「独身の日セール(ダブル11)」は中国最大規模のネットショッピングセールイベントとして、世界的に知名度を上げてきている。日本でも近年は11月11日に様々なセールイベントを行うようになり、中国ECイベントの影響は年々大きくなっている。

しかしご存じだろうか?中国では独身の日以外にも6月18日にECイベント「618セール」を行う。このイベントは元々、中国でシェア2位を誇るECサイト京東の開店記念セールであるが、近年は他のECサイトも便乗してセールイベントを行うようになった。今では618セールも独身の日並みの一大イベントとして中国経済に貢献している。

当初は6月18日限定のイベントであったが、最近は多くの場合6月1日から20日頃にまで伸びている。2018年6月1日から18日までの京東での注文額は1,592億元(約2.7兆円)にまでのぼり、前年比33%増を達成した。天猫も2018年度はイベント開始からの13日間で昨年度の18日間の売上を超えるなどの好成績をおさめた。

今年の618セールも6月1日からスタートしている。EC各社はどのようなプロモーションをし、初日からこれまでにどのような成績を出しているのか、早速紹介したい。

各社の618プロモーション、狙いは地方市場?

近年、618セールやダブル11などECイベントの没個性化が指摘され始めている。一部の消費者は飽きつつあり、複雑な割引ルールには不満の声も出始めた。そこで各プラットフォームは新市場開拓へ動き出し、新たに農村などの地方都市をターゲットに事業を展開していくトレンドが生まれた。

京東:TikTokや快手などのショート動画アプリと連携し、これらのアプリから京東サイトへ直接アクセスできるようにした。特に快手は3・4線都市のユーザーが多いため、京東の地方市場開拓へ大きく貢献することが期待できる。また、セール初日には1日限定で地方ユーザーをターゲットに「拼購(共同購入)」イベントを開催した。さらに京東はほぼ毎日テーマを変えてイベントを開催しており、6月3日と4日は「超市狂歓(スーパー)」、6月5日は「時尚美粧(コスメ)」、6月6日には「大牌恵聚(ブランド品)」をテーマにする。

▲6月3日開催の京東・618イベント「超市狂歓日(スーパーの日)」。日常用品のセールをアピール。

アリババ:傘下の「聚划算」、「淘槍購」、「天天特売」など低価格を売りにしているプラットフォームでの618イベントに注力している。共同購入サービス「聚划算」は複数の有名ブランドを618イベントに招いた。

▲天猫・618イベントの一環、中国の節句「端午節」仕様のページ。ちまきセールをアピール。

蘇寧(Suning.com):地方都市ユーザーに向けて「良い商品」、「良いサービス」、「良い価格」を提供すると宣言した。地方に設置した蘇寧の実店舗も618に向けて準備を整えたという。

▲家電販売を強みとする蘇寧の618ページではスマホのイベントが目を引く。

拼多多:設立当初から3・4線都市をターゲットにしてきた拼多多は、補助金システムを採用し、メーカーではなくプラットフォーム自身が商品価格を一部負担することでライバルサイトの618セール価格よりさらに安く商品を提供すると宣言した。

618セールにより膨らむ荷物量、EC各社の物流対策

大型セールには付き物の物流問題解決に向けて、各プラットフォームは新たな対策を打っている。

京東:京東物流は618に備えて今年の第二四半期に5000人の従業員を採用する計画を発表した。さらに、今年の618セールではAI技術による物流予約サービスをスタートした。このサービスは大型荷物の配送に活用し、事前に配送先に受取人がいるかどうかを確認するなど、人工知能により従業員の負担を軽減し効率を高める狙いがある。

アリババ:傘下の物流技術開発会社・菜鳥(cainiao)は今年の618イベントで最速の物流サービスを提供すると宣言した。世界中に物流パートナーを用意し、店舗20万件、配送車20万台超、さらに数百万もの物流従業員を618セールに投入する計画を発表している。

また、アリババの新たな物流会社「丹鳥」も618セールに登場し、丹鳥の配達員が特定地域の顧客へ当日あるいは翌日配送サービスを提供する。

蘇寧:今年は技術開発に注力し、配達員を腰痛から守るロボットを618セールに投入した。また、新サービス「準時逹」をリリースし、3元追加すると日時指定配達を利用できる。蘇寧は同サービスについて、指定できる時間を細かく分けたことにより顧客のスケジュールにより合わせることができるという。

618セール初日の各社成績

618セール開始から5日目にして、各社はすでに初日の売り上げ関連データを発表し成績をアピールしている。

アリババ:天猫は6月1日午前0時からセールをスタートし、同日午前11時23分には去年同日1日分の取引高を超えた。また、セール開始から1時間でアップルやナイキ、xiaomiなどの有名ブランドの取引高は1億元(約15.7億円)を超え、アップルに関してはiPhone XR単品で15分のうちに取引高1億元越えを果たした。また、共同購入サービスの聚划算はセール開始から1時間で3000万件の商品を販売した。

京東:家電カテゴリーではセール開始後わずか3分47秒で取引額が8億元(約125億円)を超え、そのうち空調機器は15秒で取引額が1億元(約15.7億円)を超えた。また、3分間でスマホは5万台、5分間でPCは5万台売れた。さらに6月1日は子供の日であったことから、子供向け書籍の取引高は前年より230%増加した。

また、傘下の越境ECプラットフォーム「海囤全球」の1時間の売り上げは前年より245%増加した。

蘇寧:セール開始から1時間で、10種以上のブランドが売上高1億元(約15.7億円)越えを果たしたと発表した。特に家電と3C商品(コンピュータ、通信機器、家庭用電子製品)の売上が好調だという。

拼多多:セール開始から1時間の売上高は前年同日の10倍となった。初日にしてアップル製品の売上高は2.5億元(約39.2億円)に達し、ベビー・マタニティーや食品カテゴリーの売上高は前年比400%増を記録した。生鮮食品など農産品の1日の注文数は500万件を超えた。

2週間を超える618セール期間の中で、各ECプラットフォームはメインの6月18日を待たずしてすでに関連データを発表し業績をアピールした。しかし現在発表されているデータは各社基準が異なるため比較することは困難であり、正確な業績データは6月18日以降の発表を待つ必要がありそうだ。