ビジネスを語る上で無視できない存在となっている中国は、世界最大の半導体消費国でありながら国内においての半導体自給率が著しく乏しい。

世界の半導体消費シェア(同花顺财经より

国内産業別シェア率(McKinsey&Company より

半導体(Semiconductor)に加えて航空産業(Aircraft)も中国国内シェア率が圧倒的に低い。
アメリカとの貿易摩擦がさらに半導体製品の製造を困難にさせている中国だが、2015年5月に「中国製造2025(Made in China 2025)」という国家の方針を発表している。建国100年を迎える2049年に世界の製造強国のトップグループ入りを果たすためだ。その方針の中で半導体の自給率を2020年までに40%、2025年までに70%に引き上げることを目標としている。

自給率が低い背景に 

中国の半導体産業がほかの産業に比べ圧倒的な自給率の低さをほこり、産業が伸びなかった大きな原因の1つは人材不足によるものである。
半導体の開発と製造に至るまでに多くの工程技術者が必要となる。その大勢の技術者が集まりチームとなって協力していかなければ成り立たない半導体産業は個人主義が根強い中国の国民性的に適さない産業であった。

また半導体産業は様々な技術が密集した産業である。半導体を製造する上で、設計から生産にいたるまでのどの工程においても高い技術が要求される。それぞれの水準を上げるために企業は、多くの時間と大規模な生産ライン、技術者の経験値が必要となってくるのだがその人材が足りていないのが現状である。新しく入ってくる者は十分な知識を持ってこそ、初めて技術面で戦力となるのだ。

拡大すべき半導体製造装置の生産能力および複雑化していく製造、管理者への高くなる要求が産業発展を阻む高い壁となっている。

政府の政策

中国政府は2014年に半導体の自給率の引き上げに向けた技術水準の向上・規模拡大を標榜する「国家集成電路産業発展推進綱要」を発表し、 10 兆円を超える基金を設けた。
2015年には産業政策「中国製造2025(Made in China 2025)」を発表し、半導体の目標自給率を提示した。

協力的な政府の支援により、中国各地でたくさんの半導体企業が誕生している。

半導体事業を行う中国企業  

まず半導体事業を行う企業は大きく3つに分けられる。

・設計から販売までを自社で行う企業 : IDM(垂直統合型デバイスメーカー)
・製造工場を持たず設計に特化した企業: ファブレス
・製 造 を 受 託 す る 企 業: ファウンドリー

世界の半導体シェア率を日本が大幅に占めていた頃、日本の全ての企業はIDMであった。現在世界的に代表されるIDMメーカーはIntelやサムスン電子、日本だと東芝である。半導体は周辺設備などに膨大な費用を要するため、安定を求めコスト削減を追求した結果、現在では世界規模で見てもファブレスとファンドリーに分業した企業がほとんどだ。

HiSilicon(海思)

公式サイトより引用

中国のファブレスメーカーを代表するのがHiSilicon(ハイシリコン・海思)である。ファーウェイ(Huawei・華為)の子会社で深圳に拠点を構えている。
ファーウェイの製品の大多数の半導体設計を担っており、2012年に「K3V2」という通信用チップを発表し、“世界で最も早い通信チップを作った会社”として世界のトップグループの仲間入りをした。

しかし社外販売をしておらず、ファーウェイ製品用の製造しか行なっていないため、今後もし供給を始めたら、市場に大きな変化をもたらすだろう。
ファーウェイの5Gスマホに搭載されている半導体チップ「Baron 5000」は4Gの10倍もの通信速度を誇るといわれており、世界的にも無視できない存在となっている。

SMIC(中芯国际)

公式サイトより引用

上海に本社を持つ中国最大のファウンドリーメーカー。0.35umから14nmにおいての幅広い技術を提供している。
ちなみに中国最大のマスク製造設備も兼ね備えている。

SiEn(芯恩)

公式サイトより引用

“半導体の父”と呼ばれるSMICの創業者でもある张汝京が他のチームと協力して設立した半導体企業SiEn(芯恩)。分業化されたファブレスにもファウンドリーにも属さない新たな半導体製造モデル「CIDM」の会社である。
CDIMとは“Commune IDM”の略称で、市場最重視の半導体製造のプラットフォームを形成する新しいビジネスモデルである。

端末アプリケーションメーカーやIC設計、IC製造メーカーが共同で出資し協業を行う事で、半導体の設計から販売に至るサプライチェーンの構築を行う。リソースや資本を共有しリスクを減らし、技術や能力を独占することが可能になる。世界トップクラスのICチップ設計と製造能力、国内外の半導体アプリケーション企業を誘致し、電気自動車メーカー、通信機器、家電メーカーなどからの受託をうける。

現在青島において工場の建設を急いでいる。

新モデルCDIMがもたらす影響

顧客のニーズに特化したこのビジネスモデル・CDIMは様々な企業との協業により、幅広い業界からの顧客獲得が期待できる。そしてこのCDIMは日本のIDMメーカーを元に創造されたビジネスモデルである。

SiEnの創業者である张汝京はビジネスパートナーとして海外企業の協業および海外人材を求めている。日本の性能や技術も賞賛し認めている。

これからの中国の半導体産業の行方と海外との携わりに注目である。