アリペイがバージョンアップ、トップページに生活関連サービスの入り口設置
アリペイが3月10日、サービス開始から15年来最も重大なバージョンアップを行った。
具体的にはロゴを元の薄い青色から濃い青色に、スローガンを「pay with Alipay」から「Live @Alipay」に変更した。
トップページにある基本の決済機能はそのまま保持しそれに加えるように、デリバリーサービス「eleme(餓了麼)」、オンライン旅行サービス「Fliggy(飛猪)」、映画チケット販売「淘票票」などのアリババ傘下の生活関連サービスへの入り口を目立つところに設置した。
▲以前のアリペイ画面(左)と更新後の画面(右)
アリペイを運営する「アントフィナンシャル」のCEO・胡晓明は、今後3年間アリペイはサービス関連の4000万企業のデジタル化に協力する目標を発表した。
アリババがアリペイを生活関連サービスと融合させることにより、アリペイを単なる決済ツールから生活関連サービスのプラットフォームに転換させるつもりなのが見て分かる。
テンセントを打ち勝つ為に、機能を豊富化させるアリババ
2004年にアリババグループから独立したアリペイは中国のモバイル決済分野で独走し、中国最大のモバイル決済プラットフォームにまで成長した。
しかし昔からのライバルであるテンセントが国民チャットアプリ「wechat」に決済機能wechat payを追加し、2014年には年越し番組「春晩」と協力し、電子ホンバオ(お年玉)でたくさんの利用者を獲得した。この作戦はモバイル決済市場のアリババ独走の局面を一気に覆した。その後もwechat payはアリペイを猛追し、市場シェアを拡大し続けた。
2019年Q3ではアリペイが53%、wechat payを含めたテンセントのモバイル決済サービスが39%のシェアを占め、中国モバイル決済市場2強の局面が固まった。
▲2019年Q3中国のモバイル決済市場シェア(出典:Analysys易観)
現在wechatはチャットアプリから買い物、決済、エンタメなど様々な生活関連サービスのプラットフォームになっている。wechatが1つがあれば、他のアプリをDLする必要がないという利便性は、国民の生活に浸透する事に一躍を担った。wechatはテンセント最大の武器となったのだ。
その一方、wechatに比べると、アリペイに対する”決済ツール”というイメージは根強く、支払いの際のみ利用するユーザーが多い。これ以上wechat payにシェアを奪われたくないアリペイは自身の機能の多様化に取り組んでいる。
現地生活関連サービスに注力、デリバリー最大手の美団と真向勝負
アリペイのバージョンアップはelemeのユーザー数増加の狙いがある。
新型コロナウイルスの流行で中国の現地生活サービスの需要が急増し、新鮮な野菜やお肉などの食料品を注文できるアプリらが活躍している。大ダメージを受けた飲食業界はデリバリーを利用し、受けた損失を埋めようと必死である。elemeとテンセント陣営の美団の戦いはますます激化している。
アリババは美団が創業した翌年(2011年)に投資し、同社の第2位の株主となったが、その後両社の関係が悪化し、2016年アリババは、所持している大半の美団株を売却した。アリババが撤退した後テンセントが美団に出資し美団の筆頭株主になった。
美団を失ったアリババはeleme買収を通してデリバリーサービス業界での勢力拡大を図っている。
2008年に創業したelemeは中国デリバリー業界の先駆者と言える。さらに2017年elemeがバイドゥ傘下のデリバリーサービスを買収し、5割以上の市場シェアを占め、一時業界のトップとなった。2018年アリババがelemeを買収し、傘下の美食口コミサイト「口碑」と統合し、地域密着型の生活サービス会社の設立を発表した。
▲2017年中国デリバリー市場では、elemeがバイドゥデリバリーを買収し一時業界のトップだった(出典:iiMedia Research)
しかしアリババに買収されたelemeの発展は今ひとつのようだ。市場シェアも後発の美団に追い越され、2019年Q3では美団が65%のシェアを占め、大差をつけられた。
デリバリー分野でelemeが失った市場シェアを取り戻し、さらにアリペイの機能を豊富化させるためには、アリペイを現地生活サービスと融合させるのが1番効率的だろう。
しかし wechat自身、最も利用率の高いSNSアプリであったからこそ、様々なサービスを一本化する事に成功した一方、本来決済アプリであったアリペイの現地生活に寄り添ったプラットフォーム化が好調に進められるかは不明確である。
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