コロナにより中国のテレワーク需要爆発的成長

新型コロナ禍で世界経済は大きな打撃を受けている。リストラ、倒産などが相次ぎ、製造業からサービス業までもの様々な業界が悲鳴をあげている。一方、コロナにより前向きな影響を受けた企業も存在する。マスク生産企業は言うまでもないが、テレワークの需要急増により関連サービスを提供するIT企業も前向きな影響を受けた。

リサーチ会社iiMedia Researchによると、2月中旬までに3億人あまりの中国人がテレワークを通して仕事を行なっていた。
アリババとテンセントをはじめとする中国IT大手はテレワーク需要で関連サービスの開発や機能追加を行った。現在中国オフィスアプリの中で、アリババのDingTalkとテンセントのTencent Meetingが上位を独占している。

 アリババが2014年にリリースしたDingTalk(釘釘)はコロナを機に多くの注目を浴びた。中国3月のアプリDL数ランキングでは首位に上り、オフィスツールとして異例の快挙である。DingTalkは需要拡大の恩恵を受け、サーバー容量拡大の他に、従業員の“毎日の健康報告”機能などの追加も行った。

また、中国ソーシャル最大手のテンセントももちろんこの機会を見逃すわけがない。テンセントが提供している国民チャットWeChatは以前から仕事用にも利用されていたが、テレワーク向けのより専門的なアプリの開発が必要だと考えたテンセントは2019年12月にビデオ会議専用アプリのTencent Meetingをリリースしていた。
そしてコロナを機に2ヶ月間でDAUは1000万を突破し、現在は緊急サーバー拡大を行い、300人の同時会議をサポートするサービスを無償で提供している。

テレワーク関連サービスまとめ

▲中国テレワーク関連サービスまとめ(チャイトピ!作成)

機能別にテレワーク関連サービスを見てみると、
「DingTalk」とテンセント提供の「wechat企業版」は企業むけに開発されており、チャット、文書共有など機能をそろえる総合的なオフィスツールである。他にも、ファーウェイが社内利用のために開発した総合アプリの「華為雲(welink)」も6月1日まで一般向けに提供される。

通信サービスにおいては、テンセントはビデオ会議アプリ「Tencent Meeting」の他に、メールサービスの「QQ邮箱」を以前から提供している。

オンラインドキュメント編集サービスでは、2015に創業した「石墨文档(shimo.im)」やネットイースの「有道雲筆記」、ソフト開発会社「KINGSOFT」傘下の「WPS」などが挙げられる。

クラウドサービスについては、バイドゥのクライドストレージサービスが人気だ。

検索数下落、コロナ収束後に残された定着の課題

コロナという特殊な時期の需要急増は中国テレワーク発展の起爆剤となった。テレワークにより企業の家賃負担は軽減され、従業員の通勤時間も省け仕事の効率が高まるなどのメリットもあり、コロナ収束後もテレワークの利用が続くという見方もある。

テレワークは以前からグローバル企業で利用されていたが、全面的な普及はまだ遠いようだ。ITやメディアなどの在宅でも仕事できる業界ではテレワークの浸透が高まりそうだが、製造業やサービス業などの業界での浸透は難しいだろう。

コロナを機にテレワークの利用率が一気に上がったものの、コロナ収束後は企業が通常の経営状態に戻り利用率が下がることが予想できる。実際に、バイドゥの検索指数を見てみても、DingTalkやTencent Meetingなどワードの検索数が2月にピークを迎え、その後は減り続けている。

▲DingTalkとTencent Meetingの検索数推移
(青:DingTalk  緑:Tencent Meeting)

チャットアプリ、オンラインドキュメント編集アプリを通して人々の仕事の一部がすでにオンラインへ移行した。しかし連絡、会議、顧客との商談、書類管理などすべての企業活動をオンラインへ移行することを補うサービスはまだ出ていない。

さらに、コロナでユーザーを増やしてきたZOOMは情報流出事件が起きており、世間のビデオ会議のセキュリティに懸念が高まった他に、ネットワークの不備による画質が悪いなど不具合問題が多発しており、コロナ収束後もテレワークが普及されるにはまだまだ課題が多いのだ。

 

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