近日、上海では「君はなんのゴミ?」という冗談が流行っている。その背景には、7月に上海で施行された”史上最も厳しい”ゴミ分別条例「生活ゴミ管理条例」がある。

日本では当たり前になっているゴミ分別は世界的に見ると各国で先進度合いに差がある。
中国も例外ではない。
段ボールや金属などのゴミは、お金になるため、市民が集めて業者に売ることもあったが、それ以外は分別することなくまとめて捨てるのが一般的であった。

しかし現在中国では、習近平国家主席がゴミ分別について指導を出すなど国全体で本格的なゴミ分別の改革が始まっている。
上海に次いで北京や杭州などの都市もゴミ分別を推進する計画を出している。

 

上海でゴミ分別条例が施行、その効果は?

「生活ゴミ管理条例」の施行に伴い、分別用のゴミ箱が完売するなどの社会現象が起き、中国では一時かなり話題になった。
今までも上海では街中に「資源ゴミ」用と「乾燥ゴミ」用の2種類のゴミ箱が設置されていたが、捨てられたゴミは分別されておらず、市民のゴミ分別への意識が低いことがわかるだろう。

▲上海の街頭に今も見かける2種類のゴミ箱(撮影:チャイトピ!)

経済大都市・上海は、市民の生活ゴミの量が地方より多い。関係データでは上海市の年間生活ゴミの量は750万トンにものぼる。

さらに、中国のネット通販とデリバリーサービスの発達に伴い、段ボールや使い捨ての食器などの「配達ゴミ」も年々増えており、ゴミの一大分類である。2018年上海「配達ゴミ」の年間量は約69.8万トン。分類せずにまとめて捨てる中国の方法は日本などと比べるとリサイクル率が低い結果になる。

では、ゴミの新条例が施行された今、上海市民の生活はどうなっているのか?チャイトピは実際に現場に訪れてみた!

住宅区では、以前バラバラに設置されていた単一のゴミ箱が消えて、ゴミ捨て場が新設されていた。ゴミ捨て場の中には四つのゴミ箱が設置されており、

以下の4種類に分類されている:

  • 可回収物(資源ごみ)
  • 有害垃圾(電池など有害ゴミ)
  • 干垃圾(使い捨て食器など乾燥ゴミ)
  • 湿垃圾(生ゴミ)

日本とは少し違う分け方で分類が分かれており粗大ゴミの処理についても触れられていない。
日本の細過ぎると言えるほどの分類よりはシンプルである。
しかしゴミの分別をしなければいけない他に、捨てる時間も制限され、時間外にゴミを捨てることができない。

▲ある住宅区のゴミ捨て場の規定時間外の鍵が閉まっている時の様子である(撮影:チャイトピ!)

いきなりゴミ分別の意識を身につけることは難しいことである。そのためか以前設置されていたゴミ箱の跡地にゴミをそのまま置いていくという現象も起きていた。

▲ゴミ箱跡地に捨てられたゴミ達(撮影:チャイトピ!)

このような違法行為への対処として、ごみ捨て場の近くに、規定時間外にも捨てることができるごみ箱が設置されている。

その上各所でゴミの分別を「監視」するボランティア監督が配置されている。

▲監督役のボランティア(撮影:チャイトピ!)

住宅街だけでなく、オフィスや商店街もゴミ箱を増やし、ゴミ分別を始めている。個人経営の小さい飲食店でも店内で分別用のゴミ箱が見かける。

さらに、使い捨てのお箸やフォークなどを減らすため、当局は飲食店から食器の直接の提供を禁止しており、消費者が自らお箸などの提供を要請しないといけない。こうした取り締まりを強化した結果、条例施行から一週間、上海当局は190件のゴミ分別条例に対する違法行為を処罰した。その中で個人によるものは15件であった。

 

中国ビジネスにも影響 アリババを筆頭とした新サービス

ゴミ分別条例は人々の生活はもちろんのこと中国ビジネスにも大きな影響を与えた。

進化を続ける中国企業達は、ゴミ捨て代行サービスやゴミ分別知識を教えるなど様々なサービスが次々に出し、条例などの社会変化までもビジネスチャンスにしている。

アリババの傘下であるネット通販アプリ淘宝(タオバオ)はAI技術によりゴミを識別し分別する機能をリリースした。アプリで識別してほしい物を読み取ると、どの分類に含まれるのかを教えてくれる。

▲タオバオのAI技術によるゴミ分別サービス

上記の右側の写真はイヤホンの識別結果である。リサイクルできる資源ゴミだと表示された。
本格なゴミ分別が始まったばかりであるにもかかわらずこのようなはゴミ分別サービスはすでに多くだされている。
政府の教育や指導以外で、このような便利なネットサービスは新条例が始まったばかりの中国で大きな需要が見込めるだろう。

また、アリババ傘下のデリバリーサービス餓了麼(eleme)はお年寄り向けのゴミ捨て代理サービスを打ち出した。アプリで注文して、配達員が代わりに分別済みのゴミを捨ててくれる、わざわざゴミ捨て場にいく負担を減らす目的がある。高齢者社会に差し掛かっている中国ではこれから需要が高まるだろう。

他にもスマホでゴミ回収の予約をし、業者が家まで来てゴミを回収してくれる、というサービスを打ち出した企業もいる。

中国は今日本などの国を手本にゴミ分別を推進し、上海を皮切りに中国全土でのゴミ分別を拡大させる計画だが、日本もゴミ分別社会になるまで何十年もかかった。中国も国民がゴミ分別を習慣化するまでに時間を要するだろう。