急速な発展を見せた中国社会は今日も絶えず変化しており、そして社会の変化と共に言葉も日々移り変わっていく。表意文字である漢字のみを使う中国語は日本語より一語一語が短い傾向にあり、日常的な事柄から経済現象に至るまで、新しい概念が生まれてはすぐに簡潔な名前が付けられる。

今回は、今インターネット上でよくみられる中国の流行語・ビジネス用語を5つ紹介します。若者言葉からビジネス関連まで色々集めているので、いくつ分かるか是非チェックしてみてください!

佛系(仏系)

「何でも良い」、「なるようになる」などのような生活に対する消極的態度を指す。「佛系」の登場は2014年にさかのぼり、日本の女性ファッション誌で紹介された「仏男子(ぶっだんし)」という新語を由来とする。これもマイペースで恋愛などは面倒と考える消極的な若い男性を形容し、「佛系青年」と少し形を変えて中国へ輸出された。

「佛系」が中国国内で本格的に流行し始めたのは2017年に「90年代生まれが家庭を持ち始めた」という話題が微博で流行したことをきっかけとする。中国のインフルエンサー張偉がWeChat公式アカウントで「佛系食客」や「佛系玩家(ゲーマー)」など90年代生まれの若者の生活を表す造語を生み出し、流行が生まれた。昨日の昼ご飯をそのまま今日も食べたり、ゲームでもずっと敵を倒さないでいるなどという具合である。

一方で、「佛系」は必ずしも悪い意味ではない。多くは人生に嫌気がさして佛系という生活スタイルを選択するに至るが、他人の意見に関わることなく好きなことをして生きていくというのは一種の高度な生活態度ともいえる。

 

退役熬夜员(引退徹夜選手)

「熬夜」は日本語で「夜更かし、徹夜」という意味で、「退役熬夜员」は老いてしまい無茶な夜更かしができなくなってしまったため、徹夜行為を引退するということを指す。

国民の「ネット生活」は中国の巨大なインターネットビジネスを支えている。スマホはTikTokや頭条(ニュースサイト)、ゲーム、ドラマなどエンターテインメントであふれ、「もう少しだけ」とするうちに朝を迎えてしまうような生活を送る若者も少なくない。しかし最近になってそれも年を重ねるとそうはいかなくなってきたという世代が生まれる時代に入り、「退役熬夜员」というインターネット用語が誕生した。

2018年中国睡眠指数报告によると、90年代生まれの若者のうちおよそ半数が23時から0時、全体の22.4%が深夜1時以降に就寝すると回答した。また、同年の全国睡眠指数報告によると、中国人の平均睡眠時間は2013年から1.5時間減らして6.5時間となり確実な「熬夜员」の増加が見て取れ、この語は今や微博だけでなく多くのネットメディアも取り上げるほど注目を集めている。

 

春节档电影(春節映画)

中国語で「档期(檔期)」は映画上映やテレビ放送などの時期、期間を指す。「春节档电影」は春節期間に上映される映画のことをいい、毎年春節は映画業界の書き入れ時となった。

このトレンドは2006年からしばしばメディアで取り上げられるようになり、当時は一週間の興行収入は8000万元(約13億2000万円)ほどであったが、13年後の2019年にはわずか4日間で興行収入41億元(約676億4000万円)を突破した。特に2010年春節に公開された「アバター」は異例の大盛況となり、興行収入も一気に押し上げ、本格的に「春节档电影」のトレンドに火をつけた。

2019年は10本の春節映画が公開され、映画チケット予約サイト猫眼のデータによると、SF映画「流浪地球」(The Wandering Earth)」が興行収入20億元を突破し、1位に輝いた。それに続く2位から4位の3本はすべてコメディで、例年春節映画のおよそ半分はコメディ映画となっている。春節は実家に帰り家族みんなで笑って新年を迎えたいというのが中国人の気持ち。

 

睡后收入(睡眠收入)

「眠りについて目が覚めるとそこには収入がある」と訳すことができる。しかしこの言葉は決して本当に睡眠時にお金が稼げるということを指すのではない。中国語で「被動收入」という既存の言葉とも言い換えができ、家賃や知的財産による収入などを指す。2018年から本格的に流行し始めた言葉。

この言葉は英語講師でありながら投資家でもある李笑来の発言に由来する。自身が出版した英語教材を例に、長年の販売により今でも少なくない印税を得ていると述べ、このお金が「睡后收入(睡後收入)」だと冗談めかしく語った。

またこの言葉が投資を語るとき以外に、インターネット用語としても流行し始めたのはネットユーザーが微博で共有したことをきっかけとする。「睡后收入」は世界共通の夢であると言えるが、しかし実際には収入どころか家賃や税金による支出が多いではないか、と「睡后支出」という言葉も誕生した。

 

口红及格线(口紅合格ライン)

「口红及格线(口紅及格線)」とは、消費者が1年で購入する口紅の本数の基準(3.3本)を指す。

「リップスティック効果」という専門用語が生まれるほどに、口紅は手頃な贅沢品としてどの時代でも女性に愛され続けている化粧品の1つである。時代は移り、Eコマースが台頭する中国の化粧品業界はライブストリームを利用した販売方法でメイベリンが2時間で1万本もの口紅を販売したことでも大きく話題となった。

統計によると中国ECモール「天猫」で毎年消費者が購入する口紅の平均本数は3.3本であり、この「3.3本」は中国化粧品業界のひとつの基準となった。インターネット上では皆それぞれ1年間に購入した口紅の数が「3.3本」に到達しているかどうかで盛り上がり、達していなければ無理に購入して「口红及格线」をクリアする者までいた。

※リップスティック効果:経済が低迷すると、手頃な贅沢品として口紅などの消費が増加するという消費者行動の傾向。

関連記事はこちら:中国語の流行語を知ろう・第2弾(种草など)