全くの素人のKOLデビューVSベテランKOLのロケット販売、想像を超えた中国ライブコマース
ここ最近、スマホメーカー锤子科技(Smartisan)の創業者である羅永浩(Luo Yonghao)がTik TokでKOL(インフルエンサー)デビューを果たし、初めてのライブ配信による売り上げが1億元を超え、合計視聴者数は4800万人を達した。Tik Tokのライブコマースの記録を塗り替えたのだ。
興味深いのはその同日に、タオバオのライブ配信プラットフォームの看板インフルエンサーである、viya(薇娅)が商用ロケットを販売したことだ。ライブコマースによるロケットの実物販売は前代未聞であり、中国ビジネスに関わる日本人の間でも拡散され話題を呼び、不思議に感じた人も多くいた。
▲羅永浩とviyaのライブ配信の様子
(チャイトピ!によるキャプチャー)
羅永浩は幾度も会社を起業し、IT業界では知らない人はいないといっても過言ではないほどの有名人であったが、企業に失敗し莫大な借金を抱えた彼のKOLデビューに疑問視する声も高まっていた。
ライブコマースの主なユーザーは若い女性であり、KOLのイメージとかけ離れた羅永浩が物を売ることはかなり難しく成功する可能性が低いとの意見が多かった。彼が初舞台で驚きの売り上げをあげたことは誰もが予想しなかった。
そして、彼のデビュー戦に躍り出る形でviyaはロケット販売に挑んだ。約800人がロケットの前金を支払ったのだ。
この2人が見せた中国ライブコマースの熱気はなにを意味するのか?
Tik Tokとタオバオがこの渦中でどのような役割を成すのだろうか?
協業関係を結んだTik Tokとタオバオが対決するのか?
中国EC市場では、ライブコマースのプレーヤーはたくさん存在し、今も尚増え続けている。ライブコマースを展開しているプラットフォームの歴史を辿ると2016年にタオバオがライブコマース事業を始め、業界の先手を打ち、ショートムービーの快手(kwai)や越境ECの小紅書が後を追う形で開始している。
特にタオバオと快手がKOLの育成に力を注ぎ、トップクラスのKOLが誕生した。中国で最も売上の高いKOLがviya、李佳琦、辛巴であり、上記2つのプラットフォームで生まれた。
それと比べると、Tik Tokにはトップクラスに入るKOLが1人もいない状況だ。
羅永浩自身が持つ知名度がTik Tokにとって大になる即戦力だと言えるだろう。viya、李佳琦のようなファッション、コスメ系出身者が一般的になっているのとは異なり、IT系出身者の羅永浩は今までと違うカテゴリーで市場開拓する可能性が高い。実際今回のライブ配信で販売された商品は、シャオミの最新モデルやスマートレコーダー、掃除ロボットなどデジタル製品が多いのが特徴である。
フォロワーの性別の割合からみると、男性フォロワーが全体の81%を占める羅永浩が男性ユーザーの購買力を引き出すことが期待できるだろう。
▲viya、李佳琦、羅永浩のフォロワー性別割合
(miaozhenのデータに基づきチャイトピ!作成)
2018年Tik Tokがタオバオと協業関係を結んだ。ユーザーがTik Tokで動画を閲覧した際、気に入った商品の画面にあるリンクを押すとタオバオの店舗へ飛ぶ機能をリリースしたのだ。これはTik Tokとタオバオが同じ陣営であると認識できる。
しかしTik TokがEC分野での勢力拡大を望む限り、必ずアリババと利益衝突する日が来るだろう。
実際に今回羅永浩が販売した商品の半分が今まで同様の方法で、タオバオの店舗とリンクで繋げたが、残りの半分はTik Tok自身のECプラットフォーム「抖音小店」と繋ぐ形をとっている。今後Tik Tokが「抖音小店」の発展に注力し、タオバオへのユーザー導入を最終的に停止する可能性があるのだ。
一方、タオバオもTik Tokの作戦をただ指をくわえて見てるわけにはいかないだろう。viyaのロケット販売はロケットを売る事よりも“ロケット販売”という話題性を狙ったマーケティング企画のように見える。このロケット販売の件によりタオバオのライブコマースには“限界がない”というブランドイメージが生まれた。
羅永浩の売上成績が果たして継続するのか
Tik Tokは羅永浩を通して話題作りに成功した。しかし、初生配信で獲得した高い売上が今後も継続できるかはまた別の問題である。
羅永浩の初生配信の成功はTik Tokの強力な支援のおかげでもあるのだ。配信当日、Tik Tokを開くと羅永浩のライブ配信予告が表示された。その高い露出率がたくさんの視聴者を集客したのだ。さらに全く経験のない羅永浩に助手の男性が付き添い、配信中に商品紹介の補足をしたり補助の役割を担っていた。Tik Tokにとって、この初生配信は失敗が許せなかったのだろう。
しかし今後Tik Tokのリソース支援がなくなった場合、羅永浩がどこまで歩み続けることができるのだろうか?
初生配信で高い売上を達成した一方、ネット上では羅永浩の配信が「つまらない」、「放送事故」などといった批判のコメントも多くみられた。viya、李佳琦の効率の良い慣れた配信と比べ、素人の羅永浩の商品紹介はペースが遅く、ブランド名を読み間違えるなどの問題も続出していた。配信開始およそ30分で視聴者数はピークを達し、その後どんどん減っていった。
熱気があふれる中国のライブコマース市場に新規参入が相次ぐ中、Tik Tokと羅永浩の初戦は成功に終わったが、今後残された課題をどう解決していくか注目である。
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