50億元の資金調達に失敗、苦戦を強いられているNIO

“中国のテスラ”と呼ばれる新興EVメーカー・蔚来(NIO)がつい最近50億元(約765億円)の投資交渉に失敗した、と報じられた。
NIOは浙江省湖州市吴兴区で年間生産台数20万台の工場を建てることを条件に、吴兴区政府から50億元の投資を求めた。吴兴区は近年エコカー生産を積極的に支援しているが、今回の投資交渉はリスクを考え中止にしたことを発表した。

2018年9月にアメリカにて上場を果たし、中国屈指のEVメーカーとして世間の注目を集めたNIOだが、最近は資金繰りの悪化が懸念されていた。

 

リストラや電池発火事件以降、2つの「無期限」サービスを打ち出したNIO

今年6月、NIOの主力モデル「ES8」による電池の発火事件により約4800台の車両をリコールすることが発表された。この事件はNIOのブランドイメージに傷をつけた。
さらには9月に至るまでに、NIOは全従業員数の14%にあたる約1千人をリストラした。
2019年Q2の決算報告では、純損益が83.1%増加し32億元(約490億円)の赤字を出した。上場後、軌道に乗ったかに見えたNIOの株価は一連の騒動の影響を受け、急落した。

販売数を増やすためにNIOはQ3期に「無期限保険」と「無期限の無料電池交換」の2つのサービスを打ち出した。その後8月と9月の販売台数は好調をみせ、Q3の合計納車台数は4799台と、前年比46%増加を見せた。
しかし、消費者の購買意欲を掻き立てた「無期限」サービスはNIOにとって莫大なコストを必要とするため、資金難に陥っているNIOにとって大きな負担になっている。

 

政府補助金削減で苦戦する中国EVメーカー業界

エコカー業界の発展を後押していた中国政府による販売補助金は年々削減されており、EVメーカーにとって大きな痛手である。今年6月以降最大で従来の半分近くの補助金が削減されており、2020年を目処に補助金政策の停止が確定している。

中国自動車工業協会が発表したデータによると、今年7月から9月までの全国エコカーの販売台数は前年比で連続減少した。そのうち9月の販売台数は8万台と前年比34%減少であった。

▲2016年〜2019年エコカー販売台数(出典:中国自動車工業協会)

中国の伝統的な自動車メーカーも近年エコカーモデルを打ち出し、エコカー事業を拡大している。また、米国最大のEVメーカー・テスラは上海で工場を設けて、中国市場へ注力していく姿勢を示している。同工場は今年年末までに生産開始を予定している。

国内の伝統的自動車メーカーと、海外メーカーの市場参入により中国のEV業界の競争は一層激化している。さらに投資家がEV業界への投資を控えている背景が、NIOの発展をさらに厳しくさせるだろう。

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