京東など中国EC数社はアリババを市場独占で訴える
近年中国国内EC市場の伸びは鈍化しており、激しい競争の最中事業者らはクライアントの確保のため、出店ブランドと独占提携契約を締結するケースが増えた。
しかしその中で独占提携を強要するケースも存在する。
プラットフォームがブランドに対して2つのプラットフォームから1つだけ選ばせる「二者択一」という行為を巡る論争は、ダブル11のタイミングでさらに激化した。
中国ECの代表であるアリババとシェア率2位の京東による独占を巡ったトラブルは以前から存在していた。毎年618やダブル11などの大型ネット通販セール時になると、トラブルがはエスカレートし、激しい論争が繰り広げられた。
以下は中国EC企業の「二者択一」のこれまでの過程:
- 2012年京東はアリババの「二者択一」を批判する声明を出す
- 2015年京東はアリババの「二者択一」行為を関係部門に摘発
- 2017年蘇寧は京東にも「二者択一」行為が存在すると批判
- 2017年京東は北京でアリババの「二者択一」行為を起訴、アリババは杭州法廷に管轄権があると上訴
- 2019年618セール時に家電メーカーのGalanzはアリババから「二者択一」被害を受けたと表明
- 2019ダブル11前に拼多多はアリババの「二者択一」行為を批判
- 2019年最高裁はアリババと京東は北京法廷に管轄権があると判定
「二者択一」は競争手段として、アリババと京東の間だけに存在している問題ではなく、蘇寧や拼多多などの後発のEC事業者らも巻き込まれた、EC業界の一現象である。
京東がアリババを起訴した案件は管轄地の判決だけで2年もかかった。
管轄地の判定は両者の勝負に直接的に関わるため(京東の本部は北京、アリババは浙江省にある)、裁判が始まる前に管轄地を巡る争論が起きたのだ。最高裁は北京法廷に管轄権があると判定したことにより京東側が有利だが、最終結果が出るまでまだまだ時間がかかりそうだ。
さらにこの案件に対し、今年9月拼多多と唯品会も第3者として参加する申し立てを法廷に行った。京東、拼多多、唯品会の3者はいずれもテンセントの出資を受けており、テンセント陣営にあたる。3者はライバルでありながら、EC業界最強のアリババに対抗することで利害が一致している。
▲北京にある京東の本社(チャイトピ!撮影)
法律で禁止されたのに、なぜ「二者択一」現象が絶えないのか
2019年1月1日からEC業界に対する初めての専門的な法案「電子商取引法」が正式に施行された。
この法律は「二者択一」の独占行為を明確に禁止している。同法律は施行される前から大きな期待を寄せられていたが、実際の効力はイマイチのようで「二者択一」現象は改善されていない。
これはEC法案の施行のルールがないことと関係がある。中国の法律業界に詳しい人によると、詳細についての施行ルールがないため、EC法案のきちんとした施行はまだ難しく、本質的な問題の解決には至っていない。
今年11月、中国国家市場監督管理総局はアリババや京東、拼多多などEC企業を集めて指導会議を開き、「二者択一」は独占禁止法とEC法に違反していことを強調し、これから独占行為の調査や摘発を強化していくことを表明した。
メーカーのプラットフォーム離れの可能性も
EC大手の「二者択一」の競争に巻き込まれたメーカー達は、1社のみ選び、もう1社での店舗を閉鎖するしか他選択肢がない。プラットフォーム上の販売に依存してるメーカーらはなおさらその傾向にあるため、特に被害が大きいのだ。
一方で一部の強気なメーカーは自社のECプラットフォームを立ち上げ、利益の向上を図っている。有名なメーカーの自社ECサイト運営の事例として、中国家電メーカー大手のGREEが挙げられる。京東や蘇寧に出店しながらも、自社のECプラットフォームの運営にも力を入れており、2014年に自社ECサイトを立ち上げ、さらに今年11月に1億元を投入しEC子会社を創立した。
つい先日ナイキのアマゾンからの撤退が発表された。ECモールより自社サイトに注力した方が高利益をもたらせるからだと囁かれている。
ナイキやGREEのような大手企業ならプラットフォームからの撤退を潔く決断できるが、数多くの中小ブランドはこれからもプラットフォームを頼った経営展開を行っていくだろう。