Vlogとは?TikTokに続く新たな成長産業か

Vlog(ブイログ)とは「Video Blog」からなる造語である。文章で表現する従来のブログとは異なり、映像を用いて日常生活を描くブログのことを指す。その配信者はvlogger (ブイロガー)と呼ばれ、動画の多くは3分から10分程度にまとめられている。英語圏からそのブームに火が付き、日本でも近年vloggerを見かけるようになってきた。日本国内でVlogを語る際はよくYouTuberとその特徴を比べられることが多いが、ここ中国ではTikTokなどのショート動画と比較する方が実用的である。Vlogはショート動画に比べ動画時間が長く情報量が多い。さらに配信者個人のストーリーと一体化したコンテンツが多いため、動画単体だけでなく配信者自身に注目が集まりやすい。Vlog は2012年に初めてYouTubeで登場し、その後タレントなどがVlogを活用してファンに日常生活を公開し始めてからより多くの人に利用されるようになった。

2018年上半期から中国でもVlogがホットワードとなり、2019年には中国最大の検索エンジン百度でのVlogの検索数が昨年の10倍にも急増した。この勢いに目をつけ、TikTokをはじめとする中国大手企業らはVlog分野に進出しVlogを推奨する体制を取り始めている。これからVlogが新たな成長エンジンとして中国動画市場をさらに拡大させる可能性に期待が集まり始めているのだ。

 

TikTok、百度、weiboなど中国大手企業らがVlog進出

中国では2017年からvloggerが現れ、一般人が自分の日常生活を撮影した動画をweiboなどのSNSに投稿し始めた。その後2018年に人気タレントの欧陽娜娜(オーヤン・ナナ)がweiboやTikTokに投稿した自身のアメリカ留学生活動画が人気を集め、Vlogという言葉は中国で一気に認知度を高めた。

▲欧陽娜娜のVlog。料理を作るビデオには25万のいいねが付いている。

中国版ツイッターともいわれるweiboでは2018年9月、vloggerを支援する「Vlog召集令」というイベントが開催された。2018年11月には動画共有サイトのbilibiliも、30日以内に4本のVlogを配信したユーザーに奨励を与えるなどVlog分野活性化への試みを行った。

2019年に入り、さらに百度やTikTokなどの大手インターネット企業もVlog分野に参戦した。百度傘下の「好看視頻」はアンドロイドバージョンでVlog専用チャンネルをリリースするなどVlog推奨に取り組んでいる。TikTokも15秒を上限とする短い動画が若者の間で人気を博したが、このVlogブームに目をつけ、作品長さの上限を5分に伸ばした。

▲15秒を超える動画は作品下部の「完整版」をクリックすることでフルバージョンが視聴できるというTikTokの新機能。

 

Vlogは果たして本当に次のトレンドになれるのか?

ショート動画の代表格であるTikTokのMAUは5億を超え、短い間に驚異的な成長を見せたが、実は中国ショート動画市場の発展は最近鈍化傾向にある。市場成長の頭打ちが見え始め、動画業界にまた火をつける新たなトレンドを作ろうと奮闘する動画プラットフォームも少なくない。Vlog進出もその施策の一つと言え、もしVlogがヒットすれば、影響力のあるvloggerらは作品に広告を入れるなどしてマネタイズもできる。

▲Vlog製作アプリ「VUE Vlog」。

しかし現在、中国におけるVlogの発展は順調とは言えない。Vlogブームをビジネスチャンスとみた大手企業らはこぞってVlog推進施策を打ち出したが、実際にVlogを通してマネタイズできたのはタレントなどの有名人だけで、今のところその効果は薄い。その原因としてはVlogの敷居の高さが挙げられている。ショート動画に比べ動画時間が長いことからも当然に映像編集やコンテンツに求められるレベルは高い。そのためVUE Vlogや一閃、猫餅など様々なVlog編集アプリが開発されたが、ショート動画ほどの流行は引き起こせていない状態だ。すでにこの分野に進出したインターネット大手らは次にどのような手を打ち、どこがこの競争の中でポイントを掴み、成功するか注目だ。