新型コロナウイルスが中国経済に与えた影響は大きい。様々な業界の収益大幅減少、小規模企業が相次いだ倒産。
中国政府が全国の旅行会社に団体旅行サービスの中止通告、国民に自宅待機、関連消費の急減、例年では繁忙期であるこの時期の旅行会社は顧客のキャンセルが相次いだ。中国旅行業界が十数年来最大のピンチに直面している。
新型コロナで打撃を受けた中国旅行業界の現状
▲2014~2019年中国旅行業界の収益(中国旅行部門のデータに基づきチャイトピ!作成)
成長が続けていた中国旅行市場の2019年の旅行収益は6.6兆元にのぼった。さらに春節休みは中国旅行の最盛期であるため、2019年春節時期の旅行収入は5140億元、旅行人数は述べ4億1000万人を記録した。
中国オンライン旅行最大手の「Ctrip(携程)」が新型コロナ発生前に、2020春節の旅行人数は4億5000万人だと予測し、中国旅行市場のさらなる成長に期待が寄せられていたが、新型コロナウイルスが全ての期待を打ち破る結果となった。
中国旅行研究院は新型ウイルスの影響により、今年Q1の旅客数は前年比56%減少、旅行収益は前年比69%減少と予測している。
悲鳴をあげる旅行業界に対し、中国政府はサービスの保証金を返還するなど支援策を打ち出したが、全体の状況が改善できた訳ではない。
アリババが支援している旅行会社・「百程(baicheng)」は2月29日に倒産清算を行い、新型コロナで倒産した1社目の旅行会社となった。
Ctripの会長である梁建章も今年の第1四半期が会社設立以来最も損失を生んだ四半期であると明らかにし、資金状況を改善するため、旅行サービスの予約販売を行うと発表した。消費者に6~2割引で旅行商品を購入してもらい、疫病終息後に利用できる仕様である。
さらに梁建章は業界が回復するまで自分の給与をゼロにすると宣言した。他の会社の一部の管理職の方々も自ら給料を半分にするなど困難な時期をみんなで乗り越える姿勢を示した。
新型コロナ終息後、旅行需要が急増するのか
長期間の自宅待機を余儀なくされた人々の消費意欲がウイルス終息後に爆発的に増加し、旅行需要が急増する可能性は極めて高い。Q1の収益が大幅に下落する旅行業界にとって5月のGW(中国の労働節連休)と10月の国慶節の旅行ピークは大幅な挽回ができるチャンスだろう。
▲馬蜂窝上の観光地ライブ配信
「馬蜂窝(Mafengwo)」などの旅行会社は各地の観光スポットと連携し、現場の様子をライブ配信で伝える「オンライン旅行」サービスを展開した。このサービスで得た視聴者らがウイルス終息後、顧客になることは期待できる。
実際に17年前に流行したSARSの際は、ウイルスが終息した7月にCtrip上の航空便の取引数が前年より200%、先月より82%急増した。さらに同年10月の国慶節休みも好調を見せ、年間収益・前年比73%増加を実現したのだ。そしてCtripは同年12月にナスダックで上場を果たした。
2003年のSARSはCtripにとって災難でありながら、大きなチャンスでもあったと言えるだろう。
まとめ:終息後の一時的成長は期待できるが、全体的損失は不可避
中国国内では最近湖北省以外の地域の患者数は減っており、街に出る人も増えており、企業の業務再開も順調に進んでいる様子である。
Ctripが発表したデータによると、中国本土の50以上の都市の旅行指数が回復の兆しを見せているようだ。さらに300以上の観光地が営業を再開しており、2月19日~25日の期間でのCtrip上のチケット取引数は毎日100%増加し伸び続けていた。
旅行業界が回復に向かっているように見えるが、今年全体の収益が減少する事に変わりはない。
さらに中国国内のみならず、海外での感染が拡大し続けている今、海外旅行関連サービスが重要な利益となっている中国旅行会社はまだまだ暗雲が漂う。
中小企業は生き残るための苦戦が続いている。Ctripなどの大手企業にとっても、5月のGWや10月の国慶節は今年の損失の一部を埋めてくれるにしか過ぎない、今年が最も困難な1年になるのは確かだろう。
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