5月23日、中国最大級の旅行口コミサイト「馬蜂窩(マーフォンウォー)」が2.5億米ドル(約39.9億円)の資金を調達したと発表した。リードインベスターはテンセント。これで馬蜂窩は2018年にIPOした旅行会社「同程芸龍」に続いて、テンセント系OTA(Online Travel Agentオンライン旅行会社)の新メンバーとなった。

 

中国人の個人旅行には馬蜂窩が人気

馬蜂窩は特に中国の個人旅行者の間で人気の高い旅行口コミサイト。2006年に旅行情報共有コミュニティとして誕生し、2010年に会社を設立し本格的にサイト運営をスタートした。その後2015年にECブームの波に乗り、ホテル予約などのECサービスも開始した。旅行情報共有コミュニティ時代にユーザーが個人の旅行経験を綴った日記のようなものや観光地のレビューを投稿するという利用方法が定着したことも、同サイト運営のEC化を助けている。

▲馬蜂窩アプリで上海を調べると、観光スポットや宿泊施設、食事等のレビューが出てくる。旅行日数ごとにおすすめの観光プランが細かく掲載され(中国語:攻略)、直接そこからサービスを購入することもできる。

中国では写真・動画などのビジュアルコンテンツや商品レビュー等を扱う企業がマネタイズの手段としてEC化への道を選ぶのは1つのトレンドとなっている。馬蜂窩とよく似た成長過程を経た商品口コミサイト「小紅書(RED)」も近年ECプラットフォームへ転換した。

しかし旅行コミュニティから旅行ECサイトへ転換した馬蜂窩のマネタイズへの道は決して順風満帆とは言えない。2018年10月に馬蜂窩はシートリップなどの競合サイトに掲載されたレビューを盗用したと報じられた。データ不正は情報コンテンツを商品とする馬蜂窩には致命傷になりうる。その後も配信コンテンツが規定に違反していると中国当局から注意を受けたり、リストラが報道されたりとマイナスイメージのニュースが続出した。それでも馬蜂窩はIPOを目指しこれまでに5回もの資金調達に成功しており、調達資金の総額は約5億米ドル(約547.7億円)にものぼる。直近シリーズにはテンセントも参加し、CEOの陳罡は今後1〜2年以内にIPOする計画であると宣言した。

▲馬蜂窩の資金調達経歴

▲2018年6月の旅行アプリMAUランキング(出典:iiMedia Research)

リサーチ会社iiMedia Researchが発表したデータによると、2018年6月時点の馬蜂窩のMAUは中国旅行カテゴリーで5位にランクインした。1位は中国オンライン旅行会社最大手のシートリップで、2位の去哪儿(Qunar.com)は2015年にシートリップと合併した。3位はテンセントの支援を得た同程旅遊で、4位はアリババ傘下旅行会社の飛猪(Fliggy)。旅行分野ではシートリップ以外のほとんどがインターネット大手企業の陣営に入っており、テンセントとアリババの影響は旅行分野へも日増しに大きくなっていく模様である。

 

テンセントによるOTAへの投資経歴

テンセントがOTAへ投資したのは今回が初ではなく、2011年から少なくとも7社のOTAに投資している。過去に投資した芸龍旅行と同程旅遊は2017年に合併し「同程芸龍」と名前を変え、2018年にはIPOを遂げた。同社の株式はその24.92%をテンセントが所有し、筆頭株主を務めている。

▲テンセントが投資したOTAリスト。※米印のついたものは他社の投資額との合算。芸龍旅行と同程旅遊への投資金額はテンセント単独。

2012年頃から中国の旅行業界は成長スピードを上げてきた。2018年の観光収入は約6兆元(約95兆3091億円)。中国人の中国国内旅行人数は55.4億人で国外旅行人数は約1.48億人であった。まだまだ伸び代のある中国旅行市場は、テンセントなど大手企業の参入によりさらに盛り上がりを見せるだろう。