テンセントビデオに次いで、iQIYIの新たな課金制度に批判が相次ぐ
中国版のNetflixと呼ばれる百度傘下の映像サイトiQIYI(爱奇艺:アイチーイー))はVIP会員になると、放送中の人気ドラマ「庆余年」を6話分先行視聴できる特典、さらに50元払えばさらに6話分を先行視聴できる課金制度を開始した。
会員に対するさらなる2次課金制度は事実上、会員価値を低下させたため多くの批判が殺到し、中国国営メディアの人民日報も批判的なコメントを出した。
▲iQIYIで放送中のヒットドラマ「庆余年」
この課金制度はiQIYI最大のライバルであるテンセントビデオ(腾讯视频)が先に採用した。今年8月にテンセントビデオはヒットドラマ「陈情令」に対し、未放送の6話を一気に公開したり、30元を払うと最終話まで見れる制度を作った。この時ネットでは課金制度に対する不満と批判が殺到した反面、お金を払い「陈情令」の最終話までを見た人は260万人を超えた。テンセントは一夜で少なくとも7800万元(約12億円)の収益をあげたのだ。
有料会員1億を突破、しかしなおも巨額赤字が続くiQIYI
2010年に設立したiQIYIはドラマなどのコンテンツの著作権を購入し、無料で動画を閲覧することに慣れてしまっていた中国消費者に有料会員制度を推進してきた。アプリのMAUは約2億7000万人で現在のビデオアプリの中で首位に位置している。さらに、2019年6月に有料会員数が1億人突破したと発表しており、中国の有料ビデオ市場のポテンシャルの高さをアピールした。
▲2019年6月中国ビデオアプリMAUトップ7(出典:Trustdata)(左から:iQIYI、テンセントビデオ、youku、souhuビデオ、ビリビリ、マンゴTV、シャオミビデオ)
人気ビデオの著作権を購入し独占放送を通じてユーザーを獲得してきたが、高額なコンテンツコストに会社は大きな負担を担った。iQIYIはいまだに黒字化を実現していない。2019年Q3では37億元(約579億円)の巨額赤字を出しており、上場以来最大の四半期赤字を記録したのだ。
▲2018〜2019年 iQIYIの会員数成長率(公開データに基づきチャイトピ!作成)
iQIYIの主な収入源は会員費と広告費である。中国経済の減速を受け広告市場も業績不振に陥り、広告収益が減少している中、iQIYIは会員費からの収益獲得に注力した。しかし会員数の成長も2018年末から鈍化しており、新しい会員の獲得がますます困難になっている。そのためiQIYIは有料知識サービスなど様々な事業をスタートさせ、収益の多様化を図っている。
ビデオ市場もBATの激戦区、会員費値上げはリスクが高い
iQIYIの苦境と対照的に、米国のNetflixは今年Q3で6.65億ドルの純利益を出し安定した成長を示した。ユーザー規模から見るとiQIYIは中国国内ではトップに立っているが、その後ろにはテンセントビデオとアリババ傘下の映像サイトyouku(优酷)が食らいついている。
この3社が中国有料ビデオ市場シェアの8割以上を占めており、iQIYIとテンセントビデオの両社とも有料会員数1億人突破を発表している。Youkuは具体的な会員データを出していないが、アリババの強力な支援により、中国映像市場の一勢力の地位を保っている。
iQIYIの現在の会員料は月額25元(約391円)、Netflixの料金は最低で800円、最高で1800円である。2011年からiQIYIの会員料金は1度も値上げを行ったことがない。市場シェアの確立のために中国ビデオ大手3社は会員料金を低価格に設定している。
今年のQ3決算を発表する前、iQIYIは会員費の引き上げ計画をほのめかしたが、具体的な時間を公表していない。テンセントやyoukuなどのライバルより先に値上げをすると、会員が他社に流れるリスクが高くなる。
直接的な値上げより、今回のような課金制度の方が一部ユーザーには受け入れやすそうだ。
BAT大手3社の競争が激化する他にも、Tik tokをはじめとするショートムービーアプリが台頭し、市場シェアを奪い合っている状況下において、ヒット作品に対する課金制度は収益をもたらすための新たなパーターンとして常態化されるかもしれない。
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