客の殺到により、開店初日に一時閉店となった上海コストコ
米国の会員制倉庫型スーパー「コストコ(Costco・開市客)」は8月27日に中国・上海にて初の中国第1店舗を開業した。
平日にも関わらず客が殺到し、安全面を懸念して営業終了時間を前倒しするほどの賑わいをみせた。
コストコは中国のネットで約3000元で販売されている中国の有名な白酒「茅台」をネット価格の約半分の値段で販売し、開店後すぐに完売させた。
店内はお客の商品の取り合いにより大混雑を見せ、警備員が「駐車に3時間、会計に2時間ほど待つ必要がある」と来客に告げた程だった。
米中貿易戦の厳しい情勢下であるにも関わらず、アメリカの小売大手が中国市場の開拓に挑んだのである。
警備員の持つ駐車の注意看板(写真提供:weibo)
実店舗の前にEC店舗を開業したコストコの策略
上海において実店舗を開業する前に、コストコは2014年にアリババの越境ECプラットフォーム「天猫国際」にてEC店舗を先に出店させ、中国市場でEC事業を始めた。
需要や中国人消費者の動向を探り、その5年後に当たる今年、ついに実店舗を開業した。
第1店舗は上海の郊外に構えた。敷地面積は2万平方メートル、米国コストコの標準規格を採用した1階建ての店内、約4千種類の商品が陳列されている。市内から離れているため交通面が不便であるが、周辺は外国人のコミュニティが多く存在するため、コストコの会員制に慣れている外国人消費者からターゲットにし、中国市場での事業開拓を進めていくことが期待できる。
会員制度は中国で成功できるか?
日本で多くの顧客を抱えるコストコは中国の小売市場でも成功できるのだろうか__
同社特有の会員制度が果たして中国人消費者に受け入れられるのだろうか__
コストコは開店前から会員登録のキャンペーンを行い、現在すでに中国で13万もの会員を獲得したという。
コストコの個人会員費を比較してみると、中国の会員費は日中米の3カ国の中で1番安い。
- 中国299元(約4400円)
- 日本は税抜4400円
- アメリカは60ドル(約5300円)
コストコは安価を売りにし、会員費により利益を得ている。関係データによると、コストコの商品販売の粗利益率は10%以下に抑えられており、会員費による営業利益が70%にも及ぶ。
米国や日本市場において会員制は受け入れられてきたが、中国市場での受け入れに時間がかかるだろう。
外国の会員制スーパーの中国進出はコストコが第1社ではない。
ウォルマートの傘下である会員制スーパーSAM’S CLUB(サムズクラブ)により1996年に深センにて中国初、外国の会員制スーパーが開業した。しかし業績に著しい成長は見られず、26年経った現在、中国での店舗数はたった23店舗しかないのだ。
コストコが提供するサービスの1つである、長期期間内の返品制度などは悪用される危険がある。ネット上ではすでに会員カードのレンタル商売も登場している。
このような問題をどう解決していくのか、コストコの今後の課題の1つだろう。
▲中国中古品販売サイト「闲魚」レンタル販売されるコストコ会員カード
価格最低3元(約50円)/日
中国市場においての海外小売企業の現状
近年、中国市場からの撤退や現地企業による売却を余儀なくされている海外小売ブランドが続出している。
コストコのライバルであるフランスのスーパーマーケットチェーン「カルフール(家楽福)」は今年6月に中国家電量販大手の蘇寧に80%の株式を売却した。
ドイツ小売大手「Metro(麦德龙)」も幾度となく、中国事業売却の噂が出ている。
ECが発達した中国では、コストコのような実店舗の生存は極めて難しいとされている。「オンラインで注文し、1時間内に配送」というサービスに慣れていまっている中国消費者が、実店舗に足を運ぶことが減っているからだ。コストコの開店初日にも「家まで届けてくれるサービスがない」と苦情を言ったお客さんがいた。
変化し続ける中国市場でコストコがどのような展開を見せていくのか、今後に注目である。