中国ではスマホおよびモバイル決済の普及と共に、デリバリーサービスの発達もとどまる所を知らない。日本に比べて専業主婦の少ない中国では家族の食事も外食が多い傾向にあり、このこともデリバリーサービスの成長を後押ししている。中国のリサーチ会社iiMedia Researchの報告によると、2018年の中国デリバリー業界の市場規模は2400億元(約3兆9423億円)を突破し、ユーザー数は3.58億に達した。
日本でのデリバリーといえば、伝統的なピザデリバリーに加え最近になってようやくUber Eatsによるファストフードをはじめとしたデリバリーが大都市では普及し始めた。一方、中国では手間のかかる料理はもちろん、食べ物以外にもあらゆる業界の商品をスマホひとつで注文できるところが面白い。中国では今やデリバリーが社会インフラになりつつあるのだ。
今回はデリバリー大手2社“美団”と“餓了麽”が提供するサービスを参考に、中国デリバリサービスで買えるあれこれを紹介していく。
▲美団アプリのトップ画面
美団アプリのトップ画面ではフード、スイーツ・飲み物、スーパー、野菜・果物、医薬品の計5つのカテゴリーが設置されている。このような多すぎず分かりやすい種類わけも中国デリバリーのサービスの中で重要な一部である。以下では、この5つのカテゴリーとその他にも展開されるさまざまなサービスを解説している。
- フードと飲み物
フードと飲み物のデリバリーは最も利用されるサービスで、1日3食のすべてをデリバリーで済ませる消費者も少なくない。スマホで注文後、平均30分から40分で届き、配送中は配達員の動向をリアルタイムで追跡できる。
このサービスは国民の食生活を変えただけでなく、飲食店にも大きな変革をもたらした。多くの飲食店がデリバリープラットフォームに出店するようになり、その中でも高級ブランドのイメージを維持するべく出店を見送り続けたスターバックスでさえついに2018年、餓了麽に出店した。デリバリーサービスと安い価格設定で大きく成長した中国本土のコーヒーチェーンluckin coffeeとよく対比され、その脅威に負けての出店とみられる。
▲カルフールなどのスーパーも餓了麽に出店
- スーパー
スーパーの商品もデリバリーサービスで注文できる。スマホで注文後、スーパーの店員が注文商品を店内で探し集めて配達員に手渡す。平均して1時間以内には届くようになっていて、さらに10㎏以上のものでも配送してくれるため主婦にとっては助かる。
- 果物や野菜などの生鮮食品
現在、生鮮食品ECは中国で話題の業界の1つである。美団や餓了麽などのデリバリー大手以外にも、アリババやテンセントなどが新たに市場へ参入したことで業界の競争はさらに過熱した。
これもスーパーのカテゴリーと基本的には同じだが、繊細な食品ということで保冷などの措置がきちんとしている点で、生鮮食品カテゴリーとして独立している。また、このカテゴリーの商品はスーパーよりも元は市場で販売されていることが多く、たくさんの個人店がプラットフォームに出店した。餓了麽が2017年に杭州の市場と連携し野菜などのデリバリーサービスを開始してからは、デリバリー経由の売り上げが全体の8割を占める店も現れたという。これに続いて美団も「美団買菜」という生鮮食品デリバリー専用のアプリをリリースし、生鮮食品デリバリー事業に注力していく姿勢を示している。
- 生花
花屋が自社サービスとして配達を行っているケースは以前からあるが、専用の配達員を設置するための人件費は1つのデメリットであった。現在は花屋もデリバリー業者と連携し、プラットフォームを通して花束の注文・配達サービスを提供するのがトレンドとなった。
- 医薬品
体調がすぐれないときは、薬局に行かずともスマホで薬を買うこともできる。餓了麽のアプリでは鼻炎や風邪の薬、胃薬などの医薬品の提供が確認できた。フードデリバリーと同じように、市販薬をスマホで注文し、およそ30分で届くようになっている。
▲美団で販売されるスマートスピーカー
- スマホなどの電子製品
最近はイヤホンや充電器などの小型電子製品もデリバリー業界に現れた。さらにデリバリー業者は通信機器の販売企業とも連携し、スマホのデリバリーサービスをも打ち出し、現在中国の一部地域ではデリバリー経由でスマホを買うことができる。しかしスマホのような高額商品をデリバリーで買うにはまだ不安があり、このサービスの拡大には懸念の声もある。
▲2018年中国デリバリー市場シェア(出典:iiMedia Research)
iiMedia Researchが発表したデータによると、2018年の中国デリバリー市場はその51.8%を美団が占め、業界最大手となった。次いで餓了麽は47.4%のシェアを獲得し2位となった。この両社以外にも果物のECプラットフォーム「毎日優鮮」など専門的なアプリがデリバリー市場の競争に参戦し、細分化された市場シェアを奪おうとしている。デリバリープラットフォームは各社様々な業界に目を付け、相次いで新しいサービスを打ち出してきた。これからはバイクで運べるものなら何でもすべてデリバリーできるようになるかもしれない。
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