アリババ 傘下の物流技術開発企業・「菜鳥(cainiao)」は新たな物流サービス「丹鳥」を打ち出したと報道された。これまでに自社物流を建設する意欲を見せなかったアリババだが、「丹鳥」を通して物流配送分野に本格的に参入し、ライバルの京東と自社物流分野で対抗していくのだろうか。ECの発展に伴い成長してきた中国物流業界の競争が一層白熱化するだろう。

丹鳥とは?アリババと京東各社の物流戦略

アリババ は、自社での物流配送事業は行なっておらず、傘下の物流技術開発企業・菜鳥を通して複数の物流企業に出資し、間接的に物流市場に参入していた。アリババは自社物流の建設に興味がなく、物流パートナー企業と協力し全国規模の物流ネットワークの構築に注力するつもりだと公表していたが、今回打ち出したこの丹鳥とは一体何なのか?何が狙いなのだろうか?

実際アリババ は2009年に「芝麻开门供应链公司」とう物流企業を創立し、宅配サービスを提供していた。今回の丹鳥はその物流会社のグレートアップ版だという。関係報道によると、丹鳥の運営方法は京東と似ており、倉庫と配送の一体化を通じて配達効率を上げ高品質の物流サービスを提供する計画だ。

一方、自社物流事業が自社のEC事業に強力なサポートを与える京東も、その切り札である物流事業をより拡大していく方向だ。2018年京東物流は自社EC事業のサポート役から社会に進出し第三者の物流会社へと転換し、個人向けの宅配サービスを開始することを打ち出した。現在同サービスは全国の50都市までに拡大している。

京東物流がこの作戦を打ち出した背景には大きな課題も存在している。十数年もの赤字経営を続けている京東物流はいずれ、資金困難の問題に直面する恐れがある。会長の劉強東によると、調達してきた資金は最大で2年しか保たず、このまま赤字経営が続くならば、会社の収益を引き上げるため今年4月から配達員の基本給を取り消し、個人向けの宅配サービスを行いたくさんの集荷で稼ぐことへのシフトチェンジを考えている。この対策は会社内部で大きな議論を呼んだが、京東物流は経営リスクと真っ向から向き合い、生き残るためのおおきな決断を行なった。

EC大手が主導する物流企業らはライバルの陣地に足を踏み入れ、市場シェアを取ろうとしていることから中国の物流業界の激しい競争が伺える。

 

中国物流業界3勢力

現在中国の物流業界は、アリババが主導する民間物流企業の「四通一達」(申通、圆通、中通、汇通、韵达を指す、そのうち四通にアリババは出資している)、「京東物流」、民営速達大手の「順豊(SFエクスプレス)」の三勢力からなっている。

京東物流はECプラットフォームから物流配送まで全てをコントロールし、倉庫と配送の一体化で効率を高めたが、その分物流に投入したコストもかなりの額に及ぶ。これも京東物流赤字の要因である。

アリババは京東と異なり、菜鳥のプラットフォームを通して物流パートナーにデータサービスを提供し、共に物流ネットワークを構築している。中通、申通などの物流企業は元々アリババのEC事業に依存して成長してきた物流企業である。菜鳥を通して、アリババ はこれらの物流企業を一つの物流ネットワークに統合する狙いがある。

中国民間物流宅配最大手の順豊はサービスの品質向上と物流インフラの建設に注力し、中国物流分野での一大勢力となった。2017年にIPOに成功し、時価総額は3000億元までに上がり、同時期のテンセントの時価総額を超え快挙を達成した。しかし2006年から他社民間物流企業はタオバオなどECプラットフォームに依存し、ネット通販から生まれた大量の運送に取り組むなか、順豊はそのチャンスを逃した。その後順豊はネット通販の発達によるEC配送物が急速に増える背景下で、2012年に自社ECプラットフォーム「順豊優選」を立ち上げた。しかし激しいEC市場競争の中順豊優選はなかなか成果を出せなかった。

中国ネット通販の発展は物流業界に大きな影響を与え、伝統的な宅配事業トップの順豊は今アリババや京東が主導する物流企業による挑戦に直面している。将来物流業界3勢力の局面は大きく変わるだろう。