テンセントが虎牙の筆頭株主に、同ゲーム実況配信・斗魚と合併か
中国ゲーム開発最大手のテンセントが3月4日にゲーム実況配信サービス「虎牙(Huya)」の株を総額2億6260万ドル買い取った。50.1%の虎牙株を所持し筆頭株主となり、ゲーム実況市場への勢力をさらに強めた。
熱気が溢れる中国のライブ配信市場の中でも、ゲーム実況は代表的な人気ジャンルの1つだ。2018年中国ゲーム実況市場規模は132億元にものぼり、さらに2020年には230億元を突破すると予測された。
ゲーム実況を展開するプラットフォームが多く存在する中、激しい市場競争を勝ち抜いたのが「虎牙」と「斗魚(Douyu)」の2社である。2019年Q4では斗魚のMAUは約1億6600万人、虎牙のMAUは約1億5000万人であった。互いの人気配信者をスカウトし合うなど、トップ2社の競争は日々白熱化している。
▲中国ゲーム実況市場規模(出典:iResearch)
テンセントは出資を通してゲーム実況業界においての勢力を拡大しており、現在の名だたるゲーム実況プラットフォームのほとんどがテンセントと関わりを持ちテンセント陣営に属する。以前から斗魚の筆頭株主であったテンセントは、今回の虎牙への増資により虎牙の筆頭株主にもなった。競合2社の合併を推進し、業界を統合させるつもりだと見てとれる。
▲虎牙(左)と斗魚(右)のアプリ画面
(チャイトピ!によりキャプチャー)
テンセントの支援を得る後発のゲーム実況参入者ら
テンセントは多くの人気ゲームを誕生させている。
現在中国で最もDL数の多い超人気モバイルゲーム「王者荣耀(日本版:伝説対決)」も、「和平精英(Game For Peace)」もテンセント傘下のサービスだ。この両ゲームはゲーム実況プラットフォームで最も多く実況配信されたゲームでもある。
プラットフォームらが著作権を所持するテンセントとの関係がより親密になっていくのは当然の事だろう。
虎牙と斗魚のようなゲーム実況に特化したプラットフォームの他に、アニメやエンタメコンテンツで若者から高い支持を得ている「bilibili」やショート動画アプリ「快手(kwai)」も近年ゲーム実況分野での事業拡大を図っている。
bilibiliは昨年、虎牙と斗魚を打ち負かし、高価で世界的にも人気のあるゲーム「League of Legends」の競技試合の中国での放送権を手に入れた。
快手もゲーム実況に注力し、2019年のゲームジャンルのDAUは5100万人を超えた。
この2社もテンセントの支援を得ている。
bilibiliの最新報告書によると、テンセントは会長の次に並ぶ第2位の株主であるのだ。快手の資金調達にもテンセントは何度か参加しており、株の所持率をどんどん増やしてきた。テンセントはゲーム実況各社への影響力を強化し、ゆくゆく業界統合を図るつもりだ。
バイトダンスの進撃を阻むテンセントの作戦
独特なアルゴリズムを元にしたショート動画「Tik Tok」やニュース配信「今日頭条」の成功により開発会社である「バイトダンス」が中国大手IT企業らにとって大いなる脅威である。いずれ「バイドゥ」に取って代わり、次のBATの一員に加わるのではと期待されるバイドダンスも近年ゲーム開発へ注力する姿勢を見せている。
テンセントもバイトダンスの勢いを恐れ、wechatでのバイトダンス系サービスの共有リンクを遮断するなど明らかな敵対措置をとっており、バイトダンスの動画サイト「西瓜視頻」はテンセントの人気ゲームの実況配信がアップしたことで、テンセントに起訴され、著作権を所持していないバイトダンスが敗訴し、関連配信を停止にした。
そんな事態が起こってもテンセントと真っ向から対決する姿勢を見せているバイトダンスは1000人超のゲーム事業部門を立ち上げており、ゲーム開発を本格的に開始している。テンセントが虎牙などゲーム関連会社への勢力を強化しているのはバイトダンスの進撃を阻むためでもあるのだ。