毎年6月に開かれる中国の大型ECイベント「618セール」が幕を下ろした。今年はアリババと京東の二強独占状態が破られ、より多くのECプラットフォームがこの一大ECイベントに参戦した。もとは6月18日の1日限定セールであったが、今や6月のほとんどを占める長期イベントとなっている。ライバルが増えた今年、アリババと京東はこれまでで最も力を入れた618セールと宣言し、イベントを大いに盛り上げた。
アリババ、京東などEC各社の618業績
天猫(アリババ)
アリババのB2Cモール天猫は去年と同じく全体的な売上は公表せず、細かいデータのみを発表した。天猫で出店している100件超のブランドの取引額は去年のダブル11を超え、110件超のブランドは売上1億元(約15.6億円)を突破した。アリババの共同購入チャンネル「聚划算」(ジューファスワン)は出店ブランドらに3億以上もの新規ユーザーをもたらし、低価格を売りにするもう1つのチャンネル「天天特売」は4.2億元(約65.7億円)の注文数を実現した。今年アリババは農村などの地方市場開拓に力を入れており、その地方都市を狙いとする「聚划算」や「天天特売」の618業績を強調した。
京東(ジンドン)
京東は6月1日から6月18日の18日間の累計注文額が2015億元(約3兆1504億円)を超えたと発表した。618セールに参戦したEC企業の中で、京東だけが全体的な売上データを発表した。京東によると世界中で7.5億人の消費者が京東で買い物をしたという。特に京東がアピールしたのは京東物流の速さであり、今年の618関連荷物(京東倉庫から直接運送する商品のみ)は当日と翌日配送の割合が91%を超えたと強調した。さらに618期間中に京東の共同購入サービス「京東拼購」で商品を注文したユーザー数は前年と比べ106%増加した。京東とアリババのECツートップは共に地方市場への投資を増やし、ユーザー獲得に向けて奮闘していることがうかがえる。
拼多多(ピンドウドウ)
猛烈な勢いで成長した拼多多は去年に続く2回目の618参戦となった。拼多多が発表したデータによると、618期間中の注文数は11億件を超え、取引額は前年比300%増を記録した。拼多多と出店ブランドが協力してアップル製品などの人気商品に対して大幅な値引きを行ったことが予想以上の効果を発揮したという。もともと拼多多ユーザーの多くは地方都市の消費者で、今年の618期間は注文の7割が地方市場からだったという。
蘇寧(Suning)
オンラインとオフラインの両方を含む全販売ルートの注文数は前年と比べ133%増加し、そのうち家電の注文数は前年比83%増だった。
近年中国のダブル11や618セールなどの大型ECイベントでは、多くのEC企業が全体的な売上を公表しなくなった。今年発表された細かなデータからは好調な売れ行きが見て取れるが、一方で発表されなくなってしまったデータからは中国EC市場の日々激化する競争の厳しさもうかがえる。
出店業者はアリババと拼多多の二者択一?競争激化するEC業界
618セールが盛り上がる中、実はこのような事件も発生した。6月17日、中国家電メーカーのGalanzが天猫に対して抗議の声明文を公開した。それによると、同社が天猫のライバルである拼多多の社屋を訪問したのちに天猫上でGalanzの商品の検索結果に異常が生じ、618の売上に悪影響があったという。この事件をきっかけに、以前からささやかれていたEC業界で二者択一を迫られ犠牲になる出店者がいるという問題に改めて注目が集まった。
2013年にも天猫は出店者らに対して天猫だけで618セールを実施するよう求めたことが報道された。もし天猫に出店している業者が別のECプラットフォームでセールを実施すれば、天猫上で同店舗の商品検索結果を遮断するなどして処罰するという。さらに2015年のダブル11期間中にも同様の行為についてアリババはライバル社の京東に摘発された。
ECライバル社間の競争で二者択一を迫られた中小販売者は売上に大きなダメージを受けることになる。2019年1月から実施された中国初の「電子商取引法」はこのような出店先を制限する行為を禁止しているが、現状ではまだ存在しているようだ。