テスラが天猫に出店、中国市場におけるローカライズ化加速
米EV大手のテスラが4月16日に中国最大のECプラットフォーム天猫(Tmall)においての公式店舗の出店を発表した。中国本土プラットフォーム上での出店はこれが初めてである。
同店舗は現在、車の部品である鍵や装飾パーツなどの販売及びModelS、Model3などの試乗予約サービスを提供している。
▲テスラの天猫店舗(チャイトピ!よりキャプチャー)
現在テスラは中国市場開拓に注力している。上海製造工場の建設から正式納車までをわずか1年で完成させた。
今年3月の中国電気自動車販売台数ランキングでは、テスラの販売台数は1万台を超えBYDなど本土メーカーを抜きトップに立った。新型コロナで人々の外出が減少し需要が急激に減ったにも関わらず、テスラは販売台数を増加させている。中国市場シェアの3割を占めるほどの勢いである。
上海工場の正式稼働により、テスラ中国事業は自動車の製造からアフターサービスまでの全工程をカバーした。今回天猫での出店を踏まえて、ローカライズ化を加速させる狙いが見て取れる。
コロナの影響で中国での国際ブランドのEC出店相次ぐ
新型コロナの感染拡大を受け、リアル店舗が大きな損失を被っている今、企業達はオンラインへのマーケティング転換を展開している。国際的なブランドによる中国ECプラットフォームへの出店が相次いでいるのだ。
3月以降、天猫で出店した有名ブランドとしてIKEA、Prada、Giorgio Armaniなどの有名企業が名を連ねる。EC店舗の展開のみならず、BMWら自動車メーカーは今中国で急成長しているライブコマースの運用も進め、すでにライブ配信で車の宣伝と販売を行った。
テスラも天猫に出店すると同時に、アリババのライブ配信プラットフォームでのライブコマース運用を予告した。
自動車市場のEC・ライブコマースによる販売現状と課題
中国はECがかなり発展しており、ネット上を探せば何でも手に入れることができる。不動産や自動車も例外ではない。
しかし自動車業界では、リアル店舗での試乗などが最終的な購入に大きく影響するため、100パーセントのネット販売は難しい。それに気づいた中国の自動車専門ECサイトは近年、リアル店舗での販売を拡大しており、オンラインとオフラインの融合を推進している。
2019年下半期からライブコマースを通しての自動車販売が現れ始めた。タオバオのトップKOLであるviya(薇娅)がライブ配信で車を販売し、視聴者数は220万超え、TikTok上の自動車メーカーのアカウントは5000個にものぼる。
しかし販売データを見てみると、ライブ配信の視聴者は伸びているが、最も重要な販売台数は芳しくない。
ライブコマースを通して一部の商品が驚異的な売上を作り上げているが、自動車という高額商品に関しては、詳細情報を見て慎重に選ぶ消費者が多い中、ライブ配信を通して購入する者は少ないのだ。
何万人もの視聴者を獲得したにもかかわらず、売上がゼロに終わる自動車ライブ配信が多く存在する。中国コスメ分野で有名なKOL・李佳琦がCadillacの最新モデルのオンライン発表会をライブ配信したが、1台も売れなかった。
自動車のライブ配信において配信者への関連商品に対する知識の要求は極めて高い、最高5分間で1万5000個もの口紅を売った李佳琦でも自動車を売ることは困難であった。
天猫のオンライン店舗で部品販売と試乗予約サービスのみ提供しているテスラは、この店舗を通してユーザーにデジタル化体験を提供していくと表明した。自動車販売を行っていない点を踏まえて、テスラもネット上販売の困難さを理解しているのだろう。天猫店舗やライブコマースの展開がすぐに売上へ貢献するのは難しいが、消費者の認知度を上げて、ユーザー体験を向上させることは最終的に会社のマーケティングに繋げることができる。