルマーケティング施策、O2O推進

オンラインとオフラインの融合という中国特有の「ニューリテール」トレンドに順応し、ユニクロはデジタルマーケティングに注力、O2Oの販売を押し進めた。たとえば、オンラインで注文した商品を実店舗で受け取れるという一風変わったサービスがある。利点としては、顧客は商品を待つ必要がなく送料もかからず、会社にとっても配達業務に割くコストをカットできることなどが挙げられる。

▲オンラインストアで注文し、実店舗で受け取るサービスを実際に展開しているユニクロ店舗(上海市)

 

◼️広告に依存しない、商品そのものに強みを持たせるやり方

多くのファストファッションブランドがタレントの拡散力や影響力に依存する一方で、ユニクロは商品の質や消費者体験を特に大切にしている。ファストファッションはデザインから発売までの期間が短く、その分問題も起きやすい。たとえば、毎年似たようなデザインであるとか、服の質も普通またはそれ以下であるなどという消費者の声は大きい。ユニクロも毎年、新発売のものは1000デザインほどしかないが、シンプルでどの年齢層にも受け入れられる商品が多いところが一番の強みである。上海市内のユニクロも、若者からお年寄りまで幅広い年齢層の顧客でにぎわっていた。

 

◼️能力を生かした人材育成・人材配置

中華圏事業の責任者である潘寧(パンニン)が入社したとき、ユニクロはまだ山口県の小さな一企業でしかなかった。中国・北京市出身である潘寧は2005年から香港市場の開拓を任された。当時ユニクロの中国店舗はわずか7軒しかなかったが、潘寧は中間層の消費者をターゲットに消費者体験の向上に尽力し、中国事業拡大に大きく貢献した。入社当時は日本店舗の一スタッフとして働き始めた潘氏であるが、今では責任者として幹部候補の人材育成を意識した中国での採用業務にも取り組んでいる。

ファーストリテイリングの発表によると、特に「UT(グラフィックTシャツ)」と「感動パンツ」の販売が好調とのこと。世界中のどの年齢層からも受け入れられる手堅いデザインを武器に、長年のやり方で安定した売上を築く裏で、中国でも人気の日本のサブカルチャーとコラボしたり(UT)、先述の通りニューリテールを意識したサービスをスタートするなど中国市場の激しい変化への順応にも抜かりがない。

現在日本国内での売上においては大きな成長を見せられていないユニクロにとって、中華圏市場はユニクロの成長エンジンと言っても過言ではないだろう。