新型コロナウイルスは中国社会に大きな打撃を与え、企業の生産活動は停滞し、経済発展は失速した。中国政府の正式発表によると、1~3月のGDP(国内総生産)は去年と比べてマイナス6.8%と、四半期ごとのデータが公表され始めて1992年以来初のマイナスを記録した。
EC業界においては、リアル店舗の客足は急激に減り、企業のオンラインへルート転換傾向が強まった。
EC業界はコロナで最も利益を得た業界だと言われているが、生産と宅配サービスの停滞による在庫切れや出荷できないなどのプレッシャーをEC企業は抱えている。また、マスクや食品など一部商品の売上が高騰したが、高級品や衣類など商品を取り扱うEC企業は大きな損失を被った。
世界各地で感染拡大が続いているが、中国では新規感染者が減少しつつあり、アフターコロナの状態が広がっている。そんな今、中国EC業界はどうなっているのか、最新データを見てみよう。
中国国家統計局:Q1有形商品のEC売上・前年比5.9%増
中国国家統計局が発表した3月の経済関連データによると社会的な消費は少し回復を見せている。社会消費財小売総額は26450億元で前年同期より15.8%減少であるが、下げ幅は1~2月より4.7ポイント減少している。
▲2017~2019年Q1有形商品のEC売上と伸び率
(国家統計局のデータに基づきチャイトピ!作成)
ECにおいて、1~3月の有形商品(形のない物やデジタル商品以外)のEC売上は18536億元で前年比5.9%も増加した。中国EC業界はコロナ感染拡大の厳しい環境下でも成長を維持した。一方、伸び率の急速的鈍化を見ると、少なからず一定のコロナの影響をEC業界も受けていることがわかる。
また、生活必需品のEC売上の成長も著しい。食品の売上は32.7%増加し、日用品は10%増加した。一方、アパレルのEC売上は15.1%減少した。
EC春の商戦「婦人節」セールが好調
中国EC商戦の「婦人節」セールが3月8日に行われた。
中国社会が新型コロナから回復しつつあるこの時期に開催した「婦人節」セールは中国のEC業界の現状が大きく反映されるイベントでもあったため多くの注目を集めた。
アリババはこのセールイベントをダブル11レベルに創り上げるつもりで10億元の補助金を投入した。コロナの影響で過剰在庫を抱える店舗らもこのセールに対して積極的で、割引率を高く設定した。アリババによると、「婦人節」セールに参加した企業数は昨年の2倍にものぼり、商品数も昨年より60%増加した。最終の売上も去年を超える結果となった。
チャイトピ!が入手した大手日系コスメブランド5社(社名及び実数は非公開)の中国EC店舗売上を見てみると、1~2月の売上は落ち込んだが、3月は回復傾向が強い。
▲某日系コスメブランド5社の中国EC売上推移(チャイトピ!より作成)
コロナの影響を受け、2月にアリババはQ1収益の大幅減少の予測を出したが、3月以降のEC業界の回復の様子から、中国証券会社の中信証券はアリババのQ1業績は「以前の予測より上」と分析を出した。
また、新型コロナが中国EC業界で以前から活用されていたライブコマースの普及を促進させた。オフラインのマーケティング活動が停止したことにより、ライブコマース運用を始めた企業が増えたのだ。さらにアリババは傘下のライブ配信サービス「ラオバオ直播」の利用制限を解除し、誰でも無料で利用できるようした。2月の「タオバオ直播」の新規登録企業数は100万社にも及び、1月をはるかに上回る719%急増した。コロナ後の中国EC業界は、ライブコマースがさらに普及していくことが予想される。
宅配業界:3月の宅配件数が急上昇
ECの発展を支える物流が新型コロナで停滞し、在庫があっても出荷できずにいたEC店舗が多く存在していた。そこで京東は自社物流事業の優位性を発揮した。
競合他社のほとんどがQ1の業績に対してマイナス成長の予測を出した中、京東だけが10%増との予測を出した。
京東と異なり、タオバオや天猫の店舗は「韵達」、「圆通」、「申通」など宅配企業に運送業務を依頼するため、宅配サービスの停滞は店舗の売上に大きな影響を与えた。
▲中国宅配業界の運送件数変化(出典:中国国家郵便局)
3月に入り、宅配業者の全面的営業が再開し、EC企業の出荷作業も正常に元の軌道にのった。中国国家郵便局によると、鉄道や航空などの運送サービスも復旧しており、3月の全国運送企業の運送件数は58億8000件で前年より23%と大幅に増加した。
まとめ
新型コロナウイルスによりリアル店舗だけでなく、EC業界も一定のマイナスな影響を受けた。しかし中国経済全体がマイナス成長を記録した中、EC業界(有形商品EC)は僅かながらもプラス成長を実現させた。
企業の再稼働が進んでいる中、物流やサプライチェーンも元に戻りつつある。コロナで多大な損失を被ったリアル店舗もこれを機にオンラインへの転換を積極的に行っており、中国ECの長期的発展が期待できる。