中国Eコマースを代表するアリババや京東などの大手企業は国内市場だけでなく、海外市場への事業拡大も積極的に行い、世界での存在感を高めている。2019年6月時点でアリババの時価総額は世界7位となり、成長の勢いはまだまだ止まらない。
中国EC市場でアリババのように大企業に登り詰めた企業も存在する中、もちろん撤退を余儀なくされた企業もある。名前は知られてないが、アリババよりも先にEC事業を展開した企業が存在する。しかし戦略ミスや当時の整っていなかった市場環境などによりチャンスを逃し、アリババのような大手企業にはなれなかったのだ。
さらに海外企業としては、米国EC最大手のアマゾンはアメリカや日本などでの市場では好調だが、中国市場では業績が芳しくなく、今年7月に中国国内向けのEC事業を中止にした。
今回チャイトピ!は中国EC市場でうまくいかなかった企業とその原因について紹介していく。
中国市場初のB2Cプラットフォーム「8848」
アリババのECサイト「タオバオ」よりも先に成立したプラットフォーム「8848」は中国初のB2Cプラットフォームとされている。
中国人の王峻涛により創業され、最初はIT関連商品の販売会社「北京连邦软件公司」の一つの部門であった。同社が所有するチェーン店を利用して、「地元配送、決済サービス(当時はモバイル決済なく、着払いが多かった)」を提供していた。
当時ネットを利用する人がほとんどIT業界の人であったため、8848でのIT関連商品の販売はすぐに受け入れられ、業績は好調だった。
▲当時の8848サイト(名前の由来:エベレストの高さ8848mに、ちなんで)
その後8848は独立し、会社を成立させた。商品のカテゴリーも拡大させ、2000年には月間売上が1000万元を超えた。
しかし8848のB2C事業の発展は順調ではなかった。社内では会社の経営方向について意見が2つに分かれた。
上場のため当時成長が期待されたB2B事業への注力を支持する勢力が強く、B2C事業を支持する者たちは止む終えなく新しい会社を設立させ、独立したが経営はなかなか上手くいかず、その後資金不足に陥りサイトも閉鎖された。一方でB2B事業もうまくいかず上場は実現できなかった。
8848の失敗は自社の戦略ミス以外にも、当時まだ不完全だった物流や決済環境も要因の1つだと考えられる。
テック大手テンセントのEC事業「拍拍网」
アリババとテンセントは中国テック企業のトップ2社で、近年両社はお互いの分野へ進出するなど競争は日々激しくなっている。テンセントが支援する京東はアリババに次いで中国EC第2位まで成長した。
そんなテンセントは京東に出資する前に、実は自社でもEC事業を展開していた。2005年テンセントはC2Cプラットフォームの「拍拍网」をリリースした。テンセントの強みであるSNS分野で獲得した多くのユーザーが拍拍网の最初の発展を後押しした。
▲2015年中国C2C市場シェア状況(チャイトピ!作成)
しかし拍拍网が成立した2005年、アリババのタオバオ(淘宝)はすでにC2C市場シェアの57%を占めており、拍拍网はスタートに一歩遅れた。さらに拍拍网はタオバオと同様の、安価を売りにしたことにより、タオバオとの価格戦に陥ってしまった。さらに偽物商品が続出したことにより商品の品質管理問題が多々起こり、拍拍网のブランドイメージはますます悪化した。
2014年テンセントは京東と戦略パートナーシップを締結し、京東に出資すると同時に、拍拍网事業を京東に売却した。
▲現在の拍拍网は京東傘下の中古品取引サイトとなった
現地企業買収で中国市場進出したeBay
8848やテンセントなどの中国本土企業以外に、海外のEC大手も中国市場で撤退を余儀なくされた事例がある。eBayもその1つだ。
2003年eBayは中国本土のC2C企業「易趣」を買収して中国市場へ進出した。易趣は1999年上海で成立し、8848とほぼ同じ時期にEC事業を始めた。eBayに買収された後、易趣のサーバーはアメリカ本部に移転され、新サーバーへのアクセススピードは遅いことにより、多くの中国ユーザーが離脱した。
また、ライバルのタオバオが事業者に対して無料出店サービスを提供するに対して、eBayは初期段階の時点で出店者から料金を徴収する。そのため多くの事業者をタオバオに奪われた。
▲ TOMの子会社になった易趣
市場シェアがどんどん下がった後、2016年、eBayは易趣一部の株式を香港の出版会社TOMグループに売却し、2012年に易趣は完全にTOMの子会社にとなり、eBayは中国市場から撤退した。
中国市場を撤退したAmazon
米EC最大手のアマゾンは2004年に中国本土のECサイト「卓越網」を買収し、中国での事業を展開した。
しかし中国の運営チームに決裁権限を与えず、中国ユーザーの需要を把握できないことなどから、中国企業が持つ優位性をアマゾンは掌握できなかった。市場シェアがどんどん落ち、2019年7月にアマゾンは中国国内向けのEC事業を中止した。
▲現在のアマゾン中国サイトは越境ECサービスだけが続けてる
アマゾンの中国市場失敗原因についてさらに読みたい方はこちら:
https://chaitopi.com/index.php/2019/04/23/amason/
14億人の消費者を抱える中国は魅力的な市場として、多くの海外企業から熱い視線を注がれている。拡大し続けるEC市場では、海外メーカーらの市場進出が増えている。
これから中国での事業展開を考えている日本企業にに参考になれば幸いである。