アリババのニューリテール戦略中核プロジェクト「盒馬鮮生」CEOの侯毅は今年3月にイベント内で、大型店舗の盒馬鮮生に続く「盒馬菜市」「盒馬F2」「盒馬mini」「盒馬小站」の計4つの新業態を発表した。

チャイトピ!編集部は以前から盒馬鮮生を代表とするアリババのニューリテール戦略に注目してきた。今回は4つの新型店舗のうち盒馬菜市と盒馬F2を訪問した。

 

周辺住民をターゲットにする市場「盒馬菜市」

▲住宅街に位置する盒馬菜市(撮影:チャイトピ!)

盒馬菜市の一号店は上海市静安区のショッピングモール「五月花生活広場」の地下一階にある。周辺住民の日常的な買い物を狙いとし、一般住宅が多いエリアに店を構えた。現在はこの一店舗のみで、店の面積は約1000平米と、4000〜6000平米の店舗面積をもつ盒馬鮮生よりは規模が小さい。

▲入口すぐには野菜や果物のコーナーが展開されている(撮影:チャイトピ!)

中に入ると、市場のように野菜や果物が並ぶコーナーが目を引く。ただ、一般的な市場よりも清潔感があり、庶民向けのため商品価格も伝統的市場と大差ない。また、元となる高所得者層狙いの盒馬鮮生では野菜や肉が清潔なクリアパックに包装されセットで販売されているが、盒馬菜市ではバラ売りにしている。これも一般的な市場での買い物に近い感覚を消費者に与え、特に昔ながらの販売方法に親しむ年配者には自分で生鮮食品を一つ一つ選ぶ楽しみも提供できる。さらに取材日にはきゅうりの試食もあり、食材の新鮮さアピールが徹底されていた。店の奥には多くの加工食品が陳列され、日本製品を含む輸入商品の品ぞろえも豊富だった。海産物を生きたままディスプレイする海鮮コーナーも設置してあるが、盒馬鮮生のような店内で調理するサービスは提供してない。

▲バラ売りの牛肉(撮影:チャイトピ!)

▲海鮮コーナー(撮影:チャイトピ!)

支払いはセルフサービスで、商品のバーコードを自分でレジにスキャンしアリペイで支払う。取材日に見かけた家族連れの客は手慣れた様子でセルフレジでの会計を済ませた。セルフレジは7台設置されており、現場には4人もの案内役スタッフが配置されていたが、盒馬のスマホアプリをダウンロードし会員登録すると会員限定の割引クーポンを得られるようにするなど、オンラインでの買い物を推奨している様子であった。宅配を頼む際には盒馬アプリで商品を選び、決済も同アプリ内で済ませる。アリババは実店舗に足を運ぶ客にもいずれは宅配サービスを利用する習慣をつけさせたいのだ。

 

▲手慣れた様子でセルフレジを利用する家族連れ(撮影:チャイトピ!)

一方、特に年配者などモバイル決済に慣れてない顧客のために有人レジも設置されており、当日は高齢女性を中心に一部顧客が有人レジを利用していた。元の盒馬鮮生では開店当初、モバイル決済のみ対応し現金は取り扱わなかった。しかしその後現金使用不可は問題となり現金決済も対応するようになった。

また、盒馬菜市が提供する宅配サービスの仕組みは盒馬鮮生と変わっていないようだった。店員は注文を受けると店内から商品をピックアップし、それを専用のバッグに入れ天井に張り巡らされたチェーンコンベアに掛ける。こうして商品は配達員の元まで運ばれる仕組みとなっている。店舗から3㎞圏内であればこの宅配サービスを利用できる。

 

サラリーマンをターゲットにするレストラン型コンビニ「盒馬F2」

▲オフィス街に位置する盒馬F2(撮影:チャイトピ!)

盒馬F2は2017年末に第一店舗をすでに開店させていたが、他に新しく盒馬シリーズが発表されたことで再度取り上げられた。当初は試験運営として盒馬F2は営業をスタートし、英語の“fast”と“freshade”から成る造語“F2”を店名に加えた。ターゲットは周辺のサラリーマンで、出勤時・休憩時・退勤時と、1日の三食を提供することを狙いとしている。店舗面積は1000平米以下に抑えられ、テーブルがその半分以上を占めている。開店当初は店内中央に盒馬鮮生や盒馬菜市と同じような海鮮をディスプレイする水槽が設置され、今よりもにぎやかな様子であったが、今ではその位置に水槽はなく一人用の座席が設置されていた。また、盒馬F2では宅配サービスの提供はないが、アプリで注文し、商品が準備できたところで店舗へ取りに来ることができる。

▲商品受け取りボックス(撮影:チャイトピ!)

▲食堂のような厨房。中華料理を主に提供する。(撮影:チャイトピ!)

▲食事時間でなかったこともあり、取材日の客数は少なく店内は寂しい雰囲気だった。(撮影:チャイトピ!)

 

▲これまでに発表された盒馬シリーズの比較

3月のイベント内で取り上げられた盒馬菜市や盒馬F2を含め、盒馬鮮生はこれまで複数の新型店舗を打ち出してきた。大都会から地方都市まで、ターゲットを絞って事業を拡大させる狙いが見える。しかし、盒馬鮮生の発展は決して順調とは言えない。

 

問題相次ぎ店舗閉鎖も アリババニューリテール戦略に挫折か

盒馬鮮生が4つの業態を発表した約1か月後に、江蘇省昆山市にある盒馬鮮生の一店舗が今年の5月をもって閉店することを発表した。盒馬鮮生によると、これは正常な調整であり将来は同地域でさらに多くの店をオープンする計画とのこと。しかしアリババニューリテール戦略の中核店舗として、初の閉店は大きな波紋を呼んだ。ニューリテール戦略の拡張がペースダウンし始めた兆しとの見解が多い。

盒馬鮮生は2016年に上海で第一店舗のオープンさせて以来、2019年5月現在中国国内の店舗数は150店舗を突破した。盒馬鮮生の成長は中国のそのほか複数のスタートアップと類似している。ナスダックで上場した中国国内コーヒーチェーンのluckin coffeeも設立からわずか一年間で国内に2000店舗をオープンしたが、その驚異的な拡張スピードの裏に潜む巨額な赤字が懸念されている。盒馬鮮生はこれまでに店舗数などのデータは公開しているが、利益については言及していない。

また、盒馬鮮生はすでに多くの販売経験のある商品について品質問題を起こした。店員が商品の生産日表示を張り替えたり、販売中のソーセージの細菌が標準を超えていたなどのスーパーには致命的な問題を指摘するニュースが続いた。しかしその状況でも盒馬鮮生は新型店舗の運営を推進し、挑戦し続けていある。本丸である盒馬鮮生がまだ確実な成功をおさめていないにもかかわらず、次から次へと新事業を繰り出すことができるのは中国特有の「一先ず試してみる」というトレンドがそうさせているのだろう。