アリババ主催のテクノロジーイベント「雲栖大会(The Apsara Computing Conference)」は9月25〜27日杭州にて行われた。開催初期、アリババクラウドの開発者が集まる会議であった本イベントは近年アリババのテクノロジー成果発表会となり、一般公開されるイベントとなった。
過去にこの大会にてニューリテール戦略やAI研究室の設立など、アリババの最新の戦略や動向が発表された。
つい先日偉大なるアリババ創業者・馬雲(ジャック・マー)の会長退任が発表された。本イベントは新会長である張勇(ダニエル・チャン)の初舞台の場でもあるため、さらに世間の注目を浴びた。
今年もチャイトピ!編集部は現地に赴き、アリババの最新動向をお伝えします。
アリババ新会長・張勇による「百新」戦略
新会長の張勇は演説の中で、馬雲が発表した「五新」戦略(ニューリテール、新製造、新技術、新エネルギー、新金融)をさらに拡充化させた「百新」戦略を発表した。
デジタル時代において、工場や学校、病院など様々な業界でのデジタル化運営の展開を語った。
アリババ初のAIチップ「含光800」を公開
▲アリババ自社開発のAIチップ「含光800」(ホームページより)
中国でチップは海外からの供給に過度な依存をしており、2018年の自給率はわずか11%にしか及ばない。米中貿易戦の最中である今、中国は国産チップの開発を積極的に推進している。
去年の雲栖大会でアリババは、チップ開発子会社「平頭哥」の設立を宣言している。
今年7月に初の自社開発チップ「玄铁910」を発表し、さらに今回の雲栖大会では、初の人工知能推論チップ「含光800( HanGuang 800)」が発表された。このチップは最高で7万8千IPSの画像取り込み処理を可能する。現在すでに杭州の交通監視カメラの映像処理やタオバオの写真処理に導入されている。
インターネット企業であるアリババはチップ開発を積極的に行い、ソフトウェアとハードウェアを一体化させるハイテク企業を目指しているのだ。
▲「平頭哥」発表会(撮影:チャイトピ!)
▲アリババとパートナーが「Open Chip Community」を発表(撮影:チャイトピ!)
さらに「平頭哥」は、開発者にAIチップデザインのプラットフォーム「Open Chip Community」を提供する計画を発表した。このプラットフォームはIC開発会社や個人開発者などにチップ開発のインフラを提供することを目標にしている。
ホームのスマート化を推進する「家庭ブレーン」計画
▲アリババは「家庭ブレーン」計画を発表(撮影:チャイトピ!)
アリババの人工知能開発チーム「alibaba AI Labs」は「ホームブレーン」(スマートホーム化)計画を発表。
スマートスピーカーの天猫精霊を中心に 、スマートホーム化、スマートコミュニティ化を推進する。
alibaba AI Labsの総経理・陈丽娟によると、「ホームブレーン」計画はAI、端末、人間とコンピュータの接続(human-computer Interaction)の三つの部分に分けられる。
AI方面ではアリババがチップ、OS、クラウドコンピューティングの技術を持っている。端末方面では、天猫精霊が2年連続販売台数中国1位、世界3位の成果を挙げている。人間とコンピュータとの接続の方面では、アリババが開発した人間とコンピュータの接続システム「AliGenie」をバージョンアップさせ、対話能力が向上した。
▲天猫精霊シリーズ商品、コーヒーの注文、子供の教育、化粧用鏡付きなど、個々で様々な機能を兼ね備えている。(撮影:チャイトピ!)
アリババは今後、天猫精霊の1つの商品からスマートホームの中枢になっていくことを目標に挙げている。AI感知、理解および決定能力によりスマートホーム体験の向上を図る。
政府のデジタル化
▲浙江省政府のデジタル化関連展示(撮影:チャイトピ!)
アリババは浙江省政府と連携し、「デジタル政府」を推進している。
杭州を本部に置くアリババは地元政府との連携を深めている。アリババのデジタル技術を利用した政府情報システムの構築、行政サービスの電子化に協力しているのだ。現在浙江省では80%もの行政サービスをスマホで利用することができ、市民生活の利便性が向上されている。
また、アリババは国家医療保険や、交通、司法など様々な政府の行政分野においての技術支援の提供に協力しており、行政の効率化を高めている。
インターネット会社のアリババがなぜAIチップを?
今回の「雲栖大会」で1番話題となったのはアリババのAIチップ開発の発表だ。以前アリババは中国のチップ開発企業「中天微」を買収した。他にも「寒武纪」、「Barefoot Networks」など複数ものチップ開発関連企業に投資を行っている。そこからアリババは自社チップ開発に挑むため、「平頭哥」を設立した。設立から1年で、自社開発のAIチップの発表を果たした。アリババのチップ開発の事業展開スピードに世間は驚いた。
しかし、インターネット企業であるアリババがなぜこんなにもハードウェアの開発に力を入れたのか、疑問に思う人も多いだろう。
アリババによると、AIチップ開発は最終的に自社の展開している事業に活用していくようだ。ビデオや写真の分析、ニューリテール、アリババクラウドなどの事業に相応なチップを開発していく方針である。
アリババが今回発表したAIチップ「含光800」は、チップ大手の企業が何十年もの歳月を積み重ねた技術成果と比べようもないほどかもしれないが、技術変革がさらなる激しさを増していくであろう現代で、アリババは最先端技術の模索を続けているのだ。