ECルートを利用して海外へ商品販売を行ったり、海外の商品を国内へ販売する「越境EC」というと、近年中国市場が最も注目を集めている。世界最大の市場規模を持つ中国は国内で伸び悩んでいる日本企業にとっても注目すべき市場であり、近年日系企業の中国越境EC進出も増えているのだ。
本記事では中国越境EC市場規模、ユーザー像から税制など政府の関連政策まで中国越境ECの全貌を紹介していく。
2019年中国越境EC市場規模
中国越境EC市場規模については、政府部門やデータ会社など各自出している異なったデータが世間で乱立している。どれを信じたら良いのか困惑する人も少なくないだろう。
政府部門の公式データが1番信憑性が高そうだが、詳細やカテゴリー別などの細かいデータが少ないため、データ会社の数字を参考にすることが多い。今回チャイトピはこの両者のデータを比較して、中国市場へ進出予定の企業や中国ビジネスに関わる読者に必要でありそうな内容を抜粋してまとめた。
中国リサーチ会社iiMedia Researchによると(左下図)、2018年中国越境EC市場規模は9兆元(約144兆円)を超えた。さらに2019年の市場規模は10.8兆元(約288兆円)だと予測されている。この市場規模データはB2BやB2Cを問わず、輸出と輸入を含めた全体の市場規模である。
▲中国越境EC市場の取引額と予測
(iiMedia Researchと中国税関のデータに基づきチャイトピ!作成)
また、中国越境EC市場構成はB2Bが8割以上を占めている。中国税関の統計(右上図)によりB2Cに絞って中国越境EC市場規模を見てみると、2018年中国越境ECのB2C取引額は1347億元(約2兆円)である。
両者のデータを総合すると中国越境EC市場規模は年々増加しており、これからも拡大していくことが予想される。
中国越境ECユーザー像
▲中国越境ECユーザー数と予測
(iiMedia Researchのデータに基づきチャイトピ!作成)
2018年中国越境ECのユーザー数は1億人を超えた。2019年は1.4億人を超えたと予測されている。中国人の消費水準が上昇するに伴い、越境ECの利用者数も増加傾向にある。ユーザー属性は、1、2級都市のユーザー数が全体の70%を占め、女性ユーザーは73%を占めている。
▲2019年中国越境ECユーザー像
(iiMedia Researchのデータに基づきチャイトピ!作成)
人気な商品カテゴリは38%のユーザーが越境ECを通して購入しているコスメ商品だ。次いでは31%のユーザーが購入してる保健栄養類商品。消費者のコスメや保健栄養類商品に対する品質の要求が高いため、積極的に海外製品を取り入れているのがわかる。
購入ルートでは、66%のユーザーがよくオンラインで越境ECを利用してる。そして各越境EC事業者のオフライン店舗への注力により、約28%のユーザーはオフラインで買い物している。
昔から多く目にする個人による代理購入は越境ECサイトなど正規ルートの増加により衰退の傾向にある。
中国越境ECプラットフォーム勢力図変化
中国国内向けEC分野のアリババと京東の2強が市場を牽引し、拼多多などの若手企業がその後を追いかける構図は越境ECでも同じように見られる。ネットイース傘下の越境ECプラットフォーム「コアラ(Kaola.com)」は7年連続市場シェア1位を獲得し、アリババや京東と対抗してきたが、赤字や在庫のプレッシャーを抱えていたコアラは2019年9月にアリババに売却された。アリババがコアラと自社の越境ECプラットフォーム「天猫国際」との事業統合を展開し、5割以上の市場シェアを手に入れ、現在の越境EC分野で紛れもなくトップに君臨している。
▲2019年中国越境EC勢力図
(iiMedia Researchのデータに基づきチャイトピ!作成)
アリババの昔からのライバルである京東(ジンドン)も越境EC事業へ力を注いでいる。傘下の越境ECプラットフォーム「海囤全球」を含めた越境事業を全て統合させ「京東国際」に改称し、海外ブランドの誘致を積極的に展開している。
一方、拼多多などの後発企業も越境EC事業への投入を加速させる姿勢を示している。2019年3月拼多多は越境EC事業を本格的に開始させた。11月には中国国内向けのEC事業を撤退したアマゾンとの提携を発表している。アマゾンは拼多多を通して越境分野での中国市場復帰を図っている。
他にはアリババ陣営の蘇寧(Suning)傘下の越境EC事業の「蘇寧国際」の発展も注目したい。2019年7月に「蘇寧国際」は楽天と戦略パートナーシップを締結し、越境EC事業の拡張を加速させた。
中国越境EC政策変化
中国越境EC市場進出にあたって、税制など政府の政策方針の動向を常に確認しておかなければならない。中国政府は支援体制を設け、越境EC業界の発展を後押ししている。中国政府の支援体制はこれからも続く見込みだ。
2019年中国政府・越境EC関連政策の変動まとめ:
2019年1月1日:
「中国電子商取引法」を施行、業界を規範化。→正規越境ECの伸びが期待される。
2019年1月10日:
越境ECの輸入税制の適用エリアを保税区に拡大。→保税区内企業の越境EC事業展開を支援。
2019年4月1日:
増値税率の引き下げ。従来16%→13%、従来10%→9%。
原文はこちら:http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/c4160283/content.html
2019年8月27日:
税関特定監視エリア内保税展示取引の展開を可能に。→越境ECの商品輸入試験都市を増やし、越境EC輸入可能な商品リストの調整を行う。
原文はこちら:http://www.gov.cn/zhengce/content/2019-08/27/content_5424989.htm
まとめ
中国政府の支援政策を受け、越境EC市場はこれからも発展をしていき、多くの海外企業が中国市場へ進出することが予想できる。
法律の厳格化により、正規ルートとして越境ECプラットフォームも進化していくだろう。
その中でもコアラを買収し越境EC市場での影響力を一気に拡大させたアリババがどのゆな作戦を打ち出していくのか。地方市場で成功したダークホース・拼多多が越境EC市場ではどのような成績を獲ることができるのか注目である。
チャイトピ!運営会社unbotは中華圏におけるECマーケティング事業を展開しています。 中国マーケティングに関する事はどうぞunbotへ:media@unbot.co.jp 市場状況や進出事例、マーケティングなどについてもお気軽にお問い合わせ下さい。