中国EC市場シェア率3位の拼多多(ピンドウドウ/pinduoduo)は11月20日に、7月~9月期決算を公開した。
決算発表後に株価が暴落した拼多多
前年比122%増加で75億元(約1155億円)の収益を出したが、純損失は23億元(約354億円)と前年より損失額が拡大しており市場予想の損失額を超える結果となった。
この決算の発表を受け、拼多多の株価は一夜にして大きく下落し、時価総額は百度、京東、ネットイースの3社に抜かれ、中国インターネット企業のランキングでは4位から7位にまで転落した。
京東の時価総額を超え中国第2位のEC大手に君臨したのも束の間、先月のその躍進からは想像できない株価の変動に世間が騒めいた。
▲拼多多は現在7位(11月21日までのデータに基づきチャイトピ!作成)
拼多多は去年ナスダックで上場して以降1年間のユーザー数の増加と株価の上昇でかなり脚光を浴びた。
さらに今年10月に会長・黄峥(Zheng Huang)が”「本当のGMV」では拼多多は京東を超えた”と社内会議で発表したことにより、京東を全面的に超えるのではないかとニュースで話題となった。
しかし今回の決算報告によると、9月までの12ヶ月間のGMVは8402億元で、京東の2018年の1年間のGMV(1.7兆元)に大差で負けている。京東との差はまだまだ大きいのだ。
ユーザー成長の裏で赤字拡大に繋がってしまった補助金作戦
地方市場の秘められた消費ポテンシャルを成長エンジンに、起業から4年で中国EC業界の一大勢力にまで成長した拼多多にとって、成功の一大手段が地方ユーザー向けの安価作戦であった。
成長につれ安価作戦は巨額な補助金無しでは継続が難しくなっていった。ユーザー数が増えた反面、この補助金作戦は会社運営に莫大なコスト負担を与え、赤字拡大に繋がる結果となったのだ。拼多多Q3のマーケティング支出は84億元(約1290億円)で、前年比119%増加した。
今年6月の「618セール」イベントから、主力ジャンルの商品に対して100億元(約1540億円)の補助金を投入した。iPhone関連の商品だけでも平均1件の注文につき300元(約4600円)補助している。
iPhoneなどの安価商品を狙う目的で拼多多を始めたユーザーもいたがこのようなユーザーたちの買い物は1度きりで終わるため、リピート率の低さに拼多多の作戦効果を疑問視する声も高まった。
アリババと京東が拼多多への対抗措置として、地方ユーザー向けのサービスを打ち出している。拼多多は反対にアリババと京東勢力の強い都市部市場へ進出し、補助金作戦の範囲を拡大させた。
ダブル11の期間中には、SNS上で十数人の友人にイベント情報を拡散すると100元もらえるというイベントを展開し、拼多多は都市部でも多くの新規ユーザー獲得に成功したが、100元獲得と同時にアプリを削除するユーザーケースも多く存在したため、新規ユーザーのリピート率引き上げは拼多多にとって大きな課題となっている。
赤字が拡大してもなお、楽観的な拼多多
決算発表後に株価が大幅に下落し、市場では拼多多の将来を懸念する声が多く集まったが、拼多多自身はあまり事を重大視していない。
拼多多は現在、利用者数の拡大と利用者のアクティブ率の引き上げに重点を置いている。ユーザーからの信頼度を深めることが最終的な会社の黒字化に繋がると考えているのだ。
会長の黄峥によると、補助金作戦は投資行為の1つとして展開している。
長期的な発展を考えると、資金を蓄えるより投資した方がチャンスを掴むことができ、投入した100億元の補助金は全て有意義であるとの事だ。
拼多多だけでなく中国では他にもLuckin coffeeなど、コーヒーチェーンスタートアップが初期段階で市場拡大・利用者増加のために補助金作戦を展開し世界的コーヒーチェーンのStar bucksを猛追している。
急速な成長に巨額な赤字が伴うのはもはや急速な発展のための特徴となっている。
ユーザー成長と引き換えに大量の資金を投入した拼多多の黒字化への道はまだまだ遠いだろう。
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