網紅(ワンホン)とは

近年中国ではライブ配信やSNS上で活躍する「網紅(ワンホン)」と呼ばれる層が注目を集めている。

「網紅」とは“網絡紅人”の略で、直訳すると“インターネット上で人気のある人”という意味を持つ、WeiboやTik Tokなど、中国のソーシャルメディアで多くのフォロワーを持った影響力のある人を指す。

2018年全ての網紅の合計フォロワー数は約6億人と中国人口の42%を占めほどであった。

中国では、オンライン決済の普及増加に伴い、ネットビジネスも急速に拡大しており、中国経済において必要不可欠な層となっている。

網紅の影響力が特に活用された分野はECである。
EC事業を行う上では欠かせないプロモーション手法の1つとなり、「網紅ビジネス」と呼ばれる。

網紅起用のメリット:

・芸能人並みの影響力を有するも、起用コストが低い
・特定のターゲット層へのアプローチ可能
・広告によるマイナスイメージが生まれない

 

網紅の始まり

網紅のほとんどが一般人からである。
人気になった理由も偶然の一致が生み出した場合がほとんどだ。

2009年にミルクティーを手に持った写真で話題になった「奶茶妹妹」や、地下鉄で恋人募集のチラシを配り有名になった「凤姐」らが網紅の元祖と言えるだろう。

それ以降、自発的に自身の才能を生かして人気を博す網紅が登場し始めた。
代表として2015年に早口で社会を揶揄する動画を配信し超人気網紅となったpapi醤(パピーちゃん)が挙げられる。
2018年には中国最大の検索エンジン「バイドゥ」が彼女の影響力と将来性を見込んでpapi醤をバイドゥアプリのコンテンツ製作責任者に任命した。

 

網紅の影響力

▲張大奕のWeiboアカウント・服の試着投稿が多い

数多く存在する網紅の中で最も有名だと言われているのが「張大奕(ジャン・ダーイー)」である。

張大奕とは?

・1988年生まれで中国出身の元モデル
・中国最大の通販サイト「タオバオ」においてアパレルショップを運営
・2015年のEC市場における収入約4600万ドル(約5億円)
→大女優・范冰冰(ファンビンビン)の約2100万ドル(約2.2億)より多い
・ライブ配信で紹介した物は2時間で2000万元(3億円以上)売り上げる
・2019年アメリカTIME誌の「最も影響力のあるネット有名人」にランクイン

彼女の実績からも網紅の影響力の大きさがわかるだろう。

 

男性網紅が活躍するコスメ市場

▲李佳琦のTikTokアカウント

女性に限らず、近年男性の網紅も増えつつある。
そんな彼らの活躍の場の1つがコスメ市場なのだ。

「李佳琦(Austin)」はTik Tokやタオバオでライブ配信を行う男性網紅だ。TikTokは2800万人フォロワーを有し、コスメ分野で最も有名な網紅である。
彼が試用配信した口紅は、5分で1万5千個売上げた。

 

網紅ビジネスの現状

 張大奕のオンラインショップの規模が拡大すると、「如涵」という会社が代理運営を行なった。
運営会社「如涵」は販売促進を促す網紅育成に尽力を注いでいる。

現在「如涵」には100人以上の網紅がいる。2019年4月にナスダックにて上場を果たし、網紅の影響力を活用するEC会社として上場第1社となった。

 

網紅ビジネスの課題

しかし影響力を持つ網紅を活用したプロモーションには様々なリスクや課題が存在する。

順調そうに見える如涵を例に挙げると、

・上場を果たしたが未だに黒字化していない。
・会社の収益は少数の網紅頼りなため、経営リスクが高い。
・網紅の影響力保持と育成への投入コストが高かったため赤字続き
・張大奕のような世界が注目する網紅を簡単に育てることができない
・網紅個人の素質向上

法律違反や不当な行為により摘発され、配信閉鎖を余儀なくされた網紅もいる。

TikTokの短編動画で人気を集め網紅になった「温婉」や「莉哥」は個人の問題により動画が取り下げられ、ネットから消えた。

 

網紅ビジネスと海外企業

中国EC市場は急速な成長を見せており、世界最大規模を誇る市場である。
日本を含めた海外企業にとって越境ECを構築する上では欠かせない市場と言えるだろう。
越境EC市場で網紅を起用することは成功のための1つの策である。
したがって近年、網紅を起用する海外企業が増えている。
網紅ビジネスはまだまだ課題が多いが、その分高い影響力と利益還元率を有すため今後も需要が見込めるだろう。

成長段階である網紅ビジネスは未知数の可能性を無限に秘めている。

そのためさらなる進化と活躍が期待できるだろう。