中国はECの発展に伴い宅配便の業務量が増え続けている。2019年中国の宅配便の配達件数は630億件にものぼった。そして荷物を消費者の手元に届ける際の受取人不在による再配達の効率低下などの課題を解消するため配達ロッカーが導入された。

しかし近頃、中国では配達ロッカーの使用料金を巡り、消費者の中で非難の声が上がり始めた。

配達ロッカー最大手の豊巣が有料化を発表、消費者の批判殺到

先日中国配達ロッカーを提供する豊巣(HIVE BOX)が4月30日から預かり時間が12時間を超えた荷物に対して0.5元(約7.5円)の料金を受取人から取ることを発表した。そんな豊巣の有料化宣言はネットで大きな波紋を引き起こし、消費者の批判が集まった。この発表を受け上海で豊巣の利用を中止したマンションが複数存在する。

▲上海のとあるマンションの敷地に設置された豊巣配達ロッカー
(撮影:チャイトピ!)

中国では配達員が作業の効率を引き上げるため、受取人の同意なしで直接配達ロッカーに入れるケースが多発している。その上で今回の豊巣のロッカー使用有料化により、12時間を超えた場合に使用料金が発生し消費者が支払うことに対し、消費者の中で大きな反発が及んでいる。

その後豊巣は世論のプレッシャーを受け、12時間を18時間に延長し規定を緩和したが、利用の有料化には変わりない。

7割の市場シェアを占めても黒字化に悩む豊巣

豊巣は2015年に「SF express(順豊)」、「ZTO express(中通)」、「STO express (申通)」などの中国物流大手らによって創立され、その後配達ロッカー大手「中集e栈」を買収し事業拡張を加速させた。つい先日豊巣は競合の「速递易」を買収し市場シェアの約7割を手に入れた。

▲中国宅配ロッカー市場シェア状況
(中国産業信息網のデータに基づきチャイトピ!作成)

初期段階で市場シェアを取るため、多額の資金を投入し、とにかく多くの都市でロッカーを設置する戦略を展開した豊巣は未だ赤字経営が続いている。2019年には7億元の損失を出した。

配達ロッカーの運営にはロッカー自身の材料費、土地の使用料、運営費用が発生する。配達員からの使用料金が現在の豊巣の主な収益源になっているのだ。しかし配達員から得た収益だけでは赤字を埋めることができず、経営状態を改善するため、豊巣は消費者からの料金徴収を展開したのだ。

全体的な低利用率、時間が必要な消費者の習慣育成

中国国家郵便局によると、2019年中国の配達ロッカーの台数は40万6000台にのぼり成長し続けているが、まだまだカバー率は低い。さらに全体の利用率も低く、2019年のロッカーの預かり荷物件数は全体のわずか6%しかなかった。

▲中国配達ロッカー設置台数(出典:中国国家郵便局)

荷物の配送依頼が急増している宅配業界のプレッシャーを解消するため、中国政府は近年宅配ロッカーに対して様々な支援策を打ち出し業界発展を後押ししている。今後も配達ロッカーが普及していく傾向にあるが、今回の豊巣の有料化騒動からみると、中国消費者の習慣育成にはまだまだ時間が必要だ。