二次元愛好者のコミュニティから総合的エンタメプラットフォームへ変わりつつある中国の動画配信サイト「bilibili(哔哩哔哩:ビリビリ)」が先日2020年Q1決算を公開した。
コロナの影響でユーザー数成長は加速し、MAUは1億7200万人と前年比70%急増した。
売上高は23億元(約347億円)で前年比69%増加し、市場予想を超えたが、最終損益が5億元で(約80億円)赤字だった。前年同期より赤字幅は拡大するという結果だった。

決算発表後bilibiliの株価は3%下落、市場はこの決算報告に対してネガティブな反応を示した。

若者ユーザーの数を武器に有名企業らの出資を獲得したbilibili

2009年創業し、社歴11年のbilibiliはすでに中国IT2大大手のアリババとテンセントの出資を受けている。さらに今年4月にはソニーから約430億円の出資を受けた。数々の大手有名企業の出資を受けbilibiliは二次元愛好者のコミュニティから拡大し、さらに多くの人に周知された。

そんなbilibiliの武器が若者ユーザーである。リサーチ会社iiMedia Researchによると、24歳以下のユーザー数が全体の66%を占めており、「Z世代」(1990~2009年生まれ)と呼ばれる中国の若者がbilibiliの主なユーザーである。

bilibiliの会員登録には100の質問テストを受けることが必要であり、合格点60点に達していないユーザーはごく一部のコンテンツしか見れない仕組みだ。創立から今日まで続いているこのテストは良質なアニメ文化が好きな若者同士を集め、bilibiliの1つの特性となった。そのためbilibili早期の顧客ロイヤルティが高く、数多くの動画サイトの中でも独自性の強い異質な存在だった。

商業化の加速による雰囲気変化で古参ユーザー離脱の恐れ

近年、bilibiliはアニメ愛好者のコミュニティイメージの脱却を進めている。アニメ以外に映画やオンライン教育、ゲームなど様々なコンテンツを増やしているのだ。また、人気配信者と独占契約し、ライブ配信市場に本格的に進出した。

▲bilibiliのコンテンツカテゴリー(チャイトピ!によりキャプチャー)

しかし商業化を加速している中、bilibili自身の独特なコミュニティ属性も変わりつつあり、古参ユーザーの離脱が増加している。ネットでは何年も前からbilibiliを利用している古参ユーザーは「今のbilibiliはもう昔のbilibiliじゃない」とbilibiliの雰囲気変化にショックを受けている。

今年4月にbilibiliが動画配信者に対して好きなアイドルの関連動画製作のコンテストを開催し、投票数1位の動画作品は質が疑問視された。結果1位のアイドルファンによる集団投票が発覚し、公平性に反する行為に不満の声が高まり、bilibiliの対応も曖昧であったため大勢の古参ユーザーが“もうbilibiliを使用しない”と抗議した。
bilibiliの事業拡大は確実に多くの新規ユーザーを獲得したが、新規ユーザーと既存ユーザーの対立は深刻化しつつある。

赤字額の拡大、ゲーム事業収益への依存による経営リスク

▲bilibiliの損失額推移
(決算資料に基づきチャイトピ!作成)

2018年上場後bilibiliの損失額は拡大し続けている。ユーザー成長は著しいが、コンテンツの制作費や広告費などのコストも高くなっている。2020年Q1の広告費は売上高の26%をも占めた。

bilibiliは創立当初から動画の中に広告をつけない経営方針を維持してきた。一般の動画サイトが広告で稼いでいる一方で、bilibiliの主な収益源はゲーム事業であった。しかしbilibiliはそのゲーム事業の依存リスクが極めて高い。
2020年Q1の決算ではゲーム事業収益が全体の約5割を占めた。また、ゲーム収益の中でも、海外人気ゲームの中国市場での代理運営収益がメインで、bilibili自社開発のゲーム収益は少ない。

中国政府は近年ゲーム業界に厳しい制限をかけた。特に未成年のゲーム利用時間を制限し、未成年によるゲーム課金が保護者の同意を得ていない場合サービス提供会社が返金すべきという規定も出しており、bilibiliはゲーム依存の収益構成の改善を迫られている。

まとめ

アリババ、テンセントなど大手企業の市場争奪戦に多くのスタートアップ企業が巻き込まれた。創業から11年以上たったbilibiliも二次元コミュニティのイメージを打破し大手の争いに参戦した。アニメ以外のコンテンツを増やし事業拡大を積極的に行なっているbilibiliはさらなるユーザーを獲得したが、ユーザー間の対立をも招いてしまった。その上黒字化の道のりは遠いようだ。
今後も自身の独自性を維持し商業化のバランスをとることがbilibiliにとって最大の課題だろう。

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