チャイトピ!が選ぶ「2019・中国10大ニュース」第2弾は中国マーケティング業界に絞り、話題を呼んだマーケティング事件をまとめた。(時系列まとめ)

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2019年・中国IT業界10大ニュース

“猫”文化に伴いスタバが販売した猫爪コップ

▲公式wechatアカウントより

2019年2月スターバックス中国は春シーズンに向け「桜コップ」シリーズグッズを打ち出した。その中でもコップの中に飲み物を注ぐと、猫爪の形が現れる「猫爪コップ」が人気となり、テントを張ってスタバのお店の前で夜通し並ぶ人も現れた。さらに猫爪コップを手に入れるためにお店の前で喧嘩し、暴力沙汰に発展したことも。
数量限定で販売されたこのコップはすぐに売り切れ、中古品取引サイトでは定価199元(約3100円)のコップが1800元(約29000円)まで値上げして販売された。

ここまで話題を呼んだのには、大手ブランドがよく利用する数限定販売手法が人々の購買意欲を刺激したことの他に、中国で流行っている猫文化を取り入れたのがもう1つの要因である。近年中国の90後や80後などの若者の間で猫を飼う人が増えており、猫関連の商品の消費が急増。猫を利用したマーケティングも多く見られている。

 

同じ言葉を繰り返す、「伯爵旅拍」の煩わしい広告

▲weiboより

2019年中国で最も煩わしい広告と言えば、「伯爵旅拍」の広告が真っ先に思い浮かぶ。この広告は旅行しながらウェディング写真の撮影サービスを展開する「伯爵旅拍」が2月から全国のエレベーターや地下鉄などのスクチーンに投下した映像広告。15秒の映像に新郎新婦の格好してる数十人が「伯爵旅拍」と書いた看板を高く挙げて、「伯爵旅拍、想去哪儿拍、就去哪儿拍」(伯爵旅拍、どこかに行って写真を撮りたいなら、撮りに行こう)と何度も繰り返し叫んでいる。

ネットではこの広告に対してうるさいなど批判のコメントが多いが、この企業にとっては知名度引き上げに功したとも言える。「伯爵旅拍」はアモイの地方ブランドだったが今では全国に知られるブランドとなった。

 

Kindleの自虐マーケティング

▲公式店舗より

アマゾンが中国国内向けEC事業を撤退する前の2019年3月に提供しているKindleが中国で一時話題となった。

Kindleを買ったものの使用頻度は少なくカップラーメンを蓋するのにちょうどいいサイズだととある消費者が出した皮肉コメントがネットで広がり、これを利用してKindleは「Kindleをかけると、ラーメンはもっといい匂いがする」と広告を打った。この自虐的な広告はすぐに話題となりKindleの新商品「Kindle青春版」の宣伝に繋がった。

さらに、Kindleは本とラーメンを販売する実店舗「不方便面馆」を開店した。Kindleとラーメンの関連性を強めたのだ。

 

キャラメルX香水メーカー

▲weiboより

レトロブームを利用したマーケティングと言えば、中国老舗キャラメルブランド「大白兔」と香水メーカー「气味图书馆」のコラボレーションが挙げられる。

「大白兔」は1959年に創業した老舗キャラメルブランドで、80後や90後の幼い頃の懐かしい思い出と言える。しかしライバルブランドが続出する現代、「大白兔」は市場に淘汰されつつある。そんな「大白兔」は他業界のブランドとコラボし、度々ネットで急上昇話題に取り上げられている。2018年に中国国内ボディケアブランドと開発したキャラメルの香りのリップクリームは一時売り切れとなった。

さらに2019年5月に中国国内香水ブランド「气味图书馆」とコラボレーションを行った。キャラメルの香りの香水とボディーシャンプーも発売前からweiboで話題となった。

 

ユニクロX KAWS

▲weiboより

2019年6月に中国のユニクロ店舗の開店直後の大勢の顧客が駆け込みTシャツを奪い合う場面はまだ記憶に新しい。

ユニクロとアメリカ芸術家KAWSとのコラボレーションは今回が初めてではなかった。2016年からユニクロは関連Tシャツの発売を始めたが、当時KAWSの中国国内の知名度はあまり高くなかったため、今回の売り切れほどの盛況は見られなかった。

しかし近年KAWSは中国で展示会を開いたりして、知名度を上げていった。99元(約1600円)の手頃な値段でKAWSを買えるのはたくさんのKAWSファンの購買意欲を引き立てた。さらに、数限定販売といった、スタバと同じハングリーマーケティングを採用し、意図的に数を抑えて「飢餓感」を煽り希少性による価値感を上げた。

 

網易雲音楽X下着メーカー

▲公式weiboより

アルゴリズムを通してユーザーに好みの音楽をすすめることで、若者の間で人気の音楽アプリ「網易雲音楽(NetEase Cloud Music)」が6月に、中国下着メーカー「三枪」とコラボし、「楽」シリーズのパンツや靴下を打ち出した。

音楽アプリと下着といった異色なコラボのギャップはともかく、商品宣伝のビデオ広告は80年代風に撮影され、古い画面やナレーションは視聴者の興味を集め笑いを起こした。前出の「大白兔」と同様のレトロブームを利用したこのコラボはネットユーザーの間でも好感触だった。

 

Jay Chouの新曲のオンライン発売

▲新曲のMV

中華圏で絶大な人気を持つ台湾歌手のJay Chouの新曲「说好不哭(泣かないと約束したから))は9月16日、オンラインでリリースされて3時間で360万枚を売り上げた。音楽サイト「QQ音楽」へのアクセスが急増し、サーバーがダウンするほど人気だった。その後MVのロケは聖地巡礼の場所として観光客が押し寄せた。

しかしこの新曲はJay Chouの他のヒット曲と比べて少し勢いが落ちたように感じる。発売後のネット上の評価もあまり高くない。

それでもここまで売れたのはもちろんJay Chou自身の人気による知名度が貢献しているが、ゲストとして人気台湾バンドグループ「五月天(メイデイ)」のメインボーカル・阿信(アシン)とコラボするなどしてファンを盛り上がらせた。

また、今回の新曲はアルバムではなく、1曲のみのシングル発売であることも購入の敷居引き下げに繋がった。3元(約50円)という価格でJay Chouの新曲を買えるのはファンにとっても嬉しい事だ。

 

テンセントの「国旗付きアイコン」イベント

▲weiboより

2019年は中国建国70周年である。この記念日を活用したマーケティングは昨年多く見られた。中で最も影響の大きかった成功例はテンセントの「国旗付きアイコン」イベントだ。

記念日の間にテンセントの、あるリンクから登録すると自分のwechatのアイコンの右下に小さい国旗をつけることができる。愛国心を利用したこのイベントは爆発的に拡散され、国旗を付けたwechatアイコンがたくさん現れた。
このイベントの参入敷居は低く、アイコンを変えるだけで愛国心を伝えられるため、国民の参加意欲を引き出した。

 

拼多多のダブル11マーケティング

▲チャイトピ!キャプチャーより

中国EC新勢力の拼多多(ピンドウドウ)はSNS上のマーケティングに注力してきた。友達に商品ページを送り、押してもらうだけで安く買える割引イベントが開催され、うんざりと感じるほどwechatでリンクを送られてきた人も少なくないだろう。拼多多もこういうマーケティング手法を通して地方市場のユーザーを増やした。

2019年EC祭典ダブル11の際に、拼多多は似たようなイベントを打ち出した。しかしその際は商品の割引ではなく、100元の現金がもらえることを売りにした。
友達にリンクを送り、100元分集めると換金できる。最初の1人の友達にリンクを送ると、大体95元ぐらい獲得できる。あと少し集めると換金できるため、参加者はさらに多くの友達にリンクを送り、イベントを拡散させた。拼多多はこのイベントを通してDL数を一気に増やした。

 

アウディの広告投下ミス

▲wechatキャップチャーより

2019年11月13日、wechatのモーメンツ画面のアウディの広告枠にインフィニティ(日産傘下の高級車ブランド)の広告が表示されたことが問題になった。テンセントの広告操作ミスで誤ってインフィニティの広告素材がアップされたこの事故は逆にマーケティングとして利用され効果をもたらした。

広告ミス事件がネットで広がり、当事者のアウディとインフィニティがweiboでお互いに対して事件のユーモアなコメントを発表し、さらにこの話題を盛り上げた。

他の自動車メーカーもこの事故に便乗して、「私たちにも1個広告を投入してくれないか」と冗談を交えた投稿をし、自身の宣伝に繋げた。

まとめ

この10大ニュースの中で最も目立ったのが異なる業界のブランド同士のコラボである。選出した事例以外にも成功例が複数存在する。しかし同時にブランドの属性の考慮が不十分など、コラボが低俗になってしまった失敗例も存在する。コラボする相手ブランドとの相性を分析し、しっかりと戦略や施策を行うことが重要であるようだ。

以上の10大事例が多大なマーケティング効果を作り出したのはある意味偶然の重なりによる要因と人による計画と施策的要因の一致だ。その計画と施策を学びながら、突発的な事件や不利な要素を逆手に取り、会社のマーケティングに繋げる方法も参考にできる。

 

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