中国のEC業界ではライブ配信を活用したマーケティングが近年大きな注目を集め、特にダブル11や618のような大型セールイベントで効率の高い販促手法として多くの企業に利用された。
実際にライブ配信はEC業界だけでなく、ゲームなどの他業界でも幅広く活用されており、ライブ配信は1つのツールとして各業界で活躍しているのだ。チャイトピは今回、中国のリサーチ会社QuestMobileが発表した「2019年ライブ配信レポート」を抜粋して、中国ライブ配信業界の最新トレンドを紹介します。

4億人もの利用者を持つ中国ライブ配信市場、人気を集めた理由は?

中国では2005年からライブ配信が普及し始めた。音声や映像の生放送を通してネット上での友達探しが主要な目的であった。その後「映客」など、ライブ配信の場を提供するプラットホームが相次いで現れた。この時のライブ配信の内容は配信者がトークを行なったり得意な事を披露したりが多かった。

そしてその後の中国モバイルゲーム業界の発展がゲームのライブ配信の誕生を促した。斗魚、虎牙などのゲームのライブ配信プラットフォームが現れた。ライブ配信の内容はますます幅広く豊かになった。

利用者数から見ると、2017年に急増を見せたのち、停滞期に入り、2019年に再び成長を見せ、6月の利用者数は4.33億人を記録した

▲2016〜2019年中国ライブ配信利用者数と浸透率(出典:QuestMobile)

ライブ配信が人気を集めた理由は様々だが、代表的な理由として以下の3つが挙げられる:

  • 即時性:情報をリアルタイムで伝えられるため、信用度が高まった。
  • 相互性:配信者と視聴者が配信中いつでも交流ができる。
  • 参入の敷居が低い:誰でも配信者になれる。

テンセント、アリババ、バイドゥなど大手のライブ配信進出

▲BATとバイトダンス4社のライブ配信サービス(出典:QuestMobile)

ライブ配信のビジネス価値に目を付け、アリババ、テンセント、バイドゥなどインターネット大手は自社の関連サービスにライブ配信を活用した。

テンセントは2016年にライブ配信サービスの「NOW直播」を打ち出した。さらに自社の強みであるソーシャル分野のチャットアプリ「wechat」でライブ配信機能の内部テストを展開している。ユーザーは将来Wechatの公式アカウントでライブ配信を見ることが可能になる。

アリババは2016年ECサイト「タオバオ」でライブ配信サービス「タオバオ直播」をリリースした。今年のダブル11セールでのタオバオのライブ配信による売上は約200億元(約3100億元)にのぼるなど、ライブ配信の影響力はとても大きい。

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近年BAT3社の中で勢いを失ってしまったバイドゥも、ライブ配信に注力し2017年にリリースしたショート動画アプリ「好看视频」にライブ配信機能を追加している。

バイトダンスも傘下のショート動画アプリ「tik tok」や「西瓜视频」、「火山小视频」にライブ配信機能を追加した。

EC+ライブ配信が一般化、KOLの人気は二極化

EC分野でライブ配信は、短期間で売上をもたらせる今年の業界の流行マーケティング手法である。

ライブ配信による商品販売は以下の3種類に分類できる:

  • 秒杀モード:大勢のフォロワーをもつKOLが、商品を限定低価格で販売する。これによりKOLはフォロワーをさらに増やせて、メーカーもKOLの影響力で、よりたくさん売ることができる。この手法で販売される商品は安いが、数に限りがあるため「秒杀」と呼ばれている。
  • 達人モード:ある分野の専門知識を持つ配信者が関連商品を紹介し販売する。
  • 店舗配信:お店自らライブ配信を行い店内の商品を紹介する。

配信者の人気が直接商品の売り上げに影響するため、フォロワーの多いKOLがもたらす宣伝効果は高いが、大人気のKOLの数は少ない。新興KOLの人数は多いが、平均の売上は高くない。タオバオのダブル11データから見ると、トップKOLである薇娅と李佳琦のユーザー関心度は3位のKOLと圧倒的な差をつけ、圧勝している。

▲ダブル11のタオバオライブ配信者への関心度(出典:QuestMobile)

KOLがもたらす販促効果に目を付け、KOLを育てる企業も現れている。今年3月にナスダックで上場を果たしたEC企業の「如涵」がその代表である。如涵の急速な発展は注目を集めたが、会社の売上は数人のKOLに依存しており、いざという時のリスクが高い。7~9月期の決算によると、もっとも影響力のあるKOLは3人しかおらず、この3人によるGMVはKOL全体のGMVの5割を占めている。

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ゲームなど他の業界でのライブ配信活用

▲2019年3月ゲームライブ配信アプリトップ10の利用者数と浸透率(QuestMobile)

ゲーム分野では、ライブ配信サービスを提供するプラットフォームが多数あるが、中でも人気なのは斗魚、虎牙の2社だ。この2社は人気ゲームの対決試合の放送権を取得したり、人気な配信者と契約するなどし、90後・00後などの若者利用者を増やした。

他にも教育分野やソーシャル分野でもライブ配信を活用したケースは多い。さらに、5GやARなどの技術の成長はライブ配信発展の新たな助力になると見込まれており、2020年もライブ配信がさらなる活躍を見せると予想できる。

 

ソース:QuestMobile 2019直播+X 洞察报告