今年の中国長者番付「胡潤百富榜」が発表された。
胡潤百富榜(フージワーフ)とはイギリス人のルパート・フーゲワーフが中国で創立した民間シンクタンク「胡潤研究院」によって毎年作成される中国富豪ランキング。同ランキングは中国の企業家や富裕層を研究する際などの参考にされる。
▲2019年胡潤百富榜
今年の長者番付のトップはジャック・マーである。ジャック・マーが中国1位の富豪に選ばれるのは今回で3度目(2014、2018、2019年)となる。2019年会計年度のアリババの収益は約4000億元で前年より51%増加と安定の好調である。アリババは今年、ネットイース傘下のECプラットフォームコアラを買収し、物流企業の申通快递の株式を購入するなど、アリババ陣営をさらに拡大させた。
2位はテンセントの会長・馬化騰(ポニー・マー)である。今年中国政府がゲーム審査受付を再開したことにより、テンセントは新規ゲームの販売許可を取得し、ゲーム事業は好調を見せた。
7位に挙がった拼多多の黃崢(コリン・フアン)と8位のネットイースの丁磊(ウィリアム・ディン)は初めてトップ10にランクインした。
拼多多は成立から3年で急成長し、ナスダックでIPOを果たした。それと同時に黃崢個人の資産も増加した。
ネットイースは今年9月に傘下のEC事業コアラを20億米ドルでアリババに売却した。伸び悩んでいたEC事業の売却によりネットイースの株価は一時期高騰したのだ。
ランキング上位の多くがITや不動産会社を経営している人達だが、火鍋チェーン店を展開する海底撈の張勇と舒萍の夫婦も上位に上がっている。親切なサービスで有名な海底撈は去年9月に香港で上場し、現在の時価総額は1700億元(約2兆5,800億円)を突破している。
また、百度の会長・李彦広夫婦の資産は43%減少でランキング34位に転落した。近年百度は検索順位を操作した、などで評価が暴落しておりその上、力を入れたAI事業の進展も著しくなく、今年Q1の決算では上場以来初めての赤字を出した。
中国の各業界の勢力もこの長者番付に反映されている。ランキングの“IT業界の富裕層人口”の割合は去年の10.3%から11.7%に上昇。“製造業界の人口”割合は1位ではあるが、去年の26.1%から24.5%へ下落している。
全体的に製造や不動産などの伝統的な業界の人口シェアが縮まっており、一方IT業界では複数のユニコーン企業と科创板(中国版ナスダック)上場企業が台頭している。