weiboで1170万人のフォロワーを持つ中国で有名なKOL(インフルエンサー)・張大奕は近頃、「天猫」の総裁である蒋凡との不倫疑惑がネットで一時話題となり、張が所属する会社「Ruhnn(如涵)」の株価が暴落した。
張大奕は以前中国の超人気KOLとして頻繁にメディアに取り上げられたが、近年は注目が弱まり鳴かず飛ばずであった。今回のようなマイナスな印象を与えるニュースで再び話題になった事で、張大奕がいつの間にか中国トップKOLの座を失っていたことに世間を気づかせてしまった。
薇娅や李佳琦ら後発のKOLに取って代わられた張大奕
モデル出身の張大奕はweiboで獲得したファンをタオバオのアパレル店舗へ誘導することに成功し、2016年の年収は中国の有名女優・范冰冰を超えたと報じられる程であった。
しかし、2017年から薇娅(viya)や李佳琦(Austin)など後発のKOLがライブコマースの追い風にのり、数多くの配信者の中から勝ち上がり、トップクラスのライバーとなった。2019年からライブコマースを始めた張大奕が遅れをとった。
2019年のバイドゥ検索指数では張大奕は薇娅と李佳琦に大きな差をつけられた。
▲2019年張大奕、薇娅、李佳琦のバイドゥ検索指数変化
(張大奕:青、李佳琦:緑、薇娅:オレンジ)
中国では1~2年間で人気を失ってしまう寿命の短いKOLが大勢いる。
2016年オリジナルムービを投稿し、ネットで多くの視聴者を獲得した「papi酱」も瞬く間に世間から消えた。他にもtiktokで歌を歌い、人気を急上昇させた「莉哥」もライブ配信での違法行為が摘発され、KOLキャリアを絶つなど、長寿KOLは限りなく少ないのだ。
KOLがもたらす売上格差、困難なトップKOL育成
KOLの商業価値に注目し、中国ではKOL育成を展開する専門的なMCN(マルチチャンネルネットワーク)会社が現れた。2019年の中国MCN会社の数が6000社にものぼる。薇娅、李佳琦を含め、weiboで田舎の食生活動画を投稿し海外でも評価された人気KOL・李子柒などの有名KOLすべてがMCN企業と契約している。
トップKOLの成功には彼ら自身の努力はもちろん、このインターネット時代に存在する未知たる偶然的要素も含まれる。MCN会社にとってトップKOLの育成は困難を極める。中国有数KOLの彼らが契約しているMCN会社のリストを見てみると、トップKOLらが所属するMCN会社はみんな異なり、1つの会社で薇娅や李佳琦並みのKOLを大勢輩出することはほぼ不可能なのだ。
▲中国有名なKOLと彼らが契約しているMCN会社(チャイトピ!作成)
また、トップKOLと下位KOLの影響力および売上の格差は非常に大きい。薇娅、李佳琦2人のタオバオライブ配信は全体売上の50%を占める。残りの50%を数多くの下位KOLが取り合っている。
張大奕が所属する会社「Ruhnn」の2019会計年度(2018年3月31日~2019年3月31日)決算を見てみると、最も影響力のある上位KOLは僅か3人ながら、この3人がもたらす売上は全体の53%以上を占める。
▲Ruhnn傘下のKOL年間売上(決算資料に基づきチャイトピ!作成)
KOLを育成し、ECや広告分野で活用させ収益を獲得する「Ruhnn」は2019年米ナスダックで上場を果たした。しかしわずか数人しかいない上位KOLが半分以上の売上を貢献している「Ruhnn」の経営リスクがかなり高いと懸念されており、株価は下落する一方だ。
「Ruhnn」だけではなく、前出のPapi酱は人気がうなぎ上りであった2016年にMCN会社「papitube」を立ち上げ、KOLの育成事業を始めたが今だに大した成果を上げれていない。現在「papitube」で有名なKOLを挙げようとすると「papi酱」しか挙がらないほどだ状態だ。
まとめ
中国KOLが活躍する場はweiboのようなSNSプラットフォームからタオバオのライブ配信チャンネルやショート動画・tiktokなど新興プラットフォームに変わりつつある。トップKOLの座は激しい競争下で日々変動する。李佳琦のような大物KOL でさえも人気を失うことを恐れ、過去1年間で389回のライブ配信を行い、ほぼ年中無休で毎日ライブ配信を行った。
1人1人のKOLがいずれ話題の中心から消えていってしまうだろう、個人の人気と影響力を商業化するビジネスが続く限り、新しいKOLが誕生し続けるのだ。
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