アリババがスマホ販売代理店大手「爱施德」と提携、家電市場での勢力強化

4月26日、アリババは中国スマホ販売代理店大手の「爱施德(aisidi)」と提携し、同社5%の株式を取得する計画を公開した。また、両社は合資会社を設立し、コンピューター、通信機器、電子製品の小売や代理販売を展開する。この発表を受け「爱施德」の株価は高騰した。

「爱施德」は10万店舗を構える中国最大のスマホ販売代理チェーンである。1998年深センで設立し、2010年に深セン証券取引所で上場している。同社はiphoneやサムスン、ファーウェイのサブブランドhonorなどの有名なスマホブランドの代理販売権を所有している。

家電など電化製品のEC販売を展開し、中国第2位のECプラットフォームに成長した京東(JD.com)と比べ、アリババは電化製品カテゴリーの優位性に欠ける。そんなアリババは量販店と提携を組み電化製品方面への勢力を拡大している。「爱施德」の他に、アリババは2015年に家電量販店最大手の「蘇寧(Suning)」とも提携しており、両者は互いに株式を所持している。

家電・電化製品市場のアリババ、京東、拼多多3勢力形成、ECとリアル販売の融合加速

近年中国EC大手と量販店の提携が相次いでいる。つい先日も地方市場を開拓し中国EC3位に上がった拼多多が家電量販大手の「GOME(国美)」との提携を発表した。拼多多はGOMEが発行する新株予約権付社債(転換社債)を引き受けた。将来的に新株予約権を全て行使した場合、拼多多は国美の株式の約5.6%を保有することになる。この提携により、GOME傘下で中国全土に6000超のネットワーク拠点を持つ「安迅物流」のサービスを拼多多の業者に提供し、拼多多はGOMEにビッグデータなどのサポートを提供する。

家電ECシェア1位の京東はリアル店舗の事業を拡大し、2019年4月家電量販シェア3位の「五星電器」に出資し、46%の株式を取得、さらに7月にスマホ販売代理店大手の「迪信通(D.Phone)」に出資し、9%の株式を取得した。

▲中国電化製品市場勢力図(チャイトピ作成)

中国の電化製品市場において、オンラインとオフラインの融合が加速している。

アリババ、京東、拼多多3社の競争も激化しており、オフライン市場への開拓も積極的に行なっている。リアル量販店もEC大手との提携により業績向上を図っているのだ。

家電市場では蘇寧は全チャネルでシェア1位、京東はECシェア1位

▲2019年中国家電市場シェア(全体)  (出典:中国家電研究院)

2019年中国家電市場全体の売上高は8032億元(約12兆7000億円)。そのうち蘇寧(Suning)が22.8%を占め、家電の全チャネル(EC+リアル店舗)で首位に立った。蘇寧は近年EC事業の発展に注力し、業績を伸ばしてきた。

そして京東(14.4%)、アリババのTmall(8.8%)、GOME(5.8%)、五星電器(1.2%)がそれぞれ2~5位にランクインしている。

▲2019年中国家電市場シェア(オンライン)  (出典:中国家電研究院)

オンラインの市場シェアを見てみると、京東が37.3%で首位である。蘇寧は30.6%で2位、Tmallは22.9%で3位、GOMEは1.4%で4位。

 ▲2019年中国家電市場シェア(オフライン)  (出典:中国家電研究院)

オフラインの市場シェアでは蘇寧が17.9%で1位、GOMEは8.5%で2位、五星電器は2%で3位。

近年中国家電市場の成長は鈍化している。コロナの影響に加え2020年の家電市場規模は前年より1.2%減少すると予測されているが、EC売上の割合は拡大するだろう。その上アリババなどのECプラットフォームと従来の量販店との提携により、家電市場のEC化はますます加速していくことだ。