SNSでKOLデビューを発表し、話題を呼んだ罗永浩

スマホメーカー锤子科技(Smartisan)の創業者である罗永浩(Luo Yonghao)は3月19日にweiboでライブコマースのKOL(インフルエンサー)デビュー計画を宣言し、提携企業を探していると発表。この発表を受けデジタル製品メーカーを含めた1000あまりの企業が彼に提携の相談を持ちかけた。

そしてタオバオやKwaiなどのライブ配信プラットフォームらが彼と独占契約の交渉していると報道された。その後3月26日、罗永浩はTikTokと独占契約を達成。
デビュー宣言からTikTokとの契約達成までわずか1週間しか経っていない。
果たして罗永浩はKOLに適任なのか?
EC化に対して慎重な対策をとってきたTikTokがなぜ罗永浩と契約したのか?

▲罗永浩のTikTok アカウント、現時点のフォロワーは約196万人(チャイトピ!よりキャプチャー)

幾多の創業失敗を経験するも、業界で知名度を持つ罗永浩

罗永浩は英語塾の教師経歴があり、ユーモアなスピーチによりネットで人気を集めた。
2012年にスマホ開発の锤子科技(Smartisan)を創業し、自身の魅力的な演説を生かした製品の発表会を行い、锤子科技の知名度を広げた。しかしスマホの販売台数は芳しくなく、ほぼ同時期に創業したシャオミに大きな差をつけられ、2019年4月锤子科技はバイトダンスに売却された。
その後罗永浩はソーシャルアプリや電子タバコなどの分野で起業を試みたが、どれも順調に進めることができず、大きな借金を抱えた。唯一残された知名度の武器をライブコマースに生かそうとしてもおかしくはないだろう。

タオバオの有名なライブ配信KOL・李佳琦のように口紅分野トップのKOLになるのは難しいだろうが、他の分野でトップになる自信はあると罗永浩は豪語している。
彼が持つスマホ業界の経験をデジタル製品のカテゴリーで活用することが期待されるが、高い影響力を持つKOLになれる人はわずか少数である。
中国のトップクラスのKOL・李佳琦や薇娅は売上実績が業界トップに上がる以前、買い物の案内やタオバオでの店舗経営などの経験を積み重ね、ライブコマース市場拡大のチャンスを掴み、ここまで成長してきた。

だが、人気があるからといって売上に繋げるとは限らない。実際KOLのような商品販売を行うタレントも多く存在するが、ライブ配信で紹介した商品が1つも売れなかったケースもある。
そのため実際罗永浩のKOLデビューを懸念する声も上がっているのだ。

ライブコマースに対し慎重なTikTokの思惑

 2019年の中国ライブコマース市場規模は4000億元を超え、2020年にはさらなる拡大が予想されている。タオバオや拼多多などのECプラットフォームがライブコマースに注力し、ライブ配信経由のEC店舗売上が急速に増えている。
また、ショートムービー+ライブコマースは、現在中国で流行っている定番のマーケティング手法であり、売上の増加という目に見える効果を狙い幅広く活用されている。

TikTokの中国国内のライバルであるKwai(快手)はライブコマースを通してマネタイズを積極的に行っている。自社ECプラットフォームまで立ち上げ、EC分野へ野心は明らかだ。
Kwaiと比べて、TikTokのECに対する積極性は比較的控えめである。TikTokはタオバオと協業しライブコマースを展開しているが、コンテンツを重要視するTikTokはEC機能の管理と制限を強化している。

コンテンツ製作者に良いマネタイズ環境を作るにはEC機能は不可欠であるが、TikTokのEC機能は最終的にユーザーをタオバオへ誘導するためのモノであるため、TikTokで人気を集めた配信者が最終的にタオバオに流れてしまうリスクがある。

コンテンツ製作とEC化のバランスをとることがTikTokの課題なのだ。
TikTokが罗永浩の知名度と話題性をどう活用していくか、KOLとして罗永浩がどこまで突き進めるか注目だ。

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