写真一枚で顔交換ができる「ZAO」

自分の写真をアップし、映画やドラマなどの作品中に出てくるタレントの顔を自分の顔に入れ替えることができるアプリ「ZAO」は近頃中国のSNSで話題となった。AI技術を活用したこのアプリはユーザーにスターになったような体験を味あわせてくれて、公開後すぐに、若者たちの間で人気を集めた。

▲顔を変えた後の動画

このアプリの使い方はとても簡単で、自分の正面写真をアップし、交換したい作品のシーン(ZAOが提供する)を選ぶだけ。それから10秒ほどで顔交換が完了する。完成した動画をSNSなどでシェアすることもできる。

▲ZAOは有名なドラマや映画のシーンを提供している

利用者には画像編集などの専門的な技術や知識は一切不要である。そのためハードルが低く、ネット上で自分の顔を有名な俳優レオナルド・ディカプリオなど顔に入れ替えた動画などが多く見られた。

肖像権を巡る物議、国家部門が注意喚起

ZAOが話題になった後、すぐに肖像権問題を巡る物議が醸された。
ユーザーはZAOを利用する前に利用規約に同意しなければならない。利用規約には自分の顔データの使用権利を永久に無償でZAOに譲渡することが記載されていた。規約文の長さに、細かく読まずに同意を押してしまう人が多くいた。
この利用規約は個人情報の過度な収集により法律違反にあたると指摘された。そして危険と判断されたZAOは、wechat上でのシェアされたリンクの開封ができなくなった。さらに中国国家部門は、ZAOに業務改善及び個人情報保護の強化を命じた。

ZAOが出る前にも、以前AI技術を利用しドラマの中の女優の顔を別の女優の顔に変えた動画をネット上に上げたケースがあった。動画制作者はその後肖像権問題により動画を削除し同女優に謝罪をした。しかしその違和感を感じさせないクオリティを誇る動画に大勢の人が驚いた。
現在中国では、本物だと勘違いされ、顔を使用された本人の権利が侵害される恐れを懸念し、このような技術の普及は控えられている。

顔認証決済が進む中国で顔交換技術がもたらすリスク

このアプリをきっかけに、現在中国で進んでる顔認証による決算技術への心配の声が高まった。ZAOのようなアプリにより個人の顔データが漏洩され、財産を盗難されるなどの被害の危険性があるからだ。
アリペイなど中国のモバイル決済サービスを提供する企業たちは顔認証による決済を推進している。
この騒動の後アリペイは、顔交換アプリが作成した顔がどれほど完成度が高くてもアリペイの顔認証決済を突破することはできない。財産の被害の確率は極めて低い。万が一盗難事件が起きても、保険会社を通し全額保証する、と声明を出した。

開発会社MOMOの狙いとは?

ZAOの開発会社の株主は中国SNSアプリのMOMO(陌陌)の関係者であるため、ZAOは実質MOMO傘下のアプリと言える。競争の激しい中国SNS業界では、各社それぞれがユーザーの需要を細かく分析し、新しいサービスをどんどん打ち出していく傾向にある。MOMOもこのアプリを通してさらなるユーザーの拡大を狙っているのだろう。

MOMOについてさらに読みたい方はこちらへ:
https://chaitopi.com/index.php/2018/09/03/momo_2108q2/

しかしAI技術の話を除いて、1つのアプリとしてはZAOの機能は単一すぎるため、話題性により好奇心で来たユーザーがすぐ飽きて離脱する可能性が高い。
一夜で人気と話題を博したZAO。あっという間にユーザーが離れていってしまうアプリにならないよう、ZAOが解決しなければいけない課題はたくさんあるのだ。