コロナで世界中の小売企業や飲食関連企業が大きな打撃を受けた一方、一部のIT企業はコロナを逆手に業績を伸ばした。
中国大手IT企業のQ1決算を見てみると、複数の企業が増収を実現させている。コロナで在宅時間が増え、オンラインエンタメやオンライン教育などの需要が急増し、関連サービスの提供企業の売上が上昇したのだ。
▲中国主要企業Q1決算(チャイトピ!作成)
【アリババ】クラウド事業が前年比58%急増、EC事業の伸び率は鈍化
▲アリババの収益と成長率推移(億元)
(決算資料に基づきチャイトピ作成)
アリババ1~3月期の収益が前年同期より22%増加となり、38%増収した19年10~12月期に比べ伸び率は鈍ったが、新型コロナの影響で業績が大幅下落する予想に反した、市場予想を上回る収益結果となった。
決算の内訳を見てみると、収益の中特にクラウド事業収益の成長が目立つ。コロナの影響で関連需要が急増しクラウド事業収益は122億元で前年比58%増と大幅成長した。また、オフィスツール釘釘(DingTalk)のユーザー数が3億人を突破し、利用する企業が1500万社を超えた。
コア事業のEC事業収益は前年比19%増加となったが、伸び率が2019年10~12月期より鈍化した。コロナ時期に出店者への支援策としてコミッションを免除したのが主な原因。また、純利益が前年比88%下落した理由について、アリババは「投資による損失が出たのが主な原因」としている。
【テンセント】コロナでゲーム事業が好調
▲テンセントの収益と成長率推移(億元)
(決算資料に基づきチャイトピ作成)
コロナの影響でテンセントのQ1業績が好調。収益は1080億元(約1兆6300億円)で前年比26%増加した。純利益は289億元(約4360億円)で前年比29%増加した。収益と純利益がともに市場予想を上回った。
主要事業のゲーム事業が31%増の伸び率を実現した。中国政府のゲーム制限を受け、2018年から2019年の間にテンセントのゲーム事業成長が鈍化した以来初めての大幅成長となった。コロナで多くな企業が悲鳴をあげた中、テンセントが大きな恩恵を受けたと言える。
広告事業も前年比32%増を実現した。そのうちwechatのモーメンツ広告を含めたソーシャル広告が前年比47%増加した。一方広告主の予算削減などの影響で媒体広告収益は前年比10%減少。
他にも、フィンテック事業は前年比22%増加したが、2019年10~12月期に比べて伸び率は下がった。コロナで在宅が増えたため、決済と現金の引き出しが減少したのが要因である。
【バイドゥ】ユーザー数は成長、主要の広告事業は収益減
▲バイドゥの収益と成長率推移(億元)
(決算資料に基づきチャイトピ作成)
コロナの影響で関連情報の検索が増えたため、バイドゥアプリのDAUは2億2200万人に達し前年比22%増加した。しかしユーザーの成長が収益に繋がることはなかったようだ。バイドゥQ1の収益は225億元(約3400億円)で前年比7%減少だった。
バイドゥの主な収益源は広告事業である。しかしコロナの影響で元々成長が鈍化していた中国広告業界はさらに打撃を受け、バイドゥも然り広告事業収益は前年比19%減の142億元だった。
また、純利益(Non-GAAP)は31億元(約468億円)で前年比219%増加した。コスト削減が増益に一役かった。
【京東】物流事業が増収に貢献
▲京東の収益と成長率推移(億元)
(決算資料に基づきチャイトピ作成)
京東(JD.com)の収益は1462億元で前年比21%成長した。純利益は11億元と前年比85%減少だが、市場予想は上回った。
コロナの影響で物流業界が停滞している中、京東の自社物流事業は優れた優位性が生かされた。Q1の「物流及びその他サービス」からの収益が前年比54%成長したのだ。
収益の内訳を見てみると、家電など電化製品の収益は前年より9.8%増加しているが、収益全体を占める割合で見ると前年同期より5ポイント減少の53%だった。
そして家電以外の一般商品の収益が前年より38%増加。収益全体を占める割合は前年同期より4ポイント増加の36%だった。
コロナの影響で電化製品などの需要が減少したのが原因だと見られる。
【拼多多】赤字が続くが、著しいユーザー成長
▲拼多多の収益と成長率推移(億元)
(決算資料に基づきチャイトピ作成)
拼多多(ピンドウドウ/pinduoduo)の収益は65億元(約980億円)で前年比44%増加し、市場予想を上回ったが、純損失は41億元(約620億円)で赤字幅が前年より119%拡大した。
2019年Q4まで拼多多の赤字額は減少していたが、2020年Q1では赤字がまた拡大する結果となった。
一方、年間アクティブユーザーは6億2800万人で前年より1億8500万人増えた。ユーザー数においてはアリババとの差がさらに狭まった。拼多多の補助金作戦はユーザー獲得に功を奏したが、赤字拡大に繋がる要因にもなった。Q1のマーケティング活動の費用は73億元で前年より49%も増加した。
【シャオミ】売上と利益ともに市場予想を上回る
▲シャオミの収益と成長率推移(億元)
(決算資料に基づきチャイトピ作成)
シャオミの収益は497億元(約7,528億円)で前年比14%増。調整後純利益は23億元(約348億円)前年比10%増となり、売上と利益がともに市場予想を上回った。
スマホ事業収益は前年比12.3%増の303億元(約4500億円)で、IoTサービス及び生活関連消費製品の収益は前年比7.8%増の130億元(約2000億円)だった。
スマホの出荷台数も2920万台で前年比5%増加した。テレビの出荷台数も270万台で前年比3%微増した。中国本土においてのテレビ出荷台数では1位である。
また、海外市場における収益は248億元に達し前年より48%も増加し、全体収益の5割を占めた。海外売上が全体の半分に達したは初である。
【ネットイース】ゲームとオンライン教育事業の好調
▲ネットイースの収益と成長率推移(億元)
(決算資料に基づきチャイトピ作成)
ネットイースQ1の収益は171億元(約2580億円)で前年比18%増加した。純利益も35億元(約528億円)で前年比30%増加。
コロナの影響でゲームとオンライン教育の需要が増え、ネットイースの関連事業が好調、ゲーム事業収益は135億元で前年比14%増加した。オンライン教育事業の「有道」の収益も前年比139%増加の5億元だった。