中国政府は11月1日、電子タバコのネット上での販売と未成年への販売を全面的に禁止することを発表した。
関連事業者に対してネット販売の即時停止を促した。この通告は資金調達が好調で勢いづきスタートアップが続出していた中国電子タバコ業界にとって大きな打撃となった。
中国のネット通販の祭典・ダブル11のタイミングでのこの決定は大型イベントでの売り上げを期待していた電子タバコメーカーらにとってかなりの痛手である。
新たなる追い風!?中国電子タバコ業界の関連企業急増
参入の敷居が低い上、利益率が高いなどのメリットから、近年多くの電子タバコ企業が現れた。
中国企業の情報提供会社「天眼查」のデータによると、2010年から中国の電子タバコ関連企業は全体的に増えており、現在全国の電子タバコ企業は約9500社も存在している。そのうち、2019年に設立した会社は2000社も超えた。
▲2010〜2019年中国電子タバコ企業の数
さらに、投資家達も電子タバコ業界に注目しており、2019年上半期の業界資金調査回数は35回を超え、調達総額も10億元を超えた。
今年4月、中国で有名なスマホメーカーである「锤子科技(スマーティザンテクノロジー)」の創業者・罗永浩も電子タバコの台頭を見て「小野」というブランドを設立し市場参入を果たして、一時話題となった。
健康への影響の物議、市場監督制度は未確立
業界の熱気とは反対に、電子タバコの健康に対する影響が物議を醸した。禁煙に有益だと宣伝され拡散されてきたが、病気のケースの増加により電子タバコへの懸念が強まった。
中国だけではなく、インドやタイ、ブラジルなどの国々も電子タバコを全面的に禁止した。
アメリカでは電子タバコの使用により病気を患うケースが続出しており、政府は電子タバコの制限を強化した。そのためアメリカの電子タバコ大手Juulは年末までに500人の従業員を削減する計画を発表している。
中国市場では電子タバコ業界への監督制度が未確立であるため、販売されてる電子タバコの原材料や添加物の標準が統一されておらず、品質管理の不十分などの問題が存在する。
業界の冬がきた、オフラインが活路に
政府の禁止令発表後、電子タバコ企業による関連商品のネット販売は依然消えていない。
ダブル11に備えてたくさんの在庫を準備した業者にとって目の前のチャンスをみすみす逃すような事はできないのだ。さらに、複数のECモールも具体的な通知をもらっていないことを理由に電子タバコの販売を続けている。
アリババや京東などのプラットフォームは「電子タバコ」のキーワードを遮断する対応などを取っているが、ブランドの名前を検索すると関連商品がでてくる。
▲ECモールで依然として続く電子タバコの販売
ネットでの販売経路が厳しくなったことで、複数のメーカーはオフラインの販売に注力することを表明している。
しかし、中国政府の制限強化の姿勢からみると、販売ルートだけではなく、生産と販売許可制度の採用の可能性も高い。
そうなると一般のタバコと同じように許可を得ないと生産や販売ができなくなる。
現在の状況から見ると、電子タバコ業界は全滅まではいかないが、中国政府の規制強化により、将来的に一部優良なメーカーしか生き残ることができなくなると予測できる。