滴滴が相乗りサービスを諦めない理由
2018年の1年間で2度も運転手による乗客殺害事件が起こり、世間から強い批判を受けた滴滴(DiDi)の相乗りサービスが11月にハルビンや北京などの計7都市で再開した。
今回の復活に至るまでの道のりは安易なものではなかった。相乗りサービス再開のために滴滴は並々ならぬ努力で奮闘してきた。世間の反応を見るためにサービス改善の意見を募集したり、復活後も深夜の時間帯の女性客の利用を制限したり(事件の被害者が全員女性だったため)サービスの向上化に勤しんでいる。
しかし万が一凶悪事件が再び起きてしまった場合、滴滴はもう世間から受け入れてもらえず会社も大きなダメージを受けるだろう。
このような高いリスクを伴いながらも滴滴が相乗りサービスをやめない理由には、社会の需要を満たし尚且つ高い利益が得られる事が挙げられる。
サービス停止前、相乗りサービスは滴滴の主要な事業の1つであった。2015年にリリースしてから2ヶ月間という短い期間で137都市にまでサービス展開を広げた。2018年の春節期間中の相乗りサービスの利用者数は約3037万人で、前年度の3倍にも及んだ。
滴滴が当時、市場シェアの争奪戦において採用した「サービスの利用料金を引き下げて運転手の給料を引き上げる」という補助金に頼る作戦は滴滴に大きな打撃を与え、会社はいまだに黒字化を実現できていない。
しかし事業別で見ると、相乗りサービスは運転手への補助金が比較的少なく車も運転手個人の所有車であるため、滴滴が負担するコストが低い。事業規模やサービス利用回数では同社の主力サービス「快车」(DiDi専門のタクシー)には敵わないが、コストが低く利益の高い相乗りサービスは滴滴にとってとても重要なサービスなのだ。
滴滴不在の1年、相乗りサービス市場の新規参入続出
滴滴の相乗りサービスは当時、市場シェアの7割を占め絶対的なポジションを確立していた。
しかし滴滴の相乗りサービス停止発表以降、たくさんの企業が市場に新規参入し、滴滴のシェアを奪い合った。
例えば「嘀嗒出行(didachuxing)」では滴滴のサービス停止後、運転手の登録申請が約3倍〜5倍に増えた。そして今年9月に「嘀嗒出行」は黒字転換に成功したことを発表。配車サービス市場において黒字化を発表したのは嘀嗒出行が初めてである。
さらにアリババが支援するシェア自転車の哈啰出行(Hellobike)も今年1月に、相乗りサービスの開始を発表した。そして2月の春節から運転手の登録者数は200万を超えた。他にも「曹操出行」や「首汽约车」などの企業が市場参入を果たしている。
滴滴不在の1年間で相乗りサービスの勢力図は大きく変化しており、復活した滴滴が元の市場シェアを取り戻せるか注目である。
中国政府が相乗りサービスの規制強化、今後の滴滴の課題
滴滴が復活を発表した後、11月に中国政府交通部門が滴滴を含めた配車サービス関連企業8社を集めて指導会議を開いた。そして運賃の分担を目的とする相乗りを提唱し、儲けることを目的とした運転手の登録禁止を発表した。さらに1日の中でのサービス利用回数を制限するなど安全管理を強化した。
政府の制限を受けこれから、中国相乗りサービス市場の成長が緩和していくことが予想できる。
さらに、再開した滴滴の相乗りサービスは登録の際に実名認証、安全機能確認、安全知識学習をしなければならない。安全性を高めるための措置とは言え、使い勝手が悪くなってしまったのは新しい課題である。
運転手によって乗客が殺害された2つの事件で、滴滴はサービスを提供するプラットフォームとして大きな責任を問われた。しかし滴滴以外のサービスでも運転手が乗客に殺害された事件は何件か起きており、その際はプラットフォームではなく犯人その者だけが世論の批判を浴びた。どの事件も偶然性の一致によりそのサービスで起きてしまったことである。
プラットフォーム側が様々な措置で安全性を高めても、事件の発生率をゼロすることは難しいが、安全対策問題は滴滴相乗りサービスの生死にかかわる重要な課題である。